得意な専門分野での見解を教えてください。

えいちゃん 投稿日:2010/06/29 22:35

おじいさん様へ

早々、御返事をいただき有難うございます。
私は実名投稿でもかまわないです。名前と身分を明らかにされない私に対するメールは無責任な御意見が多かったため、実名では一つ一つに真摯に対応することができなくなりました。

おじいさん様のプライベートを知りたいとは思いません。
実名を名乗ることよりも、「私は現在こういう医療を実践し、こういうことを目指している」という軸となる「自分なりの医師像」を表明しなければ、実体験のない第三者的な医療批判だけでは説得力を欠きます。
治療家としての誇りをもっていただきたい。
国を憂いたり知らない漢方を論じるより、まずは御自分自身が実践されておられる医療の範囲内での不満を投稿されるなり解決すされることが第一歩です。

「カンブリア宮殿」でのツムラの社長の副作用の解説は番組の中盤でした。正味30分程度の番組では、視聴者に語りつくせないのは自明です。聞きかじりだけで批判されずに、ケアネットなり講演会などでエビデンスなり副作用なり、じっくり習得されるといいと思います。

 調剤薬局の方はお医者様より積極的に漢方の勉強会に参加されますが、保険適応のない漢方薬局の方は縄張り意識が強いのか、呼びかけても合同の会に参加されません。今後は情報交換や病信連携などの意味で両者が歩み寄ることが大切だと思います。

 漢方の専門医は基本的に病名処方はしないので、西洋薬と違い漢方で重篤な副作用が出る場合は、証を誤って処方された場合が考えられます。
一方、抗癌剤や免疫抑制剤で間質性肺炎などの副作用が起こる場合は、病名で投与されていても、そもそも最初から投与すべきではない「適応外の病状」である場合がほとんどです。
漢方に不慣れな医者が望聞問切を怠って「肝炎に小柴胡湯」「喘息に麦門冬湯」など、ガイドライン通りでも考えずに投与することが危険です。

高価な漢方薬を売る漢方薬局が詐欺だとは思いません。ただ売り逃げするのではなく、自分が売った薬でお客様の具合が悪くなったり、副作用が出た時には逃げないで、最後まで責任を持って対応して欲しいだけです。
「病名処方」のレベルどまりの臨床医が多いことは事実です。おじいさん様は何を「矛盾」といわれているのかわかりませんが、重篤な副作用を起こした責任は当然処方をした医師にあります。主治医を信じた患者にも責任があります。

パンフレットなどに記載されているエビデンスのあやしさは、すでに西洋薬での大規模臨床試験の段階からあります。漢方がこのようなあやしいエビデンスの捏造につき合わなくてもいいだけです。
「月刊ザ・フナイ」6月号での副島隆彦先生の論文において、科学(サイエンス・近代学問)の下りでこのことは的確に述べられています。トーマス・クーンの「科学革命の構造」の下りを御参照してください。

わたしはEBMとNBMを対比させましたが、EBMとオーダ―メードは対比させていません。要はわけのわからない欧米人の何万人のデータを自分のエビデンスと錯覚したように信仰するより、N=1でも自分が実体験したものこそ、自分だけのエビデンスだと会得することが、サイエンスの第一歩だと私は思います。

 漢方薬を処方されなくて困っていないのなら、おじいさん様が自分の処方されている得意分野の西洋薬の範囲内で、自分自身が体験された問題点を提起していただいた方が我々も勉強になると思います。

 漢方薬は、西洋薬の様な「病気の修復」という意味より、「滋養強壮や健康増進、アンチエイジング」的な目的で飲み続けることには意義があります。
日本人も薬膳のように、日常でも身近に漢方的な食事や生活を心掛ける意識が高まって来れば、そのうちエキス剤を処方しなくてもいい、自分で治せる医療が実現するのかもしれません。