崩れゆく選挙制度・その先に見えるもの

片岡 裕晴 投稿日:2024/04/27 13:33

 

●前々回の東京都知事選挙(2016年)に立候補した立花孝志はNHKのスタジオで政見放送を録り『NHKをぶっ壊す!』というスローガンを9回叫び、一躍有名になりました。しかし、大半の人々は(不倫!路上!カーセックス!でNHKを批判した)そんな異端児立花孝志に拒否反応を示しましたが、10代の中高生達にとっては立花孝志にはどこか、何か引きつけられる魅力があったようです。2019年の統一地方選挙までの3年間に地方選挙の応援演説の為に各地の駅前に立った立花に、下校途中の中高生が寄ってきて、立花とアイコンタクトを取った後『NHKを!』と生徒達が叫ぶと、すかさず立花は笑顔で『・・・ぶっ壊す!』とポーズを返すと、彼らは大喜びで笑い転げるという光景がどこの街頭演説会場でも見受けられました。・・・・・あれから8年の時間が流れ、その時の中学一年生はとっくに18歳を超えて立派な有権者である。
●応援演説が終わると、写真撮影の時間が始まり生徒達は立花とツーショットやグループショットを『ぶっ壊すポーズ』を作ってスマホで撮影し、SNSに投稿する。その後、一般の有権者も集まってきて、『立花氏と立ち話』と名付けた対話集会が行なわれる。(そこでは選挙や政治の話だけではなく、人生相談まで立花は聞いている)応援演説や対話集会はYouTubeで中継され、同時接続で数百人から千人が視聴し、アーカイブでは数千人から一万人以上の人が観ることになる。
●前回の東京都知事選挙(2020年)では当時のN国党から3人の候補者を立てた。一人しか当選しない知事選挙に3人出すのはおかしいとお怒りになった(融通の利かない頑固な)方々は、今回(2024年)の都知事選挙に立花は30人の立候補者を立てるだろうと聞いたら、発狂するかもしれない(笑)

 

◆◆Democracyへの冒涜か? それとも・・・◆◆

立花孝志は真剣に『選挙ジャック』を考えている。 『選挙ジャック?』 エッ、何で・・・?

『選挙ジャック』をすることで人々を目覚めさせてこの国を変えようとしているように(私には)思える。常人なら非常識と思われるようなアイデアを合法の範囲内で考え出し、そして実行するところが普通を超越しているのだ(妄想するだけなら誰でも出来るが・・・)。余りにも現実を超越しているので、ほとんどの人は受け入れることが出来ず拒否反応を示すだろう。『なるほどそんな手があったのか』と相の手を入れられる大らかで、寛容な人々や中高生のようにまだピュアーな若者にとっては立花が天才であることを直感するだろう。

選挙の供託金が高いという話はよく聞かれる。しかし、立花孝志は供託金は安いと言う。例えば、東京都知事選挙の供託金は300万円である。300万円がなぜ安いかというと、①テレビでの政見放送(NHKテレビで6分×2回、民放で6分 ラジオでの放送もある)②各戸に配布される新聞(選挙公報 1ページの4分の1が無料で掲載される)朝日、読売などの新聞の有料広告が公費で掲載出来る③1万4000カ所の掲示板にポスターを貼る事が出来る・・・・・これだけのことがたった300万円で出来るので広告費に換算すれば3億円はするであろうと考えれば極めてコスパが良い、と立花は考える。

事実、2016年の都知事選挙に出た立花は『NHKをぶっ壊す!』で知名度を高め、3年後の参議院選挙で当選している。都知事選挙での広告効果が参議院選挙に有効に働いたのだ。当選した立花は(別の選挙に出馬したので)参議院議員を自動失職し、後を引き継いだ浜田聡(現参議院議員)は、この時の都知事選挙の政見放送を見て立花という『ぶっ飛んだ才能』を知り、N国党に入党したという経緯(いきさつ)もあって、都知事選挙は立花にとって、次に控える国政選挙の前哨戦という位置づけなのだ。(だから、都知事に当選する事なんて端(はな)から考えていない)

◆◆現行の選挙制度にアンチテーゼを突きつけ、『選挙革命』を行なう◆◆

現行の選挙制度は合理的ではなく、不公平であるだけでなく憲法に違反している。思いつくままに、その不合理や不公平な事柄を挙げていくと・・・・・

①被選挙権の年齢差別、これは法の下の平等に反し、憲法違反である(首長選、参議院選は30歳以上 衆議院選、地方選挙は25歳以上) 
→ これを選挙権と同じく18歳以上とする。年齢差別は職業選択の自由を奪っている。若者の投票率が低い原因一つは同世代の候補者がいないことである

