「152」 数学という暗黒大陸 ②

副島隆彦です。数学という暗黒大陸 ②です。

前回① の最後をまとめると

・経済学の古典派(アダム・スミス 1723-90)(リカード 1772-1823)は、「恒等式」である。 今の新古典派も実態は古典派と同じ。
・ケインズ(1883-1946)経済学は、「方程式」である。
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■1890年に経済学に数式が取り入れられた
ここで少し経済の話をします。ケインズの先生がマーシャル(1842-1924)という人で、ケインズより40歳年上です。このマーシャル教授(ケンブリッジ大学)が1890年に、 M=kpY 、すなわち M(貨幣量)=k(係数)p(価格)Y(実質国民所得) という数式をつくった。初めて経済学に数学の数式を取り入れた大数学者だ。

マーシャル

■フィッシャーらシカゴ学派が、マネタリズム
2年後にそれを、フィッシャー(1867―1947)というアメリカの経済学者がボロ真似をして、 Mv=pQ という式をつくった。ここでは詳細の説明はしませんので、前掲の、私の本『経済学という人類を不幸にした学問』を読んでください。

フィッシャーのMv=pQはどういうことかと言うと「お金を中心に考える経済学」で、この数式がつくられた瞬間(1892年)にこの世に誕生した。「貨幣数量説」とも言って、後の「マネタリズム」、即ち「お金一点張り=お金さえ刷れば経済はよくなる」の経済学だ。彼らフィッシャー派を、「シカゴ学派」という。

フィッシャー

■1980年代に、ケインズ主義者がシカゴ学派に負けた
それに対して、ハーヴァード大学に固まっていたのがケインジアン(ケインズ主義者)たちだ。ケインズが「有効需要の原理」というのを発見した。ケインズ経済学の公式は、 Y=C+I 、すなわちY(国民生産・国民所得)=C(消費)+I(投資)。それは要するに、「需要(人々が必要とすること)が人間世界を作っている根源である」ということです。ケインジアンはシカゴ学派と1950、60年代に激しく闘った。そして1980年代にケインジアンが負けた。

そして後の、ニュー・ケインジアンを称するアメリカの多数派(主流派、新古典学派{ネオクラシカル})の経済学者が、なんと、ケインズを裏切って、密かに「貨幣数量説(マネーの量が経済学のすべてだ)」になだれ込んでいった。

■2008年、マネタリストが大失敗、大敗北
そしてこの「貨幣数量説(マネタリスト)」がついに大失敗、大敗北したのが、2008年のリーマン・ショック(爆発)だったのだ。これでマネタリストがインチキ経済学だってばれちゃった。

結局、ケインズだけが欧米経済学の真髄。ケインズの主著『雇用、利子、貨幣の一般理論』(The general Theory of Employment, Interest, and Mony,1936)(初版1936年刊)だけが、経済学にとって偉大な本である。そのように私は、本『経済学という人類を不幸にした学問』に書きました。

ケインズ
アマゾン 『雇用、利子、貨幣の一般理論』

■数学は、代数学と幾何学。それ以降はインチキ
副島隆彦です。数学に戻ります。三角関数のサイン、コサイン、タンジェント。それから円関数というのがある。わかりやすく言うと、図形、図式を幾何学、geometryという。

それに対して代数学は、わかりやすく言うと計算です。代数のことをalgebraといいます。これは算術と訳してもいい。算術、計算です。そろばんでやってもいい。算術はarithmeticというんですが、代数というと、途端に格好よくなるんです。

数学は、この代数学と幾何学(geometry)の二つでできている。

それ以降に、トポロジー(位相幾何学)とか、とんでもない数学の分野がいっぱい生まれてきたけれど、こうしたものは、一言で言ってしまえばインチキです。たくさん分かれていってそれぞれの専門家が偉そうにしたけど、結局はインチキだった。そのインチキの最たるものが集合論です。私はこのあと、それらがどれほどインチキなのかを説明していきます。統計・確率も結局、崩れ果てていったんです。私、副島隆彦がこう言うと、数学者たちは怒るでしょう。怒るというか、どうせ相手にしないけどね。

あとコンピューター数学とかいうのがあって、今のコンピューターサイエンスで、ものすごい計算をやる。これもインチキでとんでもないんだけど、それはそれでご飯食べてる人もいるから、インチキだと言っても、どうにもならない。現実にあって、使われているから。

それで、何で数学がこんなに分裂していったのか。そこにも大きな秘密があって、実はさっき言った方程式と恒等式のところに、すでに矛盾があるんです。もっとはっきり言うと、「A=A」に決まってるんですよ。これを「A=B」と言った途端に、何かとんでもない世界が出現した。だって「私は私」はいいんだけど、「私はあなた」とか言い出したら、もうとんでもないことで、かつ、「私はあなた足す1」とか言い出した日には、一体何が起きたんだよ、ということになる。

