[127]尖閣衝突事件の真相とは

Libertarian Tokyo 投稿日:2010/11/18 10:00

初めて投稿いたします。都内で自営業を営む者です。
仕事の都合上 Libertarian Tokyo のペンネームで投稿します。
副島先生のご著書は、10年前から読み続けています。

尖閣諸島沖で中国漁船船長が逮捕され、海上保安庁の巡視船と中国漁船との衝突シーンを撮影した映像が漏洩した事件が、ずっと話題になっていました。

私は、この事件の根本の問題は、前原外務大臣の指示によって、逮捕までする必要がなかった中国人船長を逮捕・勾留(こうりゅう)したという事実にあると考えています。

これに対して、中国政府が予想以上に強い抗議の反応をしたために、菅・仙石内閣は慌てて船長の釈放を決めたというのが真相のようです。

尖閣衝突事件が9月3日に起きた二週間後の9月17日に、前原誠司外務大臣が就任しました。前原外相は、その6日後の9月23日に、ニューヨークでヒラリー・クリントン米国務長官と会談をしています。

この席でヒラリーは、尖閣諸島は「米国の日本防衛義務を規定した日米安保条約第5条の適用対象である」と発言して、日中対立の火にアメリカが油を注ぎました。

前原外相がこの場で、ヒラリー米国務長官からどような指示を受けたかはともかく、翌9月24日には中国人船長が急遽、釈放されました。

前原外務大臣の逮捕の指令を変更して、中国人船長を釈放せざるを得なくなったために、日本政府は自分たちの責任を覆い隠すように、那覇地検が勝手な判断で釈放したというような報道をさせました。

このように一貫性がなく、何かに翻弄されるような、日本政府の尖閣衝突問題に対する外交方針の迷走ぶりには、はっきりとした原因があります。

それは、日中の領土問題の根底には、もっと大きなアメリカと中国との世界規模の軍事覇権争いという対立があるという事実です。

日本は、歴史的規模で起きている世界覇権をめぐる米中の争いはざ間で、その極東の、アジアの末端における局地戦として起きている「尖閣問題」というつばぜり合いに翻弄されている、ということなのです。

米中の世界覇権をめぐるグランドチェス(地球チェス)ボードの駒(こま、チェスのポーン)でしかないという事実を、私たち日本人がまず厳しく自覚しなければなりません。

自分たちの正確な立ち位置や、国際政治における対応能力を冷静に客観的に見つめて、その弱点も自覚した上で、日本としての対中国・対アメリカの戦略を、国民の総意として決断して行く、という体制を構築しなければなりません。

このたびの尖閣事件も、中国漁船が本当に自ら衝突してきたのか、あるいは、海上保安庁の巡視船が2隻(本当は3隻?)で漁船を挟み撃ちにして追いつめて、しかたなく中国漁船がこすりつけられるように「接触 (始めの頃の報道ではこう表現されていた) 」したのか、本当の事実は、実際はおよそ3時間ほどあると言われる衝突シーンの映像がすべて公開されていないために、検証することができません。

インターネットの「YouTube(ユーチューブ)」にリークされて問題になった流出映像でも、全部で45分くらいしかありません。

これまでの他の中国漁船と同様、日常的な操業を尖閣諸島周辺で行っていた中国漁船の船長が、その日に限って、自分の9倍もの大きさのある巨大な巡視船に衝突し逮捕されたという事態のおかしさを、まず考える必要があります。

インターネットの映像でも、巡視船の目の前でまず、のろのろと漁獲網を引き上げてから、しばらく無抵抗に停船していたところを、突然、わざわざその小さな船体で、意図的に突進した理由が本当にあるのか、ということを冷静に検証されなければなりません。

本当は、記録映像が3時間近く残されているのに、それを国民にも国会議員にすらもほとんど公開していないという事実の方がより大きな問題です。

国民の知る権利を一方的に剥奪しておきながら、その判断の良し悪しや、中国漁船の行為の是非や、中国政府の対応の真意を問うのは、正確な情報を欠いたままで、いくら議論をしても正しい結論に至ることはありません。

