「1579」 学問道場関連の新刊書籍二冊、『暗殺の近現代史』(洋泉社、中田安彦が参加)と、『天皇家の経済学』(同、吉田祐二・著)が発売されています。ぜひ、お求めください。2016年1月14日

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 中田安彦です。今日は2016年1月14日です。今日は、昨年の下條竜夫さんの新刊書に続き、学問道場関連で副島隆彦先生以外の著者による書籍が二冊刊行されていることを皆様に是非知っていただきたく、お知らせいたします。書店でやオンライン書店で是非お求めください。

 一冊目は、私(中田安彦)が執筆者のひとりとして参加している、『暗殺の近現代史-暗黒の事件史に秘められた謎とミステリー』(洋泉社)です。こちらは昨年の暮に発売されました。この本は、有名な歴史作家の井沢元彦さん、フリーメイソン研究本で知られる加治将一さんや、戦前の日本の国際金融資本との関わりを独自の視点(主著『神々の軍隊』)で研究している濱田政彦さん、元外務省国際情報局長の孫崎享先生、その他、長島雪夫、藤巻一保、小池壮彦、斎藤充功、大野芳の各氏の寄稿で構成されています。孝明天皇暗殺(井沢元彦氏の新説)や濱田氏の「2・26事件」についての論考を特に私は興味深く読みました。

 私が参加しているのは孫崎先生と永島氏の参加している、現代日本政治についての章で、アメリカにいた時に「観察」した、日米関係の重要な部分を動かすようになっている、シンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」と日本経団連の癒着関係についてリサーチレポートを寄稿しております。東日本大震災以降、この関係が露骨になりました。

 安倍首相の外交上の動きは、すべてこの「CSIS・経団連」の連合体の思惑によってコントロールされていると言っても過言ではありません。安倍首相が昨年の末に慰安婦問題で韓国側に改めて謝罪し、生存している慰安婦46人のための基金・財団に10億円ものお金を提供するということが発表されましたが、この日韓和解の演出もジャパン・ハンドラーズが日韓防衛協力を推し進めるため、ひいては中国・北朝鮮対応において融和的になっていた韓国の外交スタンスを米日同盟側に引き戻すためのものです。日韓の防衛協力を推し進めるために米国は仲介者として慰安婦合意を強く推し進めたということです。日韓が防衛機密を共有することが出来る関係にすることが、アメリカの安全保障関係者の狙いです。

参考:慰安婦合意の裏で「均衡外交」の代わりに韓米日同盟強化(韓国左派系のハンギョレ新聞 2015.12.30 22:34)
http://japan.hani.co.kr/arti/politics/22925.html

参考: 日韓は安保で握手する時だ(日本経済新聞・2015/4/16 3:30)
http://www.nikkei.com/article/DGXKZO85744150W5A410C1EA1000/
 

 ですから、安保、TPP、原発再稼動、武器輸出、メディア・コントロールと、全てにおいてこの関係を考慮して、日本のリベラル派、穏健派は対策を立てなければならないでしょう。この学問道場でもCSIS日本部の現状は、昨年9月末の稲田朋美・自民党政調会長訪米の際に簡単にレポートいたしましたが、更に新しい情報を加えてレポートしております。CSISという存在を適切に分析することが「日本の運命を左右している」と言っても過言ではないと思いますので、ぜひお読みいただければ幸いです。

===== 

 次に紹介するのは、吉田祐二(SNSI研究員)の『天皇家の経済学』という本です。この本は、『日銀/円の王権』(学研)を書いた吉田さんの主著である『天皇財閥』の復刊ですが、内容は構成と一部の記述が改訂されています。明治維新以降の「天皇家」にまつわるおカネの話が全部網羅されており非常に意義のある本だと私は思います。戦前の天皇家の資産は、三井・三菱といった財閥を10倍も上回るものだった、という発見は非常に意義のあることだと思います。吉田さんは、皆様もご存知のように、日本の近現代と国際金融企業の関わりに特に絞って研究をしているのですが、欧米側の視点ではなく、日本の側からこれらの国際金融グループとの関係を解き明かしているのが非常に特徴的です。

