アニメ「チ。-地球の運動について-」は将来ある若者たちへの”試金石”である
結論を先に言うと、NHKで深夜に放送されていたアニメ「チ。ー地球の運動についてー」(3/15に最終回だった)は広く若い人たちに見ていただきたいということ。(NHKで4月に再放送されます)
15世紀のヨーロッパにおいて地動説が”異端”とされ、その説を綿々とつないだ人たちの物語なんですが、実はそのことはストーリーの軸ではないのです。
科学(Science)の発祥の根源をフィクションでありながらも”歴史に刻まれない人々”がまちまちに紡いできたという現実だった。
かいつまめばそれだけ。
でも少しでも科学に興味があれば、観て損はないと思います。
特にリベラルアーツが軽視されて粗製乱造された我々疑似理系世代にとっては(ほとんどの日本国民がそうなんでしょうが)、西洋学問(Science)を深く理解するきっかけ
にはなります。
地動説による天文学が”世界は帰納的に表せられるんだ”といったという発見に至り、やがてニュートンやライプニッツにより代数学へと至ります。
代数学はコンピュータの登場で、さらに発展し、モニター上で再現(シミュレーション)できるようになります。
こうなると世の中すべて代数計算で再現できるのではという全能感を感じる人もいるはずです。
でもその全能感は実は一瞬で、いくらコンピュータの性能が向上しても現実ではないと気付く
AIが華やいで済ますが、その中身は代数学のキモといえる行列演算の塊で、パラメーター(初期条件)次第で結果は異なります。
AI技術者らは代数学教の信者だから、この世(宇宙)は数値計算で表わせるはずだという教義(ドグマ)を信じているからこそ、修道士かのようにパラメーターで苦闘する
1997年のノーベル経済学賞はブラック・ショールズ方程式です。株価がこれで算出できるという幻影を抱いたのもつかの間でLTCMが破綻しました。また阪神淡路
大震災でマンションが崩壊しましたが、あれで建築申請の構造計算(コンピュータシミュレーション)もずいぶん変わりました。
いまでは世の中が進んで主役が現代物理学(素粒子学)とかに移ると、ひたすら確率論で曖昧模糊な概念だらけになっています。なんだかなあ
余談ですが、自分はビッグバン理論を自分は信じていません。代数学信者であったがゆえに特異点があるということが心情的に許せない。
でも宇宙の創生へと至る偶然の神秘はあると感じてはいるという矛盾を抱えています。
神様と崇めている正体は、いったいなんなんだと考え続けるのが学問なんだということを「チ。-地球の運動について-」で気づかせてくれるのです。
六城雅敦拝