8月5日の株式の大暴落 と 岸田首相がやめる表明(8月14日) の 真実を書く。副島隆彦
副島隆彦です。今日は、2024年8月14日(水)です。
今の昼間の猛暑は、台風が来ていることもあって、お盆を過ぎると朝晩はどんどん涼しくなる。お盆(8月15日まで)にきっと地球が太陽に一番近づく。だから暑い、熱い。おそらく地球が自転する、その回転軸に、わずかなずれがあって、コリオリ運動?と言うのか、首振り運動をするので、それで太陽に近づく。それが2千年周期か2万年の周期か、私には分からない。 宇宙物理学(スペイス・フォジックス)の中の、惑星学(わくせいがく。プラネトロジー)という分野で研究しているだろう。 これ以上は分かりません。
さっき、岸田首相が、急に、「総裁選(9月20日)に出ない」と記者会見(press corpsプレス・コー)で発表した。なぜ急に岸田は、首相を辞めると決めたのか。あるいは、一体、誰が岸田の首を切ったのか。その謎解きを、私はさっきやった。それは、あとの方に書く。以下は、めりはりをつけるために、ポイントフォームにする。
1. 8月5日(月)に有った、日本株の大暴落。日経平均で、4,451円 の 歴史的な大下落が起きた。それで、NYの株も1000ドル以上落ちた。今は、NYダウは3,9000ドル台で安定している。
日本株も、なんとか5千円は戻して、今は、36,000円台だ。 あの大暴落から、もう10日が経(た)った。日経平均は、31,000円台まで落ちて、7月に付けた最高値の42,224円から1万円(25%)落ちていた。
私、副島隆彦は、急いで、8月7日(水)には、ここの重たい掲示板に、私の考えを書かなくては、と、思っていた。だが、なぜこういういうことになったのか、が分からないで、私は、ずっと、ぼーと考え込んでいた。それで、今日まで書かなかった。岸田がやめる、と宣言して、やっと謎が解けた。それで、やっと書く。
私の言論を、評論家どもや、新聞記者やテレビ局の連中までが、気にしている。それは手に取るように分かる。私が、大暴落の日(8月5日)に書いた手元のメモ書きは、次のとおりだ。
2.株なんかやるな。 それより、金(きん、ゴールド)を買いなさい。
株なんか、やって、また騙されて、また多くの人が損をした。新NISA(ニーサ)(一般国民向けに、非課税で釣った、投資勧誘。人ダマし)に乗せられた、500万人ぐらいが、おそらくひとり200万円ぐらい損した。まだ実損(じっそん)ではない含み損を含めてだ。馬鹿なんだ、このお庶民たちは。
新NISA なんかに、周囲の口車で(くちぐるま)で、嵌(は)められて踊らされて、煽(あお)られて、いい気になって、ド素人のくせに、株なんか何にも分からないのに。自分は頭がいハズだ、と思い込んで、手を出して失敗した。本当に馬鹿なんだ。こういう人たちは。株は博奕(ばくち)なのだ。健全な人間が手を出していいことではない。どうせ、ダマしだ。だから必ず損をする。それよりは、しっかりと金(きん)の地金(じがね、ingot )を買いなさい。これからももっともっと上がるから。急いでネット上で金貨を販売している、以下の野口コイン株式会社で、通信販売で、金を買いなさい。
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3, 日本株は、9月にまた暴落するだろう。なぜなら、後述する、円キャリートレイドの持ち高が、あと3,000億ドル( 50兆円分ぐらい)残っているからだ。これをNYのヘッジファンドどもが、大損を覚悟で、投げ捨てる(取引を解消する)のでNYの株式の暴落も起きる。
8月5日の東京市場の暴落の原因となった、円キャリートレイドが巻き戻して大損をしながら、NYの投機筋(とうきつじ)が解約した分は、まだ2,000億ドルだけだ。そのように英FT(フィナンシャル・タイムズ紙)の8月9日の記事に証拠として書いてある。あとに載せる。だから、もう一回、日本株も暴落する。
4.8月5日の 日本株の暴落の直後、私、副島隆彦はすぐにこのように書こうと思った。ところが、猛暑と炎暑で自分の体と頭(あたま、思考、知能、霊魂)が動かなかった。ずっと考え込んでいた。そしたら、ようやく謎が解けた。 事実関係を列挙する。
① 7月31日に、日銀の植田和男総裁が、意を決して、「政策金利 を 0.25%上げる」と、政策決定会合のあと発表した。3月に続いて、日本国の悲願である、“ゼロ金利からの脱出”をした。 その他に、今は、686兆円も有る日銀のマネタリー・ベース(日本国債をしこたま買い込んでいる)を、買うのを来年までに8%減らすと発表した。
