評論家の語る内容の殆どはウソである
相田です。
エルピーダとは、DRAMという半導体の製造技術を残すために、日立、NEC、三菱電機などが集まって作られた会社なのは、今更私が説明するまでも無い。最近の半導体の価格高騰の中で、エルピーダの破綻の経緯について再び注目されている。その中でも、引用した著者の説明内容は白眉と言える。
政府の資金援助が足りないとか、巨額な設備投資に日本企業は耐えられない、などという、巷に流布される理由とは、実情は全く異なるらしい。全文の引用は避けるが、「坂本幸雄社長は無能である」と断定しているのは重要だ。坂本氏の評価がどうだ、という点ではない。巷で流布されている、経済評論家、技術評論家の考えが、全くもって独りよがりの、信頼の置けない内容である事が、白日の下に晒されている。これが重要だ。
要するに、巷の評論家の殆どは、信用にならんのよ、おそらくはどの分野でも。
(引用始め)
まだそんなことを言っているのか!間違いだらけの「エルピーダ破綻の原因」
3/6(日) 11:01配信 yahooニュース
■ 日経新聞の特集記事の「間違い」
坂本氏は、(1)「生き残っていれば、世界と戦えた」とか、(2)問題は「資金力だ」と発言したが、全く事実は異なる。調査結果で論じたように、異常なまでの高コスト体質のエルピーダが倒産したのは必然である。「坂本社長のエルピーダ」は淘汰されたのである。資金力の問題ではない。収益率の低さが問題であり、収益を出せない技術にこそ問題があり、そこに経営のメスを入れることができなかったことが致命傷になったのだ。
日経新聞の(3)「エルピーダの破綻劇は、官民が巨額投資を伴う長期戦に耐えられなくなった構図」というのも間違っている。繰り返すが、過剰技術で過剰品質をつくり、歩留り100%を目的にする、そのエルピーダの企業体質が問題だったのだ。
東京理科大大学院教授の若林氏の(4)「DRAMの技術や最終製品の動向を、当局や金融機関が十分に捉えられていなかった」や(5)「日米貿易摩擦の記憶が残る日本」などは、全く的外れな指摘だ。もっとエルピーダの技術の実態を見て発言してもらいたい。
萩生田経産相の(6)「世界の半導体産業の潮流を見極めることができず、適切で十分な政策を講じてこなかった」という発言もどうかしている。昨年(2021年)6月1日の衆議院の意見陳述でも述べたことであるが、経産省は呆れるほど「合弁、国プロ、コンソーシアムをやり続けた」のである(図5)。そして、全部失敗した。「経産省が出てきた時点でアウト」なのである。その反省をなぜしないのか?
(7)TSMCの誘致を奇貨として日本での産業基盤を強くするためには「「設備にしても開発にしても『カネ』と『ヒト』だ」という経産省の西川課長、『ヒト』を育成してからTSMCを誘致すべきではないのか? 順序があべこべだろう。そして、(8)「九州では人材育成の準備を急ぐ」というのは、あまりにも泥縄すぎるだろう。
筆者が日経新聞の特集記事を読んで、うんざりした理由が分かっていただけただろうか?
■ 「マイクロンになってよかった」という社員たち
坂本氏、日経新聞の記者、東京理科大大学院教授の若林氏、萩生田経産相、経産省の西川課長には、EE Times Japanの記事「『Micronになってよかった』という言葉の重さ」(2019年7月8日)を、目を見開いて読んでいただきたい。そして、「Micronになってよかった」という言葉の意味をよく考えていただきたい。
筆者も、2019年に広島で国際学会があった時、旧エルピーダで現マイクロンジャパンの社員たちから、「マイクロンに買収されて本当のDRAMビジネスが理解できた」「エルピーダが倒産したのは不運だったのではなく、当然の帰結だ」「外資企業となった現在は完全な実力主義であり、実績を上げれば昇進・昇格・昇給できる」「仕事は大変だが充実しており、エルピーダ時代がいかに甘かったかが実感される」ということを聞いた(「中国は先端DRAMを製造できるか? 生殺与奪権を握る米国政府」EE Times Japan)。
このような実態を理解せずに、日本半導体産業への政策などは、一切行わないでいただきたい。それは税金の無駄遣いであり、何度も失敗の歴史を積み重ねることになるからだ。本当に、もう、うんざりなんです。
湯之上 隆
(引用終わり)
相田英男 拝