[1111]痛風について
ミケランジェロと副島先生の共通の持病について
こんにちは、田中進二郎です。重たい掲示板(1077)で副島先生が「夏の終わりに、書いておきたいこと」でポイントフォームで8つに分けて論じておられました。7.「シリア内戦について」、私もこの場と夏合宿で発表させていただきました。
以下5.から引用します
(引用開始)
5.『ルネッサンス(リナシメント)とは何だったのか。・・日本では誰も説明しないままに、50年が過ぎた。政治思想闘争の意味がからきし分らない美術史家たちに任せていたら、日本国民を無恥蒙昧のままにして、とんでもないことになっていた。
今こそ偉大なる先人の羽仁五郎(はにごろう)先生の『ミケランジェロ』(岩波新書 1938年 思想弾圧の時代)と『都市の論理』(勁草書房、1968年)に戻らねば、そして復権させなければいけない。ミケランジェロとダ・ヴィンチの大ブランドを私がほったらかしにするわけがない。』
(引用おわり)
ところで11月3日の定例会は、ちょうどバチカンにあるシスティーナ礼拝堂の天井画が完成してちょうど500周年にあたっています。(ミケランジェロは教皇ユリウス2世の命で1508年から1512年秋までかけて完成した。10月31日万聖節前夜に落成ミサが行われ多数のひとびとが押しかけ、仰天した。だからきっかり500年です。)天井は高さ21メートル、幅13メートル、奥行き40メートルという。最初はミケランジェロは助手を5人雇ったが、技量不足とみて、全員クビにしてほとんどただ一人で描き続けたという。
(『ミケランジェロの世界』新人物往来社より)
上の本の文章を書いているのは平松洋(ひらまつ ひろし)氏だが、ミケランジェロの性格と持病の関係について論じているところが興味深かったので簡単に紹介します。(p21より引用。一部要約しました。)
(引用開始)
かつて若桑みどり(美術史家)は「ミケランジェロは教養が高く、理想が高い。だから苛立ち怒ることになる。・・。頑固者というより絶えず怒っている人だ。イタリア美術史家の森田義之(もりた よしゆき)は、ミケランジェロの内なる激情は、外に向かっては「傲慢さ」や「奇矯さ」となって表れ、自分自身や身内の人間には対しては「パッツィア(狂気)」となって爆発し、また芸術表現においては激しい怒りや超然たる侮辱の表出、激しい異教的=官能的エネルギーの奔出となってあらわれたと書いている。(『ミケランジェロ展』カタログ)
ところで彼の性格とは、種を明かすと、痛風になりやすい人の性格なのである。
痛風とは血中の尿酸値が高く(高尿酸血症)、体が酸性になったり体温が低くなったりすると、尿酸が結晶化して炎症になったりする病気で、激痛を伴う関節炎を引き起こし、風が吹いても痛いとされたことからこの名がつけられたとも言われている。
ミケランジェロはたびたび、「排尿障害」と「尿路結石」に苦しんでいたようである。1549
年(75才のころ)の二か月にわたり、彼の手紙には悲惨な尿路結石の状況と、ヴィテルボの鉱水を毎日飲んだら、尿から石がでて治ったことが詳しくかかれている。
1555年(79歳のとき)には足に悲惨極まりない痛みがでて、外出できなかったといい、「痛風の一種だ、年のせいだ」といわれた、と手紙に書いている。
尿路結石と痛風はともに血中の尿酸値が高くなる高尿酸血症が原因であるから、尿路結石で苦しんでいたミケランジェロに痛風の症状がでてもおかしくなかったのだ。
ミケランジェロの痛風に関して、尿酸値が高いと攻撃的な性格になりやすいという仮説もあるという。早川智氏『ミューズの病跡学』。痛風にかかった著名人には攻撃的な人物が多いようだとして、それは高尿酸血症や、痛風による痛みによるものではないかと考えられている。
ところで、ニュートンやフランクリンやゲーテなど痛風に悩んだ偉人の多くが長寿として知られ、ミケランジェロも89歳まで生きた。これは通風によって、おこる抗酸化作用で説明できるかもしれない。つまり尿酸には強い抗酸化作用があり、それが生活習慣病の原因とされる活性酸素を不活性化させると考えられるからだ。
(引用終わり)
私はこれを読んだとき、副島先生の「夏の終わりに書いておきたいこと」の2.のことを
思い出さずにはいられなかった。すごい痛いんだろうな。
というわけで、羽仁五郎氏の『ミケランジェロ』を読んで考えたことは次回にします。
副島先生おからだに気をつけてください。また学問道場の皆様のご健康をお祈りしております。
田中進二郎拝