②政治家の家業化(代々受け継ぐ世襲議員、2世議員、3世議員、4世議員・・・)を防ぐ → 政治家ではなく『政治屋』を作ってしまう 
③一票の格差問題の解消 
→ ②③は衆議院の小選挙区の廃止と参議院の選挙区を廃止して、全国を(参議院比例区と同じように)一つの大選挙区としてしまえば全て解決する 

④国政政党の候補者だけに与えられた特権を廃止して、国政政党、政治団体、無所属の候補者を全て同じスタートラインで選挙戦が戦えるようにする 
→政界ほど新規参入が難しい業界はない。原因は公職選挙法が既成政党、特に自民党に有利であるように作られているからである
⑤選挙ポスター掲示板の廃止とテレビの政見放送の廃止 
→ 掲示板の設置費用は税金の無駄使いであり、ポスターを貼る作業は組織力のある候補者に有利である。選挙管理委員会の公式サイトで候補者が政見を述べれば良いし、普段から自分でYouTube チャンネルを作り政治的立場や政策を発表しておけば良い

上記のような問題点は立花が記者会見や選挙演説において日頃から主張していることであるが、この7月に行なわれる都知事選挙において以下に述べるような方法でインパクトのあるプレゼンテーションが行なわれるであろう。

それを一言で言うならば『選挙革命』である。このような主張をする目的は選挙制度全体でかかる費用をできるだけ少なくする様に啓発していくこと、選挙が公平に行なわれる様にすることが究極の目的である。

◆◆都知事選挙では3つの政治団体を立ち上げる◆◆

■新たに3つの政治団体を立ち上げ、それぞれ10人の候補者を立てる。 → テレビの政見放送では(『NHKをぶっ壊す!』というNHK党の主張を1分間した後)各政治団体がそれぞれの政見を残り5分間で主張する。 → 12分×30(人)=360分=6時間 NHKの地上波を6時間独占出来る
(供託金はNHK党が負担する)

■選挙が変わった、選挙は面白いと有権者が思わず振り向かざるを得ない選挙戦術を用い、(選挙に毎回投票に行っていた50%の有権者からは相当な反感を買うだろうが)選挙に関心が無かった50%の有権者は注目するであろう

■新しい選挙運動に自発的に参加したくなる仕組みを作る → これは2022年の参議院選挙で実際に行なわれた手法であるが、期日前投票に行った有権者が投票用紙に『ガーシー』と名前を書き、その場でスマホで投票用紙を写真撮影する。会場を出た有権者はすぐTwitter(現X)でその写真を投稿する。そのツイートにガーシー本人や支持者が『いいね』を押すという選挙運動を広め、選挙運動を盛り上げた。 → 今回も初めて投票に行く人の動機付けの為にこの運動を拡大していく。

 【期日前投票用紙撮影事例】 (2022年参議院選挙)
 ↓   ↓   ↓
https://twitter.com/search?q=%E6%9C%9F%E6%97%A5%E5%89%8D%E6%8A%95%E7%A5%A8%E3%82%AC%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%BC&src=typeahead_click

◆◆選挙を面白くして選挙に行かない50%を目覚めさせる◆◆

『選挙革命』で選挙に無関心であった50%の有権者が参加したくなる(次の様な)仕掛けが用意されていくことになる。それは『エンターテインメントに包まれた政治運動』といっても良いだろう。

■候補者を30人擁立する(前回2020年NHK党から3人立候補→ 同一政治団体から複数名候補者を立てるのは合法と確認されている)

→2016年の都知事選挙の立候補者数は21名、2020年は22名だったので、今回は50名以上立候補者数となると予想できる。掲示板の大きさは前回の倍以上が必要となり、経費も倍となる。従って選挙管理委員会によっては前回と同じ場所に設置できるか等々の検討が必要となり、場合によっては掲示板の設置を見送ることも起こり得るかも知れない。
→また、供託金は300万円×30(人分)=9000万円である。
→上で述べたように都知事選の広告効果は3億円の価値がある。30人分の供託金9000万円が広告効果に換算すれば100倍の90億円の(広告)波及効果があるといえる。

