「166」米(こめ)の値段とは何か
副島隆彦です。今日は2026年1月16日です。
前回「ユーチューバーたちの世界(私が見た限りでの) ②稲作(米づくり)がわかった」から続いて、農業問題についてやります。と言っても、もう関心もない人が多いと思う。それでも、「日本は稲作をやって、お米を食べている」わけで、それが農業問題の中心です。今日は、「米の値段とは何か」ということを話します。
私たちはちょっと田舎に行けば 、稲作地帯の田園風景を見ることができる。ところがね、じゃあ米の値段は?って言った時に、本当にいくらなのかはね。知ってる人ほとんどいない。
一昨年(2024年)から昨年(2025年)にかけて、「令和の米騒動」というのがあった。2024年夏頃からコメが品薄になって、価格が高騰していった。2025年8月には、普通の白米5キログラムが4500円とか5000円になった。数年前なら同じ商品が2000円台だったんですよ。これが国民的騒ぎになって。それで政府が何をやったかというと、政府の備蓄米を放出すると。備蓄米の安いお米が市場に出たんですね。それを一生懸命買いに行った人たちが、私の周りにもいた。その備蓄米は、安いところでは5キロが2千円くらいだった。

スーパーの店頭にお米がなくなった
5キロで2000円、つまり1キロ400円の政府備蓄米を一生懸命買いに行った人たちというのは、一言で言いますと、貧乏な人たちです。備蓄米は古米【こまい、収穫から1年以上経過したお米のこと。一般的に収穫燃の翌年11月1日以降に古米として扱われる】だけど、結構おいしかったんだと思う。古米だけじゃなくて古古米(ここまい、もう一年経過した古米)とか古古古米かもしれない。それでもきちんと冷温保管してあったんですね。それが100万トンぐらい放出されたのかどうか、私はわかりません。
あの騒ぎも、もう終わっちゃったんですよ。何で終わったのかも皆、よく分からないんです。一体何だったんだよと、誰も言わないんです。
■本『コメ・ショック』
おいしいお米を作って送ってくれる知人が、『コメ・ショック』(2025年12月12日刊、経営科学出版)という本を紹介してくれた。著者は鈴木 宣弘(すずき のぶひろ、1958年生まれ、67歳)です。この人は農水省官僚を15年やって、東大教授になっている。今日はもう、この人の批判はしません。この本は、「農協は悪くない。農協が日本の国民の食生活を守っている。お米を守っている」と言っています。どういうことが書いてあるか、本の目次を引用します。

『コメ・ショック』
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(本『コメ・ショック』の目次を転載貼りつけ はじめ)
●令和の米騒動の真相
米5kg 5000円の衝撃―今、スーパーで何が起きているのか
農水省が2年間隠し続けた不都合な真実
統計部予算削減とトレーサビリティ法の形骸化
作況指数101の嘘―精米ベースでは不作だった現実
米は「劣等材」?―貧困化で増える米消費
JA全農26%の真実―買い負けた農協の実態
小泉進次郎の備蓄米放出がもたらした流通秩序の破壊
仮渡金制度への攻撃が意味するもの
震災用備蓄米を使いはたした国の末路
政権交代しても繰り返される失敗
●日本の農業を弱体化させた7つの嘘
繰り返されるウソが日本の農業を殺す
【嘘その一】「日本の農業は保護されすぎている」
【嘘その二】「農協が米価格を釣り上げてきた」
【嘘その三】「大規模化・集約化で競争力強化」
【嘘その四】「減反政策は2018年に廃止された」
【嘘その五】「輸出拡大で供給能力向上」
【嘘その六】「農協を通さなければならない」
【嘘その七】「スマート農業とイノベーションで解決」
●アメリカが仕掛けた日本解体七十年
嘘の向こうに見える真の支配者
GHQが始めた「胃袋からの属国化」戦略
「米を食うとバカになる」―慶応大学教授が書かされた嘘
●農協解体を狙う者たちの正体
戦後七十年の総仕上げー最後の砦を破壊する者たち
JA共済155兆円を狙うアメリカ保険業界