 以上、歴史、外交、金融と扱った二冊の本を紹介してきました。外交の話も究極的にはおカネの配分の話ですし、歴史も一皮むけば、お金を巡る争いです。そういった視点でこの二冊の本を読んでいただくと、現代日本に対する理解も更に深まるのではないのかと思います。

 以下に、それぞれの本の目次を載せます。

『暗殺の近現代史』 目次

暗殺の近現代史・目次

◇タイトル

暗殺の近現代史 目次

◇ネーム

第一章 孝明天皇〝暗殺〟疑惑と〝細菌テロ〟……

作家・井沢元彦が語る孝明天皇〝暗殺〟疑惑の真相……

長州にとって有利に働いた孝明天皇の死
「暗殺」ではなく、「傷害致死」である
明治天皇〝すり替え〟説への反論

第二章 龍馬〝暗殺〟の闇……

作家・加治将一が語る「近江屋事件」の真相……

「日本の歴史というのは、相当に〝美しく綺麗に描かれている〟という印象がある」
「龍馬は一千万から二千万を超える金を平気で使っていた可能性がある」
「龍馬がいとも簡単に斬られることなど、一〇〇%あり得ない」
「〝犯人は新撰組だ〟 〝京都見廻組〟だという話は僕からすればあり得ない」
「最後の手紙が実は 〝暗号だった〟という事実が浮上するんです」

第三章 伊藤博文〝暗殺〟事件、抹殺された真犯人……

安重根は、伊藤博文を本当に撃ったのか 文◎斎藤充功……

対露脅威を主張した伊藤の政敵・山縣有朋
安重根は、なぜ「ロシア語」で叫んだのか
ハルビン駅にかつて存在した「二階の食堂」
伊藤博文を「孝明天皇を殺した逆賊」と糾弾
安重根は、犯人ではない……

「ハルビン事件」の真相と消えた〝真犯人X〟 対談◎大野芳・斎藤充功……

「伊藤博文を撃った犯人は安重根ではない」
「安重根は伊藤博文の顔を知らなかった」
「安重根は孝明天皇の名を知らなかったのだと思います」
「伊藤のハルビン行きを強く勧めたのは、後藤新平」

第四章 「虎ノ門事件」と近代日本の系譜……

大逆犯人・難波大助の呪われし宿命と長州閥の正体 文◎小池壮彦……

事件とその余波
危なかった摂政宮
死刑回避のシナリオ
七度生まれ変わっても……大助の呪い
難波家と長州閥の秘密
天皇の権威低下という時代背景
大助の恋人

第五章 「血盟団事件」と暗殺時代……

立て続けに起こった〝テロの嵐〟 文◎藤巻一保……

天皇側近および政財界の大物を一掃する「破壊」
右翼を見切り、「一人一殺」のテロリズムへ
資本主義の大波に翻弄される「農村」と肥大し続ける「財閥」
歪んだシステムの頂点に君臨する財閥
残された道は「クーデター」以外になかった

第六章 「二・二六事件」――神と貨幣をめぐる暗闘……

昭和最大の〝軍事事件〟に潜む「秘密」 文◎濱田政彦……

幕末維新と二・二六事件の運命の分かれ目だった〝現人神〟
二・二六事件と三島を捕らえて離さない〝死の暗黒世界〟
「神」と「貨幣」という相容れぬ論理が共存する日本
事件の導火線――軍務局長「永田鉄山」惨殺
〝神〟に梯子を外され、滅亡した〝神々の軍隊〟

第七章 潰され、そして消された政治家たち……

孫崎享が語る「アメリカに潰された政治家と安倍晋三の真意」……

「岸信介=アメリカ従属の手先」という刷り込まれたイメージ
アメリカを差し置いて中国と接近した田中角栄の末路
日本の中枢を牛耳る〝アメリカのシンパ〟
小沢一郎と鳩山由紀夫が踏んだ〝虎の尾〟
アメリカの言うことをひたすら聞く安倍晋三

