[1254]福島第一原発付近に「廃炉センター」という名のIAEAの放射性廃棄物処分場ができようとしている
福島第一原発事故から2年たち、いろいろな政治的な動きがでてきました。
まず、いちばん重要なのは、石原伸晃環境相が、多くの帰還を望まない避難住民がいることを指摘し、福島第一原発付近の中間貯蔵施設に該当する地域には帰還できないことを、明言したことです。
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貯蔵施設で住民に帰還断念要請も、環境相、生活補償条件に
石原伸晃環境相は21日、福島県内の除染で出た汚染土壌を保管する中間貯蔵施設に関連し、用地取得に伴って一部の住民に帰還を断念するよう求める可能性について「しっかり話をして、お金だけでない生活補償ができれば、そういうことが可能になってくる」と述べた。民放ラジオ番組での質問に答えた。
石原氏は「地元紙のアンケートでは『帰りたくない』『帰れない』という数字が7割だ」と述べ、帰還を望まない避難住民が多くいることも指摘した。政府は福島県大熊、双葉、楢葉の3町に貯蔵施設設置を求めている。
(福島民報2013年2月25日 (月))
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2013年2月22日(金)、東京都千代田区の環境省(中央合同庁舎第5号館)で、閣議後の石原伸晃環境・原子力防災担当大臣の定例会見が開かれた。「中間貯蔵施設を作らないと除染の問題は解決しない」。石原大臣は就任後初めて、中間貯蔵施設に該当する地域は戻れないと言及した。
(Independent Web Journalより)
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これが、どの地域にあたるかというと下のウエッブサイトの地図になります。見ていただきたいのは、第一原発ではなく第二原発付近にも、広大な処分場ができるということです。不自然に離れたところに、中間貯蔵施設と最終処分場があるのが、図からよくわかります。
図の一番下の楢葉町(ならはまち)は、実は、福島第一原発事故の数年前にすでに、放射性廃棄物の最終処分場の候補地になった町です。地盤も固く、処分場としては最適なのでしょう。したがって、図から、楢葉町付近に、この最終処分場をつくろうとする動きがあるのが読み取れます。
もうひとつ重要なのは、この福島第一原発付近にIAEAの国際事業として廃炉技術の拠点をつくるという動きがでてきたことです。廃炉技術の国際事業ですから、その拠点は当然、第一原発の近くのはずです。上の地図からみると、福島第二原発付近になりそうです。多分、「国際廃炉センター」などという名前がつくと思います。「廃炉センター」といえば聞こえがいいですが、廃炉は典型的な放射性廃棄物ですから、ただの放射性廃棄物処分場です。
この調査団の団長ファン・カルロス・レンティッホは、下に記すように、「廃棄物技術部長」とありますから、放射性廃棄物の専門家です。しかも、この調査は実は、楢葉町(ならはまち)のボーリング調査と完全に一緒です。IAEAの調査団の本当の目的もこちらでしょう。これらを下に続けて引用しておきます。
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IAEA、福島廃炉を国際事業化 事務局長が方針、4月に調査団
【ウィーン共同】東京電力福島第1原発事故を受け、国際原子力機関(IAEA)は21日までに、将来本格化する同原発の廃炉について、他の原子力先進国の参加も促し国際事業化を目指す方針を固めた。廃炉実現に向け、専門家で構成する国際調査団を4月に日本に派遣する。国際事業化で、今後各国で必要となる廃炉技術の開発にもつなげる。IAEAの天野之弥事務局長が21日、共同通信の取材に明らかにした。
またIAEAは被災地の除染など福島県との共同事業実施のため、専門家らを今月27日に福島へ派遣、4月の事業着手を目指して県などとの事前調整も進める。
(東京新聞2013年2月22日 10時58分)
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汚染水の管理に注目 IAEA調査団が来日 東電の対応を検証
国際原子力機関(IAEA)の調査団が15日までに、東京電力福島第1原子力発電所の調査のため来日した。17日に福島入りし、原子炉の状態を調べる。相次ぐ汚染水漏洩事故への東電の対応なども検証する。15日に都内で記者会見したファン・カルロス・レンティッホ核燃料サイクル・廃棄物技術部長は「汚染水の管理に注目している」などと語った。
(以下略)
(日経新聞2013/4/15)
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中間貯蔵、楢葉町で現地調査へ ボーリング実施へ
石原伸晃環境相は9日の閣議後の記者会見で、東京電力福島第1原子力発電所事故の除染で出た汚染土壌を保管する中間貯蔵施設について、「福島県楢葉町での建設候補地の調査のため、9日に現地へ職員を派遣した」と述べた。中間貯蔵施設の候補地は福島第1原発周辺の楢葉、双葉、大熊の3町に計9カ所ある。本格調査に着手したのは初めて。
(以下略)
(日経新聞2013/4/9)
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アガサ・クリスティだったと思いますが「ゼロ時間へ」という小説があります。ある殺人事件がおこる、しかし、犯人の本当の目的は、その先の別の殺人だった・・というストーリーです。この最終目的を「ゼロ時間」と表現しました。
「レベル7」、「チェルノブイリ1/10」「1ミリシーベルトを守れ」「福島から避難しろ」「二十キロ圏内ではもう住めない」、このような様々な主張の大半は、この「IAEAの放射性廃棄物処分場の建設」という「ゼロ時間」に向けた扇動とその布石だったと私は思います。実際、上に引用したように、多くの20キロ圏内の住民が、帰宅をあきらめているそうです。