公開するべき情報(映像)の報道を、かたくなに拒否し続けるという態度では、疑われてもしょうがない。
その映像のなかに、政府が隠さなければならない何かが写されているのだろうと考えざるを得ません。

結局、海上保安庁の内部の人間(インサイダー)である海上保安官の一人が、その理不尽に憤(いきどお)りを感じて、自ら危険をおかして、その映像をネット上で公開するという事態になりました(対中感情を煽るためにワザとやったという話もあるが、根本の動機はそこにあるのではないかと私は思います)。

現時点で、ネット漏洩シーンも含めて公開されている衝突シーンだけでも、中国漁船の方だけに非があると決め付けるのは、以下のような点で不自然であると指摘されています。

ネット上で見つけた匿名文章ですが、とりあえずということで、細かな確認は行わず、事実らしいと思われる内容をそのまま転載します。

今後さらに正確な事実等が分かった際には、別途追記で補います。

(部分転載引用始め)

●海上衝突予防法第15条(海上交通ルールは道路交通法とは
異なり全世界共通)では、「前方を船が横切る針路の場合は、
相手を右舷側に見る船(相手の左舷側を見る船)が回避しなけ
ればならない」と定められていて、この場合は巡視船に回避
義務があります。
したがって、海難審判庁が判断すれば、漁船に故意があった
ことを勘案しても巡視船が不利になると思います。
なお、第1回目の衝突(接触)は、漁船が巡視船を右舷側に
見ていますので、漁船に回避義務があります。
・・・このことを新聞・テレビがなぜ報道しないのか?

●停船して網を揚げているときなどに接舷・乗船すれば、船長を
いとも簡単に逮捕できたはずであるのに、これを行わずに漁船が
動き出した後に、巡視船が前を立ちふさいだということです。
漁船の船長からみれば、この海域を日本がいわゆる実効支配して
いるとはいうものの、中国漁船の操業をこれまで黙認し続けてきた
(という事実がある)。

●包囲して、衝突(接触)した既成事実が欲しかった(のではないか)。

(部分転載引用終わり)

さらに以下に、そもそも尖閣諸島は、国際的な認識や歴史的な事実としては、日本と中国どちらの領土であるのか。このことを明確に説明してくれる、植草一秀(うえくさかずひで)氏の記事をご紹介します。

植草一秀氏は、野村総合研究所主席エコノミストとして、竹中平蔵金融・経済財政政策担当大臣(当時)が、2001年~2006年まで小泉政権のもとで行った、日本金融市場への海外資本参入(ハゲタカの買収攻勢)を有利にする意図的な日本市場解放政策を批判し続けました。

竹中平蔵と小泉政権こそは、外資の日本企業や優良不動産に対する「対日直接投資」を倍増させることを目指して、アメリカハゲタカ金融資本の手先として、日本の市場開放を強引に行い、日本の優良資産の外資による買い叩きをあからさまに手助けした売国政治家であると糾弾し、粘り強く追求を続けられていました。当時、植草氏は、次期財務大臣に抜擢されるだろうという予測もありました。

その矢先に、痴漢行為の冤罪(えんざい)を負わされて、政界や経済評論家としての地位を奪い取られていました。

(参考:『知られざる真実―勾留地にて―』、植草一秀著、イプシロン
出版企画、2007年8月刊)

現在も一貫して、政界や経済界の真実を伝え続け、国民の利益を最優先する経済政策や政治提言を続ける植草氏の支持者は多く、独自の言論活動を続けられています。昨年6月には、副島先生との共著『売国者たちの末路』(祥伝社)を出版したり、共同の講演会開催されました。

