[1112]予言と合理性

茂木 投稿日:2012/10/18 14:01

会員番号1149番の茂木です。
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田中さん重ねてコメント戴きありがとう御座います。“陰謀論とは何か”、“隠された歴史”について書いたので、“なぜ女と経営者は占いが好きか”副島隆彦著(幻冬舎新書)についても触れておきましょう。この本のテーマの一つは「修験道」ですが、それ以外にも占いや呪いのことに多くのページが割かれています。

この本は2011年3月30日に出版されていて、その前後から、副島氏は「予言者」を名乗るようになったことは皆さんご承知の通り。なぜ占いや予言、スピリチュアルな世界に近づくのか。それについて本書から一部引用してみましょう。

(引用開始)

 なぜ私が占い、呪い、スピリチュアリズムの方に恐る恐る近寄りたいかというと、何度でも書くが、今の学校教育が大きく失敗しているからだ。今の日本の学校教育は最低だ。それから欧米社会がつくりあげたモダン(近代)とモダン・サイエンス(近代科学)に限界が来ている。「もうダメだ」ということがはっきりしたからということがある。生産技術(テクノロジー)の方はまだいいのだが、科学の方はかなりヒドくなっている。
 私は「サイエンス(science)というコトバを「科学」という変なことばに訳したことがまずもって大嫌いだ。私は「サイエンス」を「近代学問」と訳す。ヨーロッパで、今からちょうど500年前の、西暦1500年くらいから始まったのが近代学問(サイエンス)だ。この時からヨーロッパ近代は圧倒的に強くなった。それで世界中のすべての地域に(リージョンregion)を征服して回った。そして次々と植民地(コロニーcolony)にしていった。それが1500年代、すなわち16世紀からのことである。(中略)
 どうやら、このヨーロッパ・北アメリカ(欧米)の近代500年間(たったの500年だ)のモダン・サイエンスの脅威と威力が、21世紀になった今、どんどん衰え始めている。(後略)

(引用終了)
<同書 133~134ページ>

ということで、「予言者」というのは、西洋近代とその学問(分子生物学、素粒子・宇宙物理学ほか)の限界を見据え、その先に漕ぎ出そうとする、副島氏の決意表明とでもいうべき言葉なのです。

なんでも切り刻んで理解しようとする近代学問の限界は薄々予感できても、その先について、誰もまだ合理的な考えを包括的に整理できていません。まだ誰もこれからの未来を見通す本当の力量を持っていないのです。

この決意の下、占いや呪い、修験道、共同謀議の系譜、仏陀と菩薩信仰、キリストとマリア信仰を巡る文明史的考察、さらにはイタリア・ルネッサンスの研究がいま成されているのだと思います。

その前人未踏性が、「どうして、こんなに、次々と本を書かなければいけないのか、自分でも理解できない。書きたいこと、調べたいことが、脳から無くなりません」と仰る由縁なのでしょう。

この本“なぜ女と経営者は占いが好きか”は、2011年東日本大震災の後すぐの出版でしたから、読み逃した人も多いかもしれません。そういえば、この本の140ページに、京都大学の山中伸弥教授のノーベル賞受賞が予言されています。その検証も含めて、もう一度みなさんじっくりこの本を読んでみてはいかがでしょうか。