② 8月1日と2日に合計で、3,000円以上株価がさがった。
③ 為替(円ドル相場)で、1ドル=141円台まで、急激に円高になった。この「円安からの脱出」も日本国(政府と大企業たち)の悲願だった。円高方向(トレンド)に向かった。
④ アメリカの失業率(雇用統計)の発表があって、年率4.3%と非常に悪かった。そして、
⑤ 8月5日(月)に、日本株が、4,451円の大暴落を起こした。1987年10月20日のブラック・マンデー以来の暴落だ、と騒がれた。NYの株価は、1033ドル下げた(5日)。
⑥ ところが、翌日の6日、日経平均は、3,217円の戻し となった。これで、不安が消えた。 日銀の 内田真一副総裁が、「日銀は、もう金利を、上げません」と、自分勝手に発表して、暴落相場は終わった(収拾した)ことになった。NYの株価も戻した。以上が概要だ。
5. 私、副島隆彦は、この10日間に、100本ぐらいの経済記事と評論文を読んだ。それらを使って、細かく証明したいが、今日はここでは出来ない。
私が大きく分かったことは、「岸田は、アメリカに首を切られた」ということだ。
それは、NYにいるデープステイトの本体(ほんたい)である、超(ちょう)財界人(大富豪の連合体)が、「岸田は私たちに損をさせた。だから岸田のクビを斬れ」だったのだ。 この間(かん)に、アメリカの手先の言論をずっと書いて来た、学者評論家と新聞記者たちが、「日本は金利を上げてはいけない。ゼロ金利のママで、そして、円安のままがいい」と書いていた。その記事たちを私は、証拠として、収集している。
日本が、もう26年間(1999年から)ずっと、日本はゼロ金利にさせられて、それで、日本は、ずっと貧乏な国になった。途中、抵抗して、2000年と、2006年に、「金利を付ける。ゼロ金利をやめる」と、日銀総裁(速水融 はやみまさる)たちが、「どうしても金利を付ける。そうでないと一国の金融政策は出来ない」と頑張ったのだが、アメリカに、押し潰された。2013年の黒田東彦(くろだはるひこ)からは、アメリカに屈服するふりをして、ゼロ金利と金融入緩和のまま、日本は屈従した。
そして、ようやく日銀植田と大蔵省(私は、この呼称を勝手に復活させる)の官僚たちの総意と団結 で、「金利を付ける。円安を阻止する」を、実行した。重い決断の末の実行だ。植田たちは愛国官僚だ。それで、NYの金融市場に激震が走った。
「もう、これ以上、日本円を、おもちゃにされて、NYの金融投機筋に、めちゃくちゃにされるわけにはゆかない」という日本の官僚たちの一致団結した行動だ。そして、本当にアメリカに打撃を与えた。だからNYの強欲資本家(大富豪たちの連合体)が怒った。
7月中に、大蔵省の財務官(No 2)の神田真人(かんだまさと)が、果敢に、円高戻しの為に、日本国の外貨準備(フォーリン・リザーブ)の中のドル預金を、一回当たり5兆円ずつ売って、市場介入したのも偉かった。
それで日銀植田が、7月31日に、「政策金利(短期金利)を年率0.25%にする」を発表した。そうしたら、NYで、おかしな動きが起きた。円キャリー・トレイドが猛然と、撒き戻し(unwind アンワインド)を起こしたのだ。
これまで、日本の円の ほとんどゼロ金利の超安値の、年率0・1%の資金を借りて、それで、他の国の株やら、米国債(べいこくさい。米財務省証券。Tボンド)の年率4.0%とかを買って、それで、自動的に大きな利益を出していた。このNYの金融富豪たちが、「日本は、もっと金利を上げるぞ」と怖れて、それで、この円キャリートレイドの、解約を大量にした。
それが、8月5日の 東京市場での株の4,500円の大暴落になったのだ。 NYのヘッジファンドどもが、軒並み、金利差(儲け)の縮小でmこの円キャリートレイドの解消(アンワインド)と、株のプットオプションの売りポジションで、大損を出した。
6.なぜ、岸田首相がアメリカに首を切られたのか、これで分かった。アメリカのNYの金融財界人(デープステイト)の怒りを買ったからだ。 岸田を、引き摺り下ろそうとしていたのは、ワルで統一教会勢力である菅義偉(すがよしひで)と、それと麻生太郎だ。だが、この2人はどう見ても互いにソリが合わず、話が合わない。