ジャパン・ハンドラーズ――次なる日本の首相候補を育てる「キングメイカー」 文◎中田安彦……

ひとりの女性政治家の訪米が意味すること
マイケル・グリーンの〝もうひとつの顔〟
〝ジャパン・ハンドラーズ〟とは、何者なのか
「アーミテージ・レポート」の真の狙い
日本研究をするよりも中国研究をするほうが儲かる
〝地方の支社長クラス〟にコントロールされる日本の現実

政治家の〝怪死〟と謎 文◎永島雪夫……

小渕恵三の不審な死とさまざまな謎
「どうも人工的な薬があらかじめ使用されたのではないかと」
スキャンダルの渦中に起きた新井将敬の〝自殺〟
汚名挽回の格好のターゲットとなったかつての〝若きホープ〟
「僕は日本人になろうとして日本人になった日本人」

『天皇家の経済学:あなたの知らない「天皇家」お金の秘密』 目次

天皇家の経済学・目次

◇タイトル

天皇家の経済学―ー目次

◇ネーム

第1章 皇室の家計簿……009
皇室の費用は3種類……010
「新嘗祭」や「神嘗祭」などの宮中祭祀は「私的行為」……012
天皇の「手取り」は1億円……!?……014
天皇家の「不動産」「預金」はどれくらいあるのか……020

第2章 天皇家の懐事情を劇的に変えた明治維新……025
江戸期における天皇は本当に困窮していたのか……026
政治的なキャスティングボートを握っていた天皇……029
明治維新はイギリス主導による「政権交代劇」……035
幕府と薩長勢力の間で翻弄された孝明天皇……041
元老たちによって形成された皇室財産……042
法律が及ばない〝帝国のなかの帝国〟……047
ベールに包まれた皇室の資本蓄積のプロセス……051
「天皇の家族は、日本でもっとも富裕な家族である」……054

第3章 三菱・三井を超える超巨大財閥……059
天皇という〝操り人形〟……060
美濃部達吉「天皇機関説」の波紋……065
権力構造の変化がもたらした政党政治の終焉……071
天皇を中心とする皇室が支配する〝財閥〟……076
戦前の日本は「天皇株式会社」によって支配されていた……080

第4章 天皇によって支配された国策企業……089
世界に冠たる海運会社「日本郵船」は天皇が大株主……090
日清・日露戦争で躍進した日本郵船……095
鉄道の勃興と満鉄……099
鉄道会社の範疇を超えた国策会社……104
「帝国の中に築かれた帝国」=東インド会社……112

第5章 天皇による帝国経営の戦略……121
国策企業が海外で果たした重要な役割……122
近代産業国家の礎――銀行と企業……128
経済膨張と不況、そして関東大震災……131
大日本帝国の勢力拡張と国策企業の密接な関係……134
天皇財閥の経営戦略と「国家総動員法」……137
日銀法の改正は天皇財閥の方針……145
国家総動員法で最も利益を得たのは、誰か……149
銀行の企業に対する圧倒的優位性……155
満州進出の理由は「マネー戦争」だった……158
アメリカによる対日戦争計画――「オレンジ計画」……162
「社会主義者」は「資本主義者」である……165
完成をみた天皇財閥による帝国経営……172

第6章 帝国経営の失敗と天皇の〝経営〟責任……175
開戦か屈服か――追い詰められた日本……176
「ルーズヴェルトが日本との戦争を望んだのだ」……178
日本型リーダーシップと天皇像……182
近代と古代とハイブリッド……184
カトリックの総本山・バチカンを彷彿とさせる「宮内省」……188
天皇財閥における取締役たち……192
「牧野グループ」が推し進めた英米協調戦略……196
刷新された「天皇財閥」の経営陣……200
日本の権力構造の中心だった「宮中」とキングメーカー・木戸幸一……204
〝世界の経営者たち〟によって決定された天皇の処遇……212
〝代表取締役〟の座から降りた昭和天皇……215
米軍の基地駐屯問題に深くコミットした日米の財閥のトップ……223

