[1062]「保守派」の対義語は「進歩派」である
長井大輔(ながいだいすけ)です。今日は2012年8月4日です。
今日は「保守」という言葉について、考えてみたいと思います。
「保守(conservatives、カンサヴァティヴズ)」の対義語は、何だろうか?リベラル?いやいや、そうじゃない。革新?それも違う。正解は、「進歩(progressives、プログレッシヴズ)」だ。そのように、私は駒澤大学の政治学の講義で習った。さらに、欧米諸国では、保守派のことを「右翼」と呼び、進歩派のことを「左翼」と呼ぶとも。私は、この学問上の分類を大事にしながら、政治について考えてきた。保守派の反対は、進歩派なのだと。
ところが、日本では、保守派の反対はリベラル派、革新派ということになっている。政治用語の誤用は、日本だけかと思いきや、アメリカ(USA)でさえ、保守派の反対はリベラル派だ。ところが、である。回り回って、やっぱりアメリカでは、保守派の反対をリベラル派ではなく、進歩派と呼ぶ傾向が復活しているという。
(転載貼りつけ始め)
進歩主義 国家や社会が抱える矛盾を自由や民主主義、人権の尊重などを通じて改善し、理想的な体制への前進を求める思想。進歩主義者は英語で「プログレッシブ」。米民主党の政治家や支持者は近年、自由主義者を指す「リベラル」が草の根保守主義の台頭で否定的なイメージが高まったこともあり、「プログレッシブ」をリベラルの代わりに使う人も多い。
(読売新聞9面「進歩主義 危うい傾斜」2012年7月25日から一部引用)
(転載貼りつけ終わり)
ということで、やっぱり政治の先進国であるアメリカでは、政治用語の誤用が正されて、保守派の反対は進歩派になりつつあるようだ。そもそも、進歩主義とは20世紀初頭にアメリカで台頭した政治潮流であり、この流れの中から、セオドア・ロウズヴェルト、トマス・ウドロウ・ウィルスン、フランクリン・D・ロウズヴェルトといった大統領が生まれ、保守的な南部民主党(サザン・デモクラット)の政治家たちを押し退(の)けて、現在の民主党の主流派となった。だから、そのまま、民主党の政治家や党員たちが、自分たちのことを進歩派と呼び続けていれば、なんの問題もなかった。進歩派がいつ頃から、自分たちのことを「リベラル派」と呼ぶようになったのかは、調べてみたが、分からなかった。
そこへ行くと、韓国はすばらしい。韓国では、きちんと進歩を保守の対義語として使っている。たとえば、次のような使い方をする。
(引用開始)
左右の対決はメディア界で鮮明だ。活字媒体の大手の朝鮮日報、東亜日報、中央日報は保守派を代弁する。進歩系メディアの代表は、ハンギョレ新聞。(中略)進歩系市民団体は、保守系メディア攻撃の先頭に立ち、反朝鮮日報を叫んで不買運動を展開している。
(SAPIO2004年5月12日号、池東旭『革命世代 政権のみならず官・財にも広がる親北左翼勢力の実権奪取』)
(引用終了)
私は、政治現象を正しく研究するためには、まず政治用語の正しい使い方が不可欠だと考える。日本でも、韓国に倣(なら)って、保守派の対義語はリベラル派や革新派ではなく、進歩派だという認識が広がることを望む。
長井大輔 拝