だから麻生は諦めて、先週まで「岸田でいい」と言っていた。いくら麻生が副総理だと言っても任免権者は首相である岸田だ。 だから、日本国内から岸田のクビを切れる者はいなかった。それが急に岸田がやめる、と言い出したのはアメリカのデープステイトからの圧力だ。彼らは、NYの金融財界人(大富豪の連合体で、政治の表面には絶対に出ない者たち)であり、世界中の大都市の高層ビルと土地のオーナーでもある。 それと軍産複合体で、ウクライナ向けにどんどん兵器を作って(日本とかに強制して出させる資金をその代金にして)それで、戦争経済(war economy ウオー・エコノミー。戦時インフレ政策)で、アメリカの景気を維持してきた。
彼らは、悪魔崇拝 (ダイアボリズム、サタニック・フィースト)の悪魔主義(世界は悪によってこそ、支配されている。人間の本性は、悪(あく)である)という思想の持ち主たちだ。彼らは悪であるがゆえに、強い。
日本の統一教会(Moonies ムーニーズ)勢力は、このデープステイトの手先、手駒である。その代表だった安倍晋三が、アベノミクスを称して、2013年からやったことは、まさしく、ゼロ金利の継続で、アメリカに日本の資金を流れ出させ続けて、この10年で、日本国を本当に貧乏にした。日本は衰退国家(デクライン・ステイト)となり、見るも無残な貧乏国家になった。アメリカの手先を矢ち続けた、安倍晋三の責任は大きい。
岸田は、2021年10月(3年前)に首相になった時から、必死でこのアベノミックスから、の脱出を追求した。愛国官僚たちと共に。しかも、アメリカに潰(つぶ)されないように、密かに慎重に動いた。
その岸田が、刀尽きて下りた。だから、9月20日の総裁選は、デープステイトの意を受けて「こいつでいい。若くて元気で、オレたちが日本を操(あやつ)り続けるのに丁度いい」と、出馬させる。そのために準備していた小泉進次郎の勝ち、ということなりそうだ。だが、それに対して、石破茂(いしばしげる)が、まだ、日本の善人の勢力を結集して、自民党の中の、汚れていない、地方の真面目な経営者や金持ち層に支持されて( 彼らは、統一教会=反共右翼ではない)、何とか総裁選に勝って、次の首相になるだろう。
石破なら、日本国民の最後の善良な灯(ひ)が、岸田を継いで、続く。汚れていない人間である岸田も、石破とは本当は話が合う。二階派が石破を支持して支えれば、何とか、小泉進次郎(父親の純一郎は、本当に、デープステイトの手先だった。2005年の郵政民営化で、日本国民の大切な資金の600兆円ぐらいをアメリカに差し出して、貢いだ。売国奴だ )と対抗できる。
小泉進次郎は、安倍晋三派であったし、汚れ切った、組織暴力団の頭目である森喜朗
が推している。まさしく清話会(せいわかい)だ。今は追い詰められている統一教会の勢力は、小泉ならば、組織解散にならないだろうと、一息つける。 石破が首相になっても、統一教会勢力は、閣僚(大臣)たちに潜り込むだろう。これが日本政治の悲しい現実だ。アメリカの属国のままだ。
茂木敏通(もてぎとしみつ)はハーヴァード大人脈で親分たちがアメリカにいる。しかし自民党幹事長だから岸田と共同責任となる。河野太郎は、アメリカに10年いて、英語はぺらぺらとしゃべれるが、どうも頭が軽い。コロナワクチン大臣をやらされておかしなことばかり発言したので、国民の信用を無くした。おじいちゃんとお父さんは、親(しん)中国派( pro China プロウ・チャイナ)で、偉ったのだが、こいつには国民政治家としての重みが無い。それでもアメリカが操(あやつ)ろうと思えば、この男は、これからもどうにでも使える。
7. 私、副島隆彦は、8月1日に、自分の金融本を出版したばかりだ。書名は、「米国債の巨額踏み倒しで 金融統制が来る」(徳間書店刊)である。
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米国債の巨額踏み倒しで金融統制が来る(徳間書店、2024年刊)←青い部分をクリックするとアマゾンのページに行きます。
私は、この本で、金融の世界で、大事なのは、株式よりも債券(さいけん、ボンド)の市場、すなわち米国債 だ。NYの 債券市場(ボンド・マーケット)は、株式市場の100倍ぐらいの資金量がある。 米国債を、あまりにもアメリカ政府(米財務省)が、予算を組むために、これまでの50年間で、際限なく、巨額に刷って使った、だからその信用が限界に達して、もうすぐ崩れる、と、私はこの本で書いた。このことが重要なのだ。米国債の市場が、そのまま、金利(きんり)と為替(かわせ)の市場と、直結する。
