[1119]フフホト通信(内蒙古自治区から)

石井裕之 投稿日:2012/11/05 00:48

中国から石井裕之がフフホト通信をお送りします。
今回は久しぶりの内蒙古編です。ここで知り合った若きビジネスマンを皆さんに御紹介したいと思います。恐らくこの種の事業家が今の中国の経済を牽引しているのだと思います。

彼は現在27歳のモンゴル族の若者です。5歳のときに日本に渡り大阪近辺に住んでいました。18歳の時に神戸大学を受験し合格するのですが、その日本の学校には一度も通うことなく、その年の9月に北京大学の入学を決め大学生活を中国で過ごすことを選択するのです。大学院まで出て就職した先は父親の経営するとある国営企業です。中国から原材料を日本に輸出し、日本で加工した後に再び中国へと送り返し製品化して出荷しています。取引先は超大手企業ばかりです。
そして2年ほど前に、祖父の故郷の内蒙古のフフホトに電力関連会社を作ります。恐らく設立資本金は父親の援助によるものだと思われますが、その辣腕経営ぶりはなかなかのものです。

例えば、彼によると中国には電力供給会社は大きく分けて3社あるというのです。上位2社は中国国家の電力会社です。そして私も知らなかったのですが、3社目が内蒙古自治区政府が経営する電力会社だというのです。
日本では発電と送電が分離されておらず、非常に効率の悪いシステムを延々と継続していますが、中国では完全に分離されています。そして2011年の暮れから売電に対して市場原理を導入することが決まったようです。
それまで赤字続きだった内蒙古電力(仮称)は、安い石炭を使った火力発電所を次々と自治区内に稼働させ、北京や天津、果ては南京にまで電力供給し売電することになっているとか。お陰で今は急速に経営状態が回復したそうです。

何故このような非効率とも思えることがまかり通るのか。それは偏に発電コストによるもの、としか言いようがありません。
例えば南京近郊では火力発電に使用される石炭は1700元/トン(約21500円)ですが、内蒙古では300元/トン(約3800円)にしか過ぎません。
勿論、安い燃料を内蒙古から輸送して南京で発電する、ということも可能ですが、実は輸送コストが驚くほど掛かってしまうのです。
では、石炭を液化してパイプラインで送る、という方法は如何でしょう。
これも現状の火力発電所は熱源を石炭と決めて設計してあるため、発電所の改修費用と石炭の液化コストを考えると、とても割りに合わないそうなのです。
すると、消去方的に発電したものを送電線を使って目的地まで送る。この方法が一番理に適っているそうなのです。

そのビジネスモデルに乗っかって、彼が参画しようとしているのは、何と内蒙古自治区から山東省に新たに売電することが決まったそうで、その際に必ず設置しなければならない風力発電(総発電量の10%は自然エネルギーを利用した発電方法をとらなければならない法律がある)の設備の建設と運営の請負だとか。
しかもその話を淡々と私に流暢な日本語で語ってくれるのでした。
いやいや、末恐ろしいというか頼もし過ぎると言うか。
本当にノビノビと楽しそうに商売の話をする彼の姿勢が実に羨ましくもありました。
日本で果たして27歳の「小童(こわっぱ)」に、このような巨大プロジェクトを任せる風習があるでしょうか。何かと理由(因縁)を付けてその機会を老害が奪ってはいないでしょうか。

ま、私自身のことを振り返ると、27歳当時は合コンの段取りに明け暮れていたように思います。商売のことを考える「ユトリ」は無かったよな~♪