第7章 差し押さえられた「皇室資産」……227
財閥解体の対象とならなかった超巨大財閥……228
「天皇家の隠し資産」と赤十字国際委員会……234
M資金と天皇家の〝ウラ資産〟……240
異説「M資金」――アメリカ政府発行の債務保証書……245

第8章 「天皇財閥」から「天皇グループ」へ……251
天皇財閥の残影……252
財閥解体がもたらした構造変化……256
最終的な所有者が存在しない――法人資本主義……260
企業と社員――天皇と国民……265
日本そのものが、天皇という「法人」の会社組織……267
戦後日本の基本レールを敷いた〝アメリカに従順な政治家たち〟……270
「天皇財閥系企業」の戦後――……274
戦後の日本における天皇財閥の後継企業たち……278
もうひとつの天皇財閥系企業……283
「日赤」という天皇グループ最大の企業……287
現在の日本の支配階級――「ニュー・エスタブリッシュメント」……290
日本はひとつの「財閥」である……293
ヴァイニング夫人が皇太子の家庭教師を務めたことの意味……297
天皇財閥なきあとの皇室の存在意義……306

[参考文献]……310

(吉田祐二『天皇財閥』(旧著)「はじめに」より転載開始)

 秘密のベールに包まれていた、天皇家の財産が明らかになったのは戦後のことである。

 1945年、第二次大戦が日本の敗戦で終わり、勝者となったアメリカは日本を占領した。実質的にはアメリカ一国であった「連合軍」の総司令官マッカーサーと、その部下たちを中心として日本の占領政策が開始された。

 マッカーサーたちが、占領政策のはじめに目指したのは、日本を非軍事化することであった。武装解除である。軍部を解散させたことはもちろんだが、軍部をバックアップして兵器を製造しつづけた製造企業、およびそれらの企業を支配下におく「財閥」(英語でもザイバツ Zaibatsu として通じる)の解体作業がもっとも重要な使命であった。

 占領軍がその方針を明らかにしたのは、昭和21年9月22日付で公表した「降伏後における米国初期の対日方針」である。そのなかで、三井、三菱、住友、安田などの日本の商工業の大部分を支配した大コンビネーションである財閥の解体が指令されたのである。

 天皇家についても例外ではなかった。明治初期から戦後までの皇室財産の変遷をまとめた黒田久太(ルビ:くろだひさた)の『天皇家の財産』によると、占領軍の通達には「皇室の財産は占領の諸目的達成に必要な措置から免除せられることはない」と定められており、またアメリカが皇室自身を「金銭ギャングの最大のもの(the greatest of the “Money Gang”)と認識していた」という(138ページ)。

 実際に、天皇家の財産は他の財閥を上回るものであった。占領軍から命じられて組織した「持株会社整理委員会」の調査によると、当時の財閥はその資産の7~8割を有価証券のかたちで保有しており、終戦時において財閥が所有した有価証券は、三井3億9000万円、岩崎1億7500万円、住友3億1500万円であったという。

そこから推測するに、三菱や三井といった日本を代表した財閥は、当時おおよそ3億~5億円くらいの資産を持っていたことになる。

 それに対して、皇室財産における有価証券の割合は2割を占めるに過ぎない。にもかかわらず、皇室は3億3000万余にのぼる有価証券を有していた。資産総額は15億円を超えていた。また、財産税納付時の調査では37億円という数字もある(『天皇家の財産』)。

このように、天皇家の財産は他の財閥よりも、文字通り、ケタが違うほどの大きさであることが、戦後の資料によって明らかとなったのである。

(吉田祐二『天皇財閥』「はじめに」より転載終了)

 以上です。よろしくおねがいします。
 
中田安彦拝

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