[1069]イギリスとブルターニュ

長井大輔 投稿日:2012/08/11 19:59

 長井大輔(ながいだいすけ)です。今日は8月11日です。
今日は、イギリスの国名の由来について、書いてみたいと思います。

 現在、ロンドン・オリンピックが開催中である。開催国のイギリスは「大ブリテン(Great Britain)」という名前で出場している。しかし、ここで一つの疑問が湧(わ)く。なぜ、ブリテンに「大」がつくのか?「大日本」や「大韓」のように自国を誇って「大ブリテン」と名乗っているのか?実は、そうではない。

 まず、「大ブリテン」とは、何のことかというと、イギリス本島のことである。だから、「大ブリテン」とは「ブリテン島」のことである。ブリテン島に最初に住みついたのは、ケルト人であった。のちに、ローマ人がブリテン島に住むケルト人を「ブリトン人」と呼び、ブリテン島を「ブリタニア」と名づけた。ブリテン島の名前は、このローマ人が命名した「ブリタニア」に由来する。

 ローマ人の支配が終わったあと、ブリテン島はゲルマン諸部族のアングル族・ザクセン族・ユート族など(彼らは「アングロ・サクソン人」と総称される)の侵入を受ける。ブリテン島南部はアングロ・サクソン人によって制圧され、「アングル人の土地」を意味する「イングランド」という名前で呼ばれるようになる。アングロ・サクソン人によって、西に押し出されたブリトン人は、海を渡って、ガッリア(フランス)に辿(たど)り着いた。そして、ブリトン人(ブルトン人)のフランスでの定住地が「ブルターニュ」と呼ばれるようになる。

 しかし、フランス語の「ブルターニュ」とはもともとは、「ブリタニア」、つまり「ブリテン島」を指す言葉であった。いつから、「ブリトン人の土地」を「ブルターニュ」と呼ぶようになったのか?

(引用開始)

 ブリタニアからブリトン人が移住して来たから(引用者註:ブルターニュ半島のことを)「小さいブリタニア」と言っていたのが、何百年かして「小さい」が取れ、逆にイングランドのある島の方を「大きいブリタニア」と言うようになった。それで今でも英国を指すフランス語は「グランド・ブルターニュ」だし、英語では「グレイト・ブリテン」だ。
(篠沢秀夫『愛国心の探究』52ページ)

(引用終了)

 これで、なぜ「ブリテン」に「大」がつくのかが分かった。「小ブリテン」と呼ばれていたブルターニュ半島の対比で、ブリテン島は「大ブリテン」と呼ばれるようになったのである。だから、「Great Britain」の正しい訳は、「大ブリテン」ではなく「ブリテン島」だと私は考える。

 ちなみに、「大ブリテン」が国名として、正式に採用されたのは、イングランドとスコットランドが合同した1707年である。さらに、1801年、フランス革命の影響が及ぶことを防ぐため、アイルランドをも合同し、国名は「ブリテン島とアイルランドの連合王国」となった。1921年にアイルランド26州が独立したあとは、「ブリテン島と北アイルランドの連合王国」となり、現在に至る。

長井大輔 拝