株式なんか、みせかけの、ヤラセの金融市場だ。ここで、損した儲(もう)けた、と一喜一憂しているような者たちは、大きくは騙(だま)されている人たちだ。庶民向けに作られた、健全なふりをした、金融バクチ場だ。どうせ損をさせられる。
セミプロ級で、なかなか賢い、サラリーマン定年の、目先が効いて、博奕の才能もそれなりに有る者たちが、3千万円とかの資金で、手堅く、しぶとくここで、小銭を稼いでいるのはいい。だが、このセミプロたちは、どうせ損をさせられる。
それよりも金(きん)を買って、長い目で、じっくりと自分の資産を増やした方がいい。だから、冒頭で書いた通り、私は、
8. 「新NISAなんかやって。バカなんだよ、これまで、やったこともない、株なんかに手を出して。損をすると分かりきっていたのに。証券業界に騙(だま)されたのか、日本政府に騙されたのか。そうではない。やっぱり、アメリカにだ。新NISAで買わされるのは、ほとんどはアメリカの株式ファンドだ。アメリカのNYの金融強欲(ごうよく)人間たちの餌食(えじき)のなるように、上手に騙されるのだ」と、私は、ひとりでブツブツ言っていた。「240万円まで儲け(利益)が非課税だ。さらに120万円までそれが上乗せされる」と。そして、今回の暴落で、半値ぐらいになっている。
「それよりも、今からでも、急いで、金(きん)を買いなさい。本当に実体の有る、実物資産(じつぶつしさん。tangible asset タンジブル・アセット)である金(きん)なら、あなたを騙さない」と、私はずっと書いてきて、今も言っている。 株式投資をこれまでにやって来た人は、日本国民の中の500万人ぐらいだった。国民のたったの5%だ。ずっとこうだった。それを、今度、NISAで、倍の1000万人に増やす、という、アメリカのゴールドマン・サックス(強欲人間のたまり場)が発案して、日本の金融業界と日本政府に圧力を掛けて、やらせた。そして、案の定、素人の国民大衆の中の、頭の軽い者たちに損をさせた。
30代、40代のサラリーマンが、ひとり200万円ぐらい、株で損をしたことは、本人は悔し涙で、ひとりで泣きたくなるだろう。だが、これは、大きく見れば、いい人生勉強だ。イヤなことを味わって自分で痛みを知る、貴重な人生経験だ。それでいい。
ところが60歳の定年のあと、自分の退職金までつぎ込んで、新NISAを買った者たちがいる。この人たちは、もう救われない。大事な老後の資金をこんなふうにダマし取られたら、あとは、死ぬまで、工事現場の、旗振り(交通誘導)の仕事でもして、1日1万円の収入を得るしかない。
もう、株なんかやめなさい。どうせ、あなたたち、ごく普通の人間たちには、こういう簡易(かんい)の国民バクチ、小型ギャンブルは、向かない。「自分には、株は向かない。才能が無い」と、分かったら、貴重な教訓から、さっさと足を洗って、2度と近づかないことだ。なぜなら、これから世界大恐慌になって、株はさらに大暴落する。 こういう簡易賭博(かんいとばく)の公営ギャンブルから、手を引きなさい。やめなさい。それが自分の為(ため)だ。
それから自分のすぐまわりの身近な人たち(家族)の為でもある。博奕(ばくち)の才能は、もって生まれた時からのもので、本当に好きだったら、その人は、自分でその才能に気づいた時から、もう、一生止(や)められない。女性でもそうだ。パチンコでも競馬、競輪、競艇でも、自分の脳(のう)が興奮して、止められない人はやめられない。そういう人は、一生、やり続けるしかない。麻薬、覚せい剤の 常習吸引者と同じだ。
9. 副島隆彦です。最後の方に、一本だけ8月9日の英FT の優れた記事を貼る。
それで、9月29日(日)に開かれる私の金融セミナーのお知らせ(宣伝)を軽くしておく。そのうちもっときちんと宣伝する。
(貼り付け始め)
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「副島隆彦(そえじまたかひこ)の“予言者”金融セミナー 第28回」
*会場:イイノホール&カンファレンスセンター 東京都千代田区内幸町2-1-1
*日時:2024年9月29日(日)
開場・受付/11:00~ 終了/17:30 (予定)
*受講料:15,000円(税込)/ホール指定席 または オンライン
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(貼り付け終わり)