ちなみに、日本で、廃炉センター建設を指揮しているのが、東京大学の諸葛宗男教授というひとのようです。福島第一原発事故のわずか2ヶ月後に、ここに放射性廃棄物処分場をつくることについて、日本原子力学会で他の専門家たちと会合していました。
国会でも、福島第一原発付近を最終処分場にしようという動きが最近ありました。伊藤博敏「ニュースの深層」から引用します。この中で取り上げられている「中田宏」という代議士は、植草一秀氏が、彼の後援会で講演した後に冤罪逮捕されたことで有名です。
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原発被災地を国有化し最終処分場を! 国会で爆弾提言した日本維新の会・中田宏代議士の真意とは 2013年04月18日(木) 伊藤 博敏
「それでは、原発のその後について、今日の本題、私にとっての本題に進めて行きたいと思います」
4月5日の衆議院予算委員会でこう切り出したのは、日本維新の会の中田宏代議士である。鳥インフルエンザ対策などについて、自身が前横浜市長として苦労した体験談を交えながら質問した後、持ち出した「本題」は、誰もが感じながら言い出せない「帰れない被災地の現実」についてだった。
除染にどれだけの意味があるのか
「先に、言いにくいことを申し上げます。私は、どこまで線を引くかはともかくとして、この場所はもはや戻るべきではない。そういうエリアとして国が決断をして、そして当該被災地の皆さんの生活支援をしていくべきだと思います」
帰れない理由として、これまでの累計で1兆2,875億円を投じながら進んでいない除染をあげた。
確かに、作業は進めているものの、線量はなかなか下がらず、いったん下がったとしてもまたすぐ元に戻る。その理由のひとつに、住宅から20メートル以上、離れている森林について、除染を除外していることがある。
中田氏はこう続けた。
「裏山に除染がなされていない森林があれば、なかなか人はそこに戻りたいとは思いませんね。風が吹けば葉っぱは飛んでくるわ、土は舞い上がってくるわ、雨が降れば土砂は流出してくるわというところに、お宅のエリアは大丈夫ですからといわれたところで、戻りたいとはなかなか思わないわけであります」
例として挙げたのは、2011年9月に緊急時避難準備地区を解除され、昨年2月に帰村宣言をした川内村である。1年経っても、帰村者は4割。その大半は50代以上の中高年層で、子供のいる家庭は、放射線量を怖れて、戻るに戻れない。
除染にどれだけの意味があるのか。
線量が上がればまた作業を繰り返す。それでも子供への影響を怖れて帰らない人が多い。それならば、国が土地を買い上げ、次の生活地での生活支援をした方がいいのではないか、という思いを持つ人は、実は少なくない。
だが一方で、そうした”本音”は「故郷へ帰りたい」という思いを持つ被災者がいるという現実の前でかき消されている。
中田氏はそこに踏み込み、さらに最終処分場問題にも言及した。
「この地域に人が住めないということをもうハッキリさせて、私は、放射性廃棄物の最終処分の場所にする、これを政治はどこかで決断するべきだと思います」
要は、原発被災地の土地を一定範囲、国が買い上げて、そこに最終処分場を建設すべきだという提言だ。
これもまた誰も言い出せないが、誰もが感じていることだ。
この「中間」という名のごまかしも、多くの人が感じていよう。福島が「中間」として「最終」はどこになるのか。どの自治体が引き受けるというのか。
中田氏は、数字でその矛盾を明らかにした。
「福島県内の除染等によって生じる汚染土壌や汚染廃棄物の総量、これは1500万立法メートルから3100万立法メートルということで見積もっていることであります。1500万立法メートルというのはどのくらいかといいますと、10トンのダンプカーでおよそ200万台に達するという凄まじい量になるわけです」
さらに、仮に東京都がお台場で最終処分場を引き受けたとして、1日200台で運んで27年、1万日かかると計算、運送道路沿いの住民、東京都住民の反対を考えた場合を併せ、汚染土移動の非現実性を訴える。
国会という自由な発言が許される場ではあるが、「被災者の気持ちを考えているのか!」といった批判が寄せられることが予想された。だが、中田氏は「誰かが、言わなけれないけないことだった。そして、それを言うのが政治家の役割です」と、言い切る。
否定的な声は皆無に近く、「質問直後からウチの事務所や党本部に、電話やメールやFAXで反響が寄せられ、『よく言った』という声が大半だった」(中田氏)という。
事務所宛てに入った次のメールが、その声を代表している。
「政治家の皆さんが、国民、この場合は被災地の住民に、気にいられるような発言をされ、本当のことを言わないことに、私はいらだっていました」
私もそのうちのひとりである。
原発事故から約2ヵ月後、本誌で「試算では費用1兆4,100億円?菅政権が言えない『原発被災地の国有化』というタブー」という記事を書いた。
「収益還元法」で福島原発の半径30キロ圏内を試算、約1兆4,100億円かかるのだが、それだけ費やしても購入した方がいいのではではないか、と訴えた。
もちろん、生活支援もあって、その金額で収まるわけではないが、①国の責任を明確にし、②いつ帰れるかわからない不安に比べると、被災者に前向きな希望を与えられ、③国有地となった広大な土地を多目的に使用できる、といったメリットが考えられた。
その③に含まれるのが、太陽光、風力といったメモリアル的なエネルギー対策の場所にすると同時に、汚染土や廃棄物の最終処分場として利用することだった。
それでなくとも除染作業には、手抜き除染や作業費のピンハネなど多くの問題が指摘されており、「表層の土地を除去、屋根や壁を洗い流すだけの除染は、一時的に線量を下げるだけで抜本的な効果は期待できない」と、断言する専門家もいる。
国有化と最終処分場の建設—。
機は熟した。中田氏の提言を、真剣に論議すべきではないだろうか。
<引用終了>
下條竜夫拝