カーギルが狙う全農グレイン
AWB消滅の教訓―株式会社化から買収まで
カナダの悲劇―穀物農協全滅から資源メジャー支配へ
●日本の農業を救う唯一の道
メキシコの警告―トウモロコシ原産国が輸入世界第二位に
輸入米から残留農薬―食料を自給できない日本の食の安全性
あと五年が勝負―全国で聞こえる農家の悲鳴
再生産可能価格と消費者価格のギャップを埋める方法
食料安全保障推進法の三本柱
欧州の成功事例―フランスの農家は年収480万円
アメリカ農家一戸1424万円の衝撃
中国の備蓄 1年半分 VS 日本 1.5か月の現実
農家の公務員化という選択
結論:今こそ行動の時
全国で広がる希望の灯
おわりに
(転載貼りつけ おわり)
副島隆彦です。この本の著者の鈴木宣弘はね、JA共済の法人化をしてはいけない、と言っています。総合農協システムの一部としてのJAバンクと共済事業の黒字が、地域インフラを支えているのだと。それと全農グレイン、これを外資に渡してはいけない。農協の株式会社化は必ず外資による買収に繋がる、ということをカナダを例に説明しています。法人化というのは、株式会社になることですね。あちこち全国の農家が株式会社化して作物を作って、それで農協とも付き合っているんでしょう。この問題を含めて、農協系は法人を嫌うんですね。本から引用します。
(本「コメ・ショック」5pから転載貼りつけ はじめ)
しかし、データは真逆の事実を示している。日本の農家一戸あたりの農業予算は135万円。アメリカの1424万円の10分の1以下である。農協の米集荷率はわずか26%まで低下し、価格を左右する力など残っていない。・・・中略・・・なぜ、これほど明白な嘘がまかり通るのか。
答えは本書の中にある。それは、日本を食料で永続的に支配下に置こうとする勢力の存在である。GHQ占領政策から始まり、プラザ合意、GATTウルグアイ・ラウンド、TPP、そして現在進行中の農協解体計画まで、すべてが一本の線でつながっている。
オーストラリアとカナダでは、すでに農協が株式会社化され、外資に買収され、消滅した。農家は価格交渉力を完全に失い、巨大穀物メジャーの言いなりになっている。今、全く同じマニュアルが日本で実行されようとしている。
全国を回って農家の方々を話をすると、どこでも同じ言葉を聞く。「あと五年が限界です」。これは誇張ではない。
(転載貼りつけ おわり)
■小泉進次郎の正体
副島隆彦です。一言で言うと、小泉進次郎(1981ー 現在44歳)っていうのは、農水管理のトップに20年前から育てられている人物です。「農協を解体せよ」という議論まで実はあってね。小泉進次郎はそのための人材なんですよ。ただあの人の良さか悪さか、「誰とも喧嘩しない」というのがあって、農民を敵に回して闘う気なんてないんですよ。

小泉進次郎
ただ農協をこのまま放っておいたらね、もう日本の国は立ち行かない、日本の農業はやっていけない。というところから農地法改正が起きたのね。
農林水産省 農地制度
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【要点 2025年4月以降は、これまでの主流であった市町村計画(農地利用集積計画)による利用権設定(いわゆる相対契約)が出来なくなります。利用権設定については、地域計画の達成に向けた貸借を進めるため農地中間管理機構(農地バンク)を利用した貸借、または農地法第3条による貸借を行う必要があります。農地の所在する市町村農林部局へお問い合わせください】
副島隆彦です。それから1995年に食管制度は廃止された。食管法(しょっかんほう)と言われたってもうみんな分かんない。前回に少し話したけど、食料管理法といってね。米の生産過程というか値段に関しては、国に独占的に決定権があったんです。それの名残はまだあるんだけど。米の自由化問題で、「米の統制値段をやめろ」というアメリカからの圧力があって、食管法が改正された。廃止されたに等しい。だから米が自由に売れるようになったんですよ。
■(私たちが買う)米の値段っていくら?
