[104]中国の内蒙古から(フフホト通信)

石井裕之 投稿日:2010/10/18 13:10

中国、内蒙古在住の石井裕之です。しばらくバタバタしておりましたので、情報の投稿が出来ておりませんでした。
副島先生の「新疆ウイグル旅行記」楽しく拝見させて頂きました。私は「銀川」にはこの間行きましたが(不動産開発の案件の確認を依頼されて)、西安や敦煌、はたまたその先まではまだ未知の世界です。先生のご指摘のように、内蒙古だけでも大変広いところでして、実際、フフホトから外に出る機会はめったにありません。仕事の関係で、天津や北京に行くことはあっても、西安に行く機会というのは進んで作らないと出来ないものですね。
以前、フフホトでカメラ店を営んでいたときに、新疆ウイグル出身の男の子を雇っていたことがありました。モンゴル語を上手にしゃべる(中国普通語は苦手)鼻筋の奇麗に通った「トルコ系」の顔立ちが妙に印象的でした。フフホトにも「新疆ウイグル」の料理店がいくつかあるので、彼に案内してもらって行ったことがありますが、店に一歩足を踏み入れると中の店員からお客さんまで全て「トルコ系」の顔立ちの人ばかりで、同じ中国(内蒙古)ながら異国に紛れ込んだような錯覚を覚えたものです。

実は私は最近、石炭関係の仕事を始めました。その関連で内蒙古のオルドスという街にも行くことがあります(オルドスは石炭成金の街)。10年前まで砂漠の農村だったところに、正に一夜にして今の大きな街並みが出来てしまっているのです。ちょっと趣きは違いますが、アメリカのラスベガスのような感じでしょうか。また、走っている車ときたら、ベンツ、BMW、ポルシェ、レンジローバー等日本円に直して3000万円級の高級車(SUVが多い)ばかりが目立ちます。それでも3000万円というと不当に高いようにも思われますが、中国は乗用車の保護貿易政策を採っていますので、完成車輸入にはビックリするような関税が掛けられます。30年前の日本でも見られた状況ですね。それでも進んでそのような高額車を買う人が沢山いるのが今の中国の底力なのでしょう。
内蒙古の石炭の炭鉱の風景写真が欲しい方はメール下さい。露天掘りですから日本の炭鉱とは趣が多少異なります。過酷な労働環境であることには変わりありませんが、バックホーに代表される重機が使えるので案外普通の「建設現場」のようでもあります。

中国の北方地域では、10月15日を境に各家庭に暖房が入ります。ボイラーで温められた温水の配管がインフラの一部として水道や下水道と同様張り巡らされていて、昼夜問わず家の中がポカポカ状態になるのです。冬には氷点下20度も珍しいことではないのでヒトが生きていく為には必須うのインフラと言えるでしょう。日本だと北海道に同様のオンドル設備があると聞きました。
その熱源として重宝されているのが石炭です。ですから、10月の声を聞き始めると、前述の炭鉱には、大型トレーラーが数珠繋ぎ(文字通り)になります。車線もないような細い道の左右にトレーラーの列が(ビクとも動かない)延々100kmくらい繋がって、自分の番が来るのを昼夜兼行で待っているのです。勿論、炭鉱の石炭供給側も24時間体制でやっていますが、とても間に合うものではありません。この間、オルドスからフフホトに帰るのに、高速道路で石炭コンボイの渋滞に捕まってしまい、19時に帰れる筈が深夜の26時になってしまいました。
私は常々、中国の高速道路網計画が「縦横無尽」に張り巡らされるのを不思議に思っておりましたが、この「流通」を目の当たりにして、必ず必要なインフラである、と確信するに至りました。北京から内蒙古に至る高速道路の渋滞情報が、毎年の恒例行事の如くテレビで報道されているのが、日本人の私の目からするととても新鮮です。差し詰め、日本のゴールデンウィークや盆暮れ正月の首都圏近郊の高速道路の渋滞情報のようなものですが、こちらでは期間中(10月から3月頃まで)毎日その状態が続くのが違いと言えば違いでしょうか。高速道路で、ハザードランプを焚きながら反対車線を直走るという貴重な経験をこちらで初めて体験しました。勿論、交通渋滞の状態が激しすぎるので、こちらの警察もそれを黙認しているような状況です。大型の貨物車はきちんと車線を守り、小型乗用車は空いた車線を臨機応変に走り回っております。一般的な乗用車だと路側帯を乗り越えるとき等に底を擦る恐れがあるので、こちらではオフロードもこなすSUVタイプの乗用車が人気を集めています。これは北京・上海と言った大都市圏とは違う傾向かもしれません。場合によっては舗装の無い、ちょっと砂漠も走らなければなりませんので。

また、先日も日本の友人と話しておりましたが、5年前であれば、日本円で2~3千万円あればそれなりの商いが出来ておりました。今では最低でも億単位の元手が無いと、大きく儲けることは難しい状況になってきつつあります。我々の居るフフホトには、ちょうど5年前に大理石の鉱脈が発見されたばかりでした。ちょっと小ぶりの鉱脈であれば、数千万円でその開発の権利が手に入ったのです。勿論、今ではそんな少額で大きく儲かる話はありません。それにつけても、中国の経済発展を肌でひしひしと感じているような次第です。今は、内蒙古の地方都市でも、札束で頬面を叩きながら商売している成金が続々と出現してきております。面子を重んじる彼等の買い物をする時の合言葉は、「おい、そこにあるモノの中で一番高いものをくれ!おう、それそれ、それを全部だ!!」。
中国のGDPに何かしらの貢献を果たしている訳ですね。今の日本とはエライ違いです。質素倹約は、経済活動には逆効果ですものね。