[1232]在ドイツの友人からのメール
私の同級生でドイツの田舎のRecklinghousenという所に住んでいる桜井君からのメールを貼り付けます、富士電機ーシーメンスー同時通訳の経歴があり、一人息子のHaiko(男の子)君は、漫画家で何冊か出版されています。
貼り付けー
森田君、
今年のお花見は、狂った天候(日本海側の寒気と太平洋側の暖気が日本上空でせりある気象条件で)のために2週間も早く開花しているとの事。10年以上も前に、妻と息子を連れてお花見に行きましたが、3月末から4月のはじめのことでした。
さて、ユーロ圏 GDP の0.2%という小人のキプロス島がクシャミをしてだけで、これほどの騒動の起きるユーロ圏とはまったく悲しい話です。ユーロ圏リーダ国のキプロス救済案を蹴っ飛ばしてロシアに救済を求めるプラン
B など傲慢なユーロ圏指導者の恥を世界に発信してしまいました。メルケル首相とショイブル財務相の率いるリスクマネージメントの甘さが表面化した醜態で、この秋に連邦選挙を控えたドイツでは、野党が選挙戦の好材料を発見した形です。他方、内心待ってましたばかりにチャンスを狙っているのは、ロシアのプーチンでしょう。中東(シリア)の内戦で、地中海に面したロシア海軍の拠点(Tartus)を失ったロシアにとって、財政救済の代償に、キプロスに新たな海軍基地を設置できることは、大きな魅力なのです。それに加えて、キプロス海域には、膨大なガス田(6000億ユーロ相当の規模)があることもロシア国営コンツェルンの
Gazprom にとっては、油田ガス田開発権の獲得は大きな魅力です。この膨大なガス田開発権は、現在 Noble Energy (米)、ENI
(伊)と Kogas (韓国)が保持してますが、ロシアもその開発に参加したいという経済的な意味もあるのです。金融市場的にもキプロスは、租税回避地や資金洗浄(マネーロンダリング)の意味でもバカに出来ない存在です。キプロス系銀行は、高利回りと杜撰な経営監査、さらに国際的にも低い法人税(10%)で、海外投資家や企業に大きな魅力を持ち、旧ソ連崩壊後今日までに370億ユーロ程度のロシア系資産(脱税目的での逃亡資金を加えると更なる額)がキプロス島の金融機関に蓄積されており、これらの資産からの収益はロシアへ逆流するという資金のターンテーブルの役割も演じ、ロシアへ投入される外国投資の四分の一はキプロスマネーとの説もあるくらい。倒産直前にあるキプロス系銀行への関心も高く、Popular
Bank (Laiki Bank)をロシア資本が買収する話もあり、プーチンが本気に乗り出せば、キプロス島の当面している財政問題など一気に解決してしまうのです。ロシアは2011年に25億ユーロ相当の借款(期限5年で、4.5%の利子)を提供してキプロスの経済危機を救済した前歴があり、今回のモスクワでの交渉では、この借款の期限延期と新規の借款も話の内容であったということです。ユーロ圏諸国は、ロシアとの交渉の結果を待つのみという柵の外からの見物人(傍観者)としての存在しかなく、それよりも
”預金には(国が)手を出さない”(銀行預金は、銀行破産時に10万ユーロまで保証されている)という鉄則がかくもやすやすと崩壊したことによる金融市場や一般投資家の信用が失われたことがもっと大きな問題で、政治家は口先で
”貯金は絶対に安全だ”という神話を守るのに懸命です。キプロス不安で、ユーロが崩壊するとは思われませんが、一度失われた投資家の信用をもとに戻せるか否かが当面のキーポイントでしょう。キプロスとロシアをめぐる成り行きを見守る以外に手はありません。このような国際金融市場での信用不安で、円高が進むとなると日本株相場や経済回復への影響もあるでしょう。
以上欧州からの近況。 桜井美之