じゃあ「米の値段っていくらだ」っていう話を、本格的にしますよ。今、米の値段は5キロで4500円くらいです。もうどこのスーパーに行っても一緒だと、ハッキリ言えます。ということは1キロが900円なんですよ。ちょっと高いと1キロ1000円です。もう、安いお米がなくなった。
2024~25年の「令和の米騒動」の前はね、安い米ってあったんです。今はもうお米の等級なんかないんだけど、5キロ2000円くらいの、備蓄米と同じ値段のお米を、ついこの間まで一番貧しい人たちは食べていた。1キロ400円ですね。それについては、もう言いたくないからみんな黙ってるだけでね。多くの人は5キロで3000円、すなわち1キロ600円ぐらいのお米を買っていた。それが米騒動が起きる前の値段です。
そうすると今はどうか。5キロで4500円から5000円でしょう。1キロだと950円ぐらい、つまり米の値段は2倍近くになったんですよ。みんなもう、我慢して買ってるっていうか、もう本当に1キロ900円くらいのお米をスーパーで買っているんですよ。貧しい人たちには、まだ安い米が手に入るかもしれない。
これはね、もう最初から農水省と自民党とが仕組んだことです。誰もそういうことを言いませんが。「お米の値段を2倍にする」いうことを、計画して本当に実行した。鈴木宣弘の本でも、その当たり前の真実はどこにも書いてません。しかし、どうやって仕組んだのか、2024年頃の日本の米生産の実情が分かる。抜粋して引用します。
(本「コメ・ショック」14pから抜粋して転載貼りつけ はじめ)
2025年8月、日本中のスーパーマーケットで異常事態が起きていた。・・・(中略)・・・この異常事態の背景には、複雑に絡み合った要因がある。まず理解すべきは、日本の米生産量の推移だ。かつて1400万トンあった生産量は、2023年には700万トンを切るまでに推移していた。これは減反政策―正式には生産調整と呼ばれる政策―の結果である。・・・(中略)
さらに、2024年の生産状況も深刻だった。作況指数は101と発表されたが、これは玄米ベースの数値である。猛暑の影響で米の品質は著しく低下し、通常は透明であるべき米粒が、もち米のように白濁する「シラタ」が大量発生した。精米時の歩留まりは通常90%程度だが、この年は80%を切る地域も出ていた。
この需給ギャップに拍車をかけたのが、買い付け競争である。JA全農の集荷率は、かつて95%を誇っていたが、2024年には26%まで低下していた。規制緩和により、農家は誰にでも米を売れるようになったからだ。全農が31万トン集荷量を減らした一方で、民間業者は44万トン増やしていた。
(転載貼りつけ おわり)
■(農家が売る)米の値段っていくら?
副島隆彦です。それじゃあ、米農家はお米をいったいいくらで出荷してるか知っていますか?きっと普通の人は知らないんだ。福島で農家をやっている〇〇君や、福井県の〇〇さんから聞いて、2年前に私は知ったんです。〇〇君が「農協が農家から買い上げる米の値段は、米一俵でたった2万円ですよ。もうやっていけません、先生」と言った。米一俵というのは江戸時代からずっと同じで、玄米で60キロ。それを精米して白米にすると1割減るんです。これが1割よりもっと減ることがあるんだって、『コメ・ショック』を読んで知った。
60キロの米が2万円、ということは1キロ330円。たったそれだけだったんです。農協の農家からの米1キロの買い取りの代金は。「もうやっていけません」という、これが物事の始まりです。
それが今、いくらか知っていますか。誰も知らないんだよ。「令和の米騒動」の大騒ぎをやって2年後の今、農協の買取値段は38000円になったんです。ということは1キロ630円です。330円から630円になったいうことは、ちょうど2倍です。自民党と農政省が、本気で米の値段を2倍にしたんだ。これを誰も言わないのよ。このコメ問題の基本の基本を。バカみたいな真実というね。買取価格を2倍に上げた。静かにやったんですね。
ということは次に考えることはね、「ああそうか、自分たちが1キロ900円で買って食べてる米で、農家は600円を得るんだ」と。ということは差額300円。これが中間マージン手数料というか中間取引業者がいるわけですね。昔の言葉では米問屋(こめどんや)みたいな人たちが、間に2、3種類入るんだと思います。そのあたりの細かいことは私は分からない。でも理屈が合うことは分かったでしょう。ただまあ、1キロ600円だったスーパーのお米が900円になって、「それならそれでいいや」ということで話が落ち着いて、もう終わったんだ。
私は今は、農協批判をやる気はないから。農家を守るために米の値段を上げたと、そういうことです。私もそこは批判しません。だって農家が米を作るのやめたらえらいことだから。だからと言ってね、何も言わないわけじゃないけど、米に関する基本のところを理解するとしたら、まずこの「お金」で理解するしかないですよ。偉そうな難しそうな議論ばっかりしないでね。
■豊葦原の瑞穂の国
日本は「豊葦原の瑞穂の国(とよあしはらのみずほのくに)」というんです。これは中国から来た漢字で、昔からの言葉でね。だから米は日本人にとって特別なものだということぐらいは、みんな分かっているわけで、その議論はあるんです

豊葦原之千秋長五百秋之水穂国
【「古事記」や「日本書紀」に登場する日本の美称で、「葦(あし)豊かに生い茂り、みずみずしい稲穂が実る国」という意味】