前の方で約束した、「円キャリートレイドの巻き戻し」についてはっきりと書いている
FTの記事を、その証拠として載せる。この記事が、真実を書いていて、一番優れていた。
(転載貼り付け始め)
〇 「 「円キャリー取引」巻き戻し、なおも脅威 」2024年8月9日 FT by Leo Lewis and David Keohane
(あとで、このFTの記事に付いていた画像を貼る)
午前終値で3万5100円台をつけた日経平均株価と1ドル=146円台後半で推移する外国為替市場(8日午前、東京都中央区)
円相場の上昇で投機筋が数千億ドル(数十兆円)に上るポジションの解消を余儀なくされている。低金利の通貨を借りて高金利通貨に投資する「キャリー取引」の世界的な巻き戻しは市場をさらに不安定化させる恐れがあるとの指摘がアナリストから出ている。
円上昇で資産投げ売り
ここ3年、「円キャリー取引」は日本の超低金利を受けて爆発的に増加した。
7月31日の日銀による利上げで円相場が上昇に転じ、ヘッジファンドなどの投資家はキャリー取引の巻き戻しを急がざるを得ない状況となった。投資家が借り入れた円資金で購入した資産の投げ売りに走ったため、5日の暴落など世界の市場の混乱につながった。
「損害を引き起こさずに、史上最大規模のキャリー取引を巻き戻すことはできない」と仏金融大手ソシエテ・ジェネラルの為替ストラテジスト、キット・ジャックス氏は言う。
安く調達した円資金をメキシコペソのような新興国通貨、台湾企業の株式、不動産、米国のハイテク株などあらゆるものに振り向ける円キャリー取引は、過去最大級の複合的投機手法になったとの推計もある。
円キャリー取引の規模について、推計は難しいとアナリストらは言う。規模が大きい上に、ヘッジファンドから富裕層の資産を管理するファミリーオフィス、未公開企業に直接投資するプライベートキャピタル、日本企業に至るまで、幅広く用いられているからだ。その大部分は借りた円資金を投機に使うヘッジファンドなどの短期投資家によるものだが、国内ファンドを使って海外投資をする日本の一般家庭や企業も含まれる。
ここ数週間で4割がポジション解消
スイス金融大手UBSのグローバルストラテジスト、ジェームズ・マルコム氏は今週の顧客との電話会議で、2011年以降に積み上がったドル・円キャリー取引の規模を約5000億ドル(約73兆円)と説明した。その半分ほどが過去2〜3年に増加したものだという。ここ数週間で約2000億ドルのポジションが解消され、最終的には全体の取引の約4分の3が巻き戻されると同氏は予測している。
ある日本政府高官は「近年、不合理なキャリー取引の活用が多かったため、いずれかの段階で非常に大きな巻き戻しが出ることは避けられなかった」と言う。
国際決済銀行(BIS)によると、国際的な円の借り入れ(必ずしもすべてがキャリー取引ではない)は21年末以降に7420億ドル増加した。オランダ金融大手INGのアナリストチームによると、日本からの国際融資は24年3月時点で157兆円に達し、21年から21%増加している。
だが、日本の当局が円安是正のため介入に動き、先週には日銀が予想外の利上げに踏み切るとともにさらなる引き締めを強く示唆したことで、根本的に潮目が変わった。
一部のアナリストやトレーダーは、円キャリー取引を用いた投機性の高いポジションの大部分が解消されたのではないかとみている。売りの動きがヘッジファンドから「リアルマネー」の投資家へと移るなかで、さらにかなりの清算がありうるとの見方もある。
さらなる円上昇も
「円キャリー取引については、正確な規模や現時点でどれだけ巻き戻されたのかは誰にもわからないというのが実態だ。しかし現段階で、投機の資金調達に用いられていた最もリスクの高い円ショート(売り持ち高)の一部は完全に解消された感が確かにある」。米JPモルガン・チェースの東京在勤為替ストラテジスト、ベンジャミン・シャティル氏はこう話す。現金ベースのキャリー取引はおそらくピークを越えたが、「まだいくらか先がある」という。
シティグループ証券の通貨ストラテジスト、高島修氏は日銀のサプライズ利上げ後の投資家向けメモの中で「現在の調整は終わりの始まりにすぎない」とし、円相場は26年までに1ドル=129円、27年には116円まで上がる可能性があると予測している。記事執筆時点では147円台で推移している。 By Leo Lewis and David Keohane
(転載貼り付け終わり)
副島隆彦拝