全文は長いので、ここでは重要な箇所を部分引用します。以下のアドレスをクリックして植草氏の主催するホームページにアクセスすれば、本文を直接、読むことができます。

【植草一秀の『知られざる真実』サイトのアドレス】

http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2010/11/post-dfaf.html

(転載部分引用始め)

●「尖閣領有問題棚上げ政策についての検証が不可欠」

植草一秀の『知られざる真実』 2010年11月 6日
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2010/11/post-dfaf.html

日本政府は19世紀末に日本が列強の仲間入りを果たすべく海外
進出を本格化させた時期以降、日本が尖閣諸島を領有していることを
強調するが、中国はそれ以前の歴史的な領有関係を強調している。
国際法上は日本の領有が認められるべき事案ではあるが、この問題が
必須の重要事案であるなら、日中国交回復、沖縄返還、日中平和
友好条約締結時に明確化しておくことが不可欠であった。
 
しかし、現実の選択のなかで、1972年に日中が国交を回復し、
平和友好条約を締結する際、尖閣諸島の領有問題について、
「棚上げ政策」が提案され、以後、この棚上げ政策に基づいて
日中両国が対応してきたことは、ひとつの現実的対応であったと
評価すべきである。 
 
外交には常に多くの困難な問題が立ちはだかるが、多くの困難な
問題を直視した上で、現実的な選択を示すことが常に求められる。
尖閣問題を深刻化させずに日中両国が戦略的互恵関係を発展させる
ことも検討に値する対応のひとつである。
 
日本政府は録画映像を当初から公開し、政治判断での問題決着を
当初の段階で取るべきであったと言える。日本外交の稚拙さが
世界の笑いものになっている。
 
衝突映像が流出した問題は、こうした外交問題とはまったく別種の
政府の危機管理能力の問題である。重要機密情報が流出したことに
ついて、真相を解明すると同時に、関係者の責任が厳しく問われ
なければならない。
 
米国に隷属するだけで、国益を損なうことだけに貢献している前原
誠司氏の一刻も早い更迭が求められる。

(転載部分引用終わり)

この度の尖閣騒動の結果として、中国側が軍を動かしたということもなければ、台湾に対して行ったように急な軍事演習をこれ見よがしに始めたということもありません。厳重に抗議を行っただけです。

レアアースの輸出一時停止などは、あくまでも、外交交渉の一貫として、実質的な被害が少ないかたちで、中国政府の面子を潰さない形での対抗姿勢を示したのだと、客観的に冷静に見ると分かります。

反日のデモが中国各地で起こっても、中国政府はあくまで冷静でした。

日本の親米右翼メディアは、ここぞとばかり、真摯な事実調査も行わないまま、反中国の報道合戦を繰り返していました。

実際、中国からのレアアース輸出が一時的に抑制さられても、数年間 (数十年間?) は問題がないだけの備蓄が、日本にあるという報道がされていました。

備蓄量の多少の事実はともかく、世界は現在、今後のレアアースの仕入れ先を、中国の代わりにカナダ、オーストラリア、カザフスタン、モンゴル、ベトナムなどの国からの産出量で、十分まかなえるという見積もりが公表されています。

アメリカも含めてレアアースの輸入の依存を中国に集中させないよう他国へも分散をしなければならないということを公言し始めました。

つまりこれは世界的な資源外交の一部の駆け引きであって、日中間だけの尖閣問題のための報復である、というような勝手な誤った解釈は、日本の外交方針の判断を誤らせるだけです。

大国の中国やアメリカにとっては、世界中のあらゆる国々との国境問題があるのであって、その地域ごとに必ずなんらかの領土問題が存在しています。このたびの尖閣諸島の騒動も、そうした多数の領土紛争のひとつに過ぎません。

日本は「井の中の蛙」を早く脱して、自分たちの問題を考えるときでも、その視点を世界の中心となる中国と、それに対抗するアメリカとという大きな対立の世界観から、日本を大きく見下ろすように考える姿勢を、私たち国民がどんどん積極的に身に着けるべきです。

Libertarian Tokyo 拝