■選挙ポスター 同じポスターを30枚並べて貼る事の『衝撃』が話題となる

→掲示板に50人の候補者のポスターが貼られる事になる、そのうちの30枚が同じポスターが並んでいた場合のインパクトを想像してみると・・・それは『驚き』である

 【例1】ポスターは(候補者以外の)同じ人物の顔写真でも良い(候補者のポスターは貼らない)
   前回2020年の知事選では(候補者ではない)ホリエモンの写真を3枚並べて貼っている(これが合法であることは実証されている)
 【例2】例えば『被選挙権を18歳に引き下げよ!』というスローガンでも良い
 【例3】あるいは自分の愛犬や愛猫の可愛い写真と動物愛護のキャンペーンをしても良い
 【例4】『地球温暖化は嘘!EVよりもやっぱりガソリン車が素晴らしい!』という主張
 (商売に繋がるものや商品の宣伝は当然駄目)しかし、製品を広めることはOK 
 【例5】 『日産リーフに乗り換えて、炭酸ガスを減らそう』→× だが 『EV(電気自動車)に乗り換えて、炭酸ガスを減らそう』→○
    (世の中にまだ知られていない製品があれば、それを宣伝すれば結果として商品も売れる)

30枚同じポスターを貼ったダミー掲示板
  ↓   ↓   ↓
https://www.youtube.com/watch?v=Adhc8rhfxPQ

■掲示板一カ所につき30枚の(自分の主張の為の)ポスターを貼る権利を提供(東京都民でなくても日本国民なら誰でもOK)

→都知事選挙のポスター掲示板は14,000カ所設置される。その一カ所につきNHK党に1万円の寄付で誰にでも(貼る)権利を譲るというものである
→(一人何カ所でも、場所は早い者勝ちで)もし延べ9000人以上が応募すれば、供託金9000万円は寄付でまかなえる
→これは選挙に関心が無く、これまでの選挙に投票に行ったことのない人たちへも選挙に関心を持ってもらうきっかけにもなるし、世の中に訴えたいことがあってもなかなかその機会に恵まれない人が、わずか4万円の負担(寄付1万円+ポスター代3万円)で20日も自分の社会的主張を発表出来る。そして、その30枚のポスターが貼られた掲示板を背景に自分の写真をスマホで撮って、SNSで(自分の主張を)拡散できる。(つまり、ポスター掲示板一カ所のプレゼンに終わらず、インターネットを通して全世界に何度でも拡散できる)

■選挙掲示板が『インスタ映え』するスポット化 → InstagramやTwitter(現X)で話題沸騰となる様な仕掛けをアイディア次第で誰もが作り、参加していく事が出来る

【特別衝撃事例】小池百合子が三選を目指して立候補する場合は『学歴詐称は公職選挙法違反である』というポスターを30枚貼った中に『小池百合子』のポスターが1枚あるというポスター掲示板のインパクトを想像してみましょう(カイロ大学首席卒業?)→ 都庁前の掲示板にこのポスターが貼られた場合、間違いなくそこは撮影スポットとなるであろう

都知事選挙はあくまでも次に控える総選挙(衆議院議員選挙)や参議院議員選挙の前哨戦である。再度確認しておきたいのは、都知事選挙とは国政選挙の為の『大宣伝』の場であり、今まで誰も考えもしなかった様な『選挙革命』を行なう目的は(これまで選挙に関心が無かった50%の)有権者を目覚めさせ、選挙に対する『古びた思い込み』を捨て去り、全ての候補者が平等に選挙戦を戦えるように『公職選挙法』を作り直す為の『政治運動』なのだ。

『NHKをぶっ壊す!』 → 『既得権益をぶっ壊す!』 → 『既得権益とは何かを追求(追究)していけば』 → その背後に存在する『巨悪』が浮かび上がって来るであろう。

◆◆公職選挙法は大幅に改正されるだろう◆◆

●4月16日告示4月28日投開票日の衆議院議員補欠選挙東京15区において、誰もが予想しなかった選挙制度を揺るがす事案が発生している。
それは、候補者による他の候補者と聴衆の『演説を聴く権利』に対する公然と行なわれる選挙妨害である。この事案は告示日から選挙期間中、毎日行なわれている。
妨害された陣営や一般有権者からの警察への通報が行なわれ、警察官が駆けつけるのだが、選挙妨害を行なっている者が候補者とその運動員達であるということで、現行法では候補者の選挙活動の権利が優先される為、警察は警告を発する事しかできず、お手上げの状態である。

●4月25日、吉村大阪府知事は記者会見を行ない、人口減少に伴う『消滅可能性都市』に関連した発言の中で『0歳児にも選挙権を与える』という考えを示し(あくまでも個人の持論であるがと述べた上で)日本維新の会の選挙マニフェストに入れていきたいと発言した。

●4月26日、日本保守党の百田代表は自党のYouTubeチャンネルで、この吉村知事の『0歳児に・・・・・』発言に関連して、『この吉村発言は若い世代に政治の発言権を持たせたいという趣旨だと思うが、こんなことを言うのはアホや。若い世代重視の政治が必要なら、80歳以上は選挙権を制限するとかの方がいい』と述べた。

(つづく)

(2024年4月27日投稿)