[1108]山中伸弥(やまなかしんや)教授の iPS細胞の保つ意味

副島隆彦 投稿日:2012/10/09 10:00

副島隆彦です。 まず以下の新聞記事のとおりです。

(転載貼り付け始め)

●「 山中・京大教授にノーベル賞…iPS細胞作製 」

読売新聞  2012年10月8日(月) 

 スウェーデンのカロリンスカ研究所は8日、2012年のノーベル生理学・医学賞を、様々な種類の細胞に変化できるiPS細胞(新型万能細胞)を作製した京都大学iPS細胞研究所長の山中伸弥教授(50)と英国のジョン・ガードン博士(79)に贈ると発表した。 (以下は、後ろに載せる)

(転載貼り付け終わり)

副島隆彦です。山中教授とガードン教授が作った 「新型万能細胞」という細胞が持つ意味を、専門家たちは知っているだろうが、普通の人たちは分からないだろうから、私が、説明しておきます。 新聞の文化部の科学担当の記者たちも、肝心の大事なことをどこも書いていない。

iPS( アイ・ピー・エス、新型万能)細胞が、重要なのは、人間(ヒト)の生殖細胞をあれこれ、いじくっていない。生殖細胞を使った遺伝子操作をしていないことが大きい。 これまでの 発生学、生命工学は、動物の生殖細胞を取り出して、それの遺伝子の操作でいろいろと危険なことをやった。いろいろの動物の受精卵をいじくったり掛けあわせたりして、人間(ヒト)の生殖細胞までいじって、それでおかしな新生物、というか、人工の新種を作ってしまうようなことを秘密で行なってきた。 

 この分野には、細菌学、病原菌学から暴走して細菌兵器、バイオ・ケミカル・ウエポン を開発することに血道を上げるような多くのマッド・サイエンティストたちがいる。

 山中教授たちは、ヒトでも他の動物のものでも生殖細胞を使わないようにして、主に皮膚の細胞を使って、自己増殖する細胞を作り出した、ということだ。 これを再生医学の病気治療に使える、ということになった。

 大事なことは、iPS細胞は生殖細胞を使わない、というこの1点である。このために、ローマ・カトリック教会(ローマ法王)が、この iPS細胞の製造、開発を認めた。ローマ教会は、ヒトの生殖細胞を他の動物の生殖細胞に移し替えて成長させるような研究に強い嫌悪感を示してきた。 

 それで、iPSなら、元気な皮膚の細胞から作るようであり、その自己増殖力の大きさを利用して、他の器官にも、それを植えつけて病気治療に役に立つ、という考えになる。 だが、たとえ患者本人の自分の 皮膚の細胞を増殖さえたものを、損傷した傷口に、メッシュ状にして貼り付けて、そこで再生させようとしても、まだまだうまく行かないようである。

 これ以上のことを、医学の素人なので、私には分かりません。

 私は、今は、「ミケランジェロ、メディチ家の秘密、15世紀イタリアのルネサンスとは何だったのか」本を書き上げて、そのあと、すぐに、恒例の経済・金融本に、急いで取り掛かかっています。 どうして、こんなに、次々と本を書かなければいけないのか、自分でも理解できない。 書きたいこと、調べたいことが、脳から無くなりません。 体の方は、かなりガタがきているようですが、頭(脳)は、大丈夫です。

 「個人備蓄(こじんびちく)の時代」(光文社刊) という本も、来週には出て、本屋に並びます。  よろしく。 会員の皆さまとは、11月3日の 定例会(講演会)でお会いしましょう。  副島隆彦拝

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 (上記の新聞記事からの続き)

 ・・・・体の細胞を人為的な操作で受精卵のような発生初期の状態に戻すことができることを実証し、再生医療や難病の研究に新たな可能性を開いた点が高く評価された。山中教授は、マウスのiPS細胞作製を報告した2006年8月の論文発表からわずか6年での受賞となった。

 日本のノーベル賞受賞者は、10年の根岸英一・米パデュー大学特別教授、鈴木章・北海道大学名誉教授(化学賞)に続いて19人目。生理学・医学賞は1987年の利根川進博士以来、25年ぶり2人目。授賞式は同賞の創設者アルフレッド・ノーベルの命日にあたる12月10日、ストックホルムで開かれる。賞金の800万クローナ(約9500万円)は2人の受賞者で分ける。

 ◆山中伸弥(やまなか・しんや)=1962年9月4日生まれ。大阪府出身。神戸大医学部卒。大阪市立大助手、奈良先端科学技術大学院大助教授、教授を経て、2004年10月から京都大教授。10年4月から同大iPS細胞研究所長。07年から米グラッドストーン研究所上席研究員も務める。

●「京大の山中教授らにノーベル医学生理学賞、iPS細胞を開発

ロイター 2012年 10月8日 ストックホルム 

 スウェーデンのカロリンスカ研究所のノーベル賞委員会は8日、2012年のノーベル医学生理学賞を京都大学の山中伸弥教授(50)と英ケンブリッジ大学名誉教授のジョン・ガードン博士(79)に授与すると発表した。あらゆる細胞に分化増殖でき、「再生医療」の実現が期待されるiPS細胞を開発した研究が評価された。

 カロリンスカ研究所は、ガードン博士と山中教授の研究について、「画期的な発見が、細胞の育成と分化についての考え方を完全に変えた」と評価した。この分野の研究では、ガードン博士が1962年、オタマジャクシの腸の細胞から取り出した核を別のカエルの卵に移植したところ、健康なオタマジャクシが誕生。これにより、成長した細胞が体のあらゆる組織を作る情報を持ち合わせていることを示した。

 2006年になって、山中教授がマウスの皮膚細胞に少数の遺伝子を導入することで、iPS細胞の作製に成功。この成果は、成体組織に成長した細胞を受精卵のように体のあらゆる組織に育つ細胞に戻せることを示した。

 ガードン博士が所長を務める研究所はウェブサイトで、最終的な目標があらゆる種類の代替細胞を作製することだとし、「皮膚や血液の細胞から予備の心臓や脳の細胞を作る方法を見つけ出したい。重要なのは、拒絶反応や免疫抑制の必要性を回避するため代替細胞を同じ個体から得る必要があるということだ」と述べた。

 山中教授は記者会見で、自身のチームの若い研究者らに謝意を述べ、「喜びも非常に大きいが、同時に大きな責任を感じる」と語った。

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副島隆彦拝