1反(いったん、1000㎡、300坪)の田んぼで、米が8俵とれるとして、かける38000円だから24万4千円。25万円だ。これの10倍が一町歩(いっしょうぶ)、つまり1ヘクタールの稲作をやると250万円。3町歩ぐらいからが大規模農家で、3町歩の農家だと750万円が入る。これで「ようやく、やっと」なんだって、年収750万円。ところがこれから、機械代と油代といった経費がかかるわけね。だから農業はね。米の買い取りが一俵38000円になっても、それでも大変なんですよね。だからもうやりたくない、後を継ぐ人もいないという問題が全国で起きていて。
都会の人間はそれを無視する。聞きたくない、無関心なんです。都会の、5000万人の普通の人々はね。なぜなら農業、草むしりを嫌がって、捨てて逃げてきた人たちだから。この真実も言わないことになっています。とにかく夏の暑い日にね、畑や田んぼに出て草取りするのがものすごい嫌、という話は前にしました。

除草剤の散布と畦(あぜ)の草刈り)
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お米を専業で作ってる人は100万人もいない。兼業農家というのがいて、これは平日はサラリーマンをやって、土日だけでお米を作る農家です。それでね、もう悲鳴が聞こえるの。「米作りができない」と。「兼業で農業をやっていて、それでも儲からない。もう放り投げたい」という悲鳴が全国に満ち溢れているんですよ。
ただ都会の人間、親の代とかおじいさんの代あるいはその前の代で完全に農業から離れた人たちは、知らん顔をするんです。自分には関係がないと言ってね。それが農業の本質なんです。本当に、昔はみんな農家だった。国民の6割7割がそうでした。60年前の私の小さい頃でもね、まだ国民の4割ぐらいが農家だったかも。ところが今は専業農家は100万人を切ってる。畜産業も果樹園も入れて、です。だからものすごい数で農業者が減っているってことは、それで足りてるとも言えるわけね。
結局みんな、肉体労働者になりたくないからサラリーマンになった。一昔前には、教育ママの問題がよく話題になったけど、母親が子供に死ぬほど勉強させるというね。バカみたいなことを死ぬほどやったわけよ。これも言っちゃいけないことになってる。お受験ママって言葉もほとんどなくなったけどね、父親まで巻き込んで。だた、今も受験戦争っていうのだけはやってるんですよ。くだらないんだ、これ。
しかし社会は能力競争でできているからね。「人間は平等じゃないんだ」「能力は差別されるためにあるんだ」っていうのは本当はみんな分かってるんです。そして「これも絶対に言っちゃいけないことだ」って。特に教育の現場では、大きなタブーなんですよ。
江戸時代明治時代まで、7反8反ぐらいの貧しい農家ってたくさんあったんです。特に九州や四国には。そこから取れる米とか野菜とか、たかが知れてるって言ったら大変だけど、それでも相当に広いですからね。これを手で、鍬(くわ)で耕して農作物を作っていた。戦前の日本の社会は、とにかく貧しかった。食べるご飯がなくて飢えていたんです。
自民党政治家で野中広務(のなかひろむ 1925-2018 92歳で死)という人がいた。彼は部落と言われた地域の出身でした。野中広務が言っていた。「日本は本当によくなった。どんな人でも満足にご飯が食べられるようになった」と。


野中広務(上:青年期 下:壮年期)
戦前は一日2食でさえきちんと食べられない人が本当にいた。こういうことも、日本人は口にしないことになっているんです。貧乏と隣り合わせ問題になるからね。飢えている人なんていないことになっているから。【だから戦争をしたんですか?】その論理は飛躍が大きすぎるかな。でも日本で食べられない人が中国大陸にいっぱい出ていって、中国人からは「日本人は日本に帰れ」と。「いや、帰るわけにはいかん」とか言って戦争になっていったんです。飢えると、確かに戦争になる。これはもう素朴な理屈でね。もう背に腹は変えられない世界だから。必死になるとね、戦争になります。その問題は今は話しません。
だから7反8反の田んぼや畑ではとても食えないのに、それで生きていたんですよ。だから都会に流れ出したんです。それで東北の農民たちは、冬は農業ができないから都会に出稼ぎに行ったわけね。出稼ぎって言葉は、今の日本でもまだあるんです。高度成長経済では、田舎の労働力が都会で必要だから、いろんなところにある。都会で寝泊まりしながら3ヶ月間とか、お父さんが工事現場や工場労働者として働くんです。その時に100万円ぐらい稼いで帰って。それと、大したことのない農業収入で生きてたんです。それが日本の国の真実なんです。
米の値段の話に戻します。一反の田んぼで米を作って、25万円の収入(諸経費込み)。それが少し前までは12万円だったんです。それでどうやって生きていくのっていう話ですね。だから倍の24万円にしてよかったと。3町歩の田んぼをやれば、750万になる。ここから経費とかトラクター代とか出したら、手取りが400万円を割っていくんだけど、何とか食えるようになる。ということは都会の年収400万円の会社員と一緒じゃないかという話で、ようやく落ち着いた。だから結論、良かった良かったってことです。誰もそんな話は口に出さないけどね。
こういう問題は、「お金の話」で考えないとダメなんですね。
終わり
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