実は、数学というのは、そういうことを平気でやる学問なんです。「私はあなた足す1です」とかね。そこからが数学なんです。でも、そういうわけのわからんというか、ばかみたいなことを言うと、嫌がられるからここでやめますが。

■無限の果てに何があるか
もう1冊、足立 恒雄(あだち のりお 1941- 現在83歳)という、早稲田大学の数学者が書いた本『無限の果てに何があるか』(角川ソフィア文庫、2017年刊)がある。彼は早稲田大学の理工学部長までしたから、一応、学者としてはまともなんだけど、変人扱いされている。私よりもたった12歳年上で、まだご存命です。 森毅は、この足立よりもさらに13歳年長。戦争前に生まれた人たちです。

それで、皆さん考えてください。「無限の果てに何があるか」と言われても、「何ですか?一体それは」という話になって、困ってしまうでしょう。「無限です、無限大です、その無限大のその向こう側は何ですか」と言われたら、「何言ってんだ、ばかなことを言うな」となる。または、相手にしない。 足立というのはそういう男で、そこが実は大事なんです。

足立恒雄

アマゾン 無限の果てに何があるか

結論の結論でいうと、今も数学者たちは、「無限」という考え方をものすごく大事にする。私たちが中学校でも教わる √2=1.41421356………とかどこまでも行くのね。だから無限なんです。どこまでいっても解けない。無理数(irrational number)といいます。合理的でない数字というか、割り切れない数字と言ったほうがいいかもしれない。どこまででも行く。

だから、皆さんも習ったでしょう。例の「・・・・」というやつです。「x=1+2+・・・・」と書く、あれです。あれがどれぐらい人類を苦しめたか。一言で言えば、それはうそなんです。そんな数字はない。数学者たちが、「ないのに、ある」ということをやってしまったことで、どれくらい人類をいじめたか。 しかしこれを、「そんなものはない」と言い切った立派な数学者たちもいる。このことも割と知られているんだけど、普通の人は知らないのね。

要するに、小学校中学校で落ちこぼれた、頭の悪い人たちとはっきり言いますが、彼らは、「2分の1足す3分の1」という分数の計算ができないんです。横に数字をとって、「5分の2」と書いちゃう。本当ですよ。通分ができないから、6分の3と6分の2で6分の5という数字が出ない。これではもう小学校時代に落ちこぼれますからね。この人たちの話はしません。

あとは、リンゴ三つとミカン四つを足したら何個ですかと言ったら、ふつうは、小学校で落ちこぼれたくなければ、「七つ」と言うんです。でも、答えられない人たちがいる。それは個数が七つであって、リンゴは三つ、ミカンが四つと決まってるから「足せません」という答えもあるんだ、と。足してどうするんですか、と。それをさらに3人で分けるとか言ったって、分けられるわけないじゃないか、と。 まあ生活の中では、「適当にやれ」しか答えはないし、適当にやるのが世の中の真実だから、数学は要らないんですよ。でも、その話はあんまりだから、もうしません。

そうすると、この足立恒雄は恐ろしいことを言ってしまったんですよ。そして、この本の帯には「ゲーデルの不完全性定理が必ずわかります」と書いてある。でも、普通の人はこれを読んでもわからないです。これをわかるのは大変なことなんです。

■ビッグバン理論の嘘
私がこの本『無限の果てに何があるか』を読んだのは、アインシュタインの相対性理論のうそとか、ビッグバン理論のうそというのを書いた コンノ ケンイチ(今野 健一 1936-2014 78歳で死)さんという人がきっかけです。コンノさんは熱海の私の家まで会いに来てくれて、対談して、彼の本の推薦文のような、対談あと書き文も書きました。もうだいぶ前にお亡くなりになりましたが。コンノさんは「ビッグバン理論はインチキだ、うそなんだ、そんなもの、わかるわけがないんだ」とずっと書き続けた人です。

コンノケンイチと副島隆彦

ビッグバン理論というのは、36億年前に直径30センチぐらいのかたい石が爆発を始めて、今も爆発の途中で、巨大な爆発の途中だというものです。数学的に証明されていると言われて、今の宇宙物理学はこのビッグバン理論でできている。

物理学の一種が宇宙物理学。これはastrophysicsといいます。astroが宇宙です。astronomerは天文学者、astronautというのは宇宙飛行士、astronomyが天文学、astrophysicsが宇宙物理学。宇宙を対象にした物理学です。 でも宇宙物理学ってインチキなんですよ。実はもう、わからないんです。火星に探査衛星を飛ばしたなんて言うけども。―この話も今はしません。

■ゲーデルの不完全性定理
数学に戻ります。実は、1931年に、クルト・ゲーデル(1906-1978 オーストリア・ハンガリー帝国出身の数学者・論理学者・哲学者)が、「不完全性定理(数学の形式体系において、すべての真実を証明できる完全な体系は存在しない」を発表したんです。これは、20世紀の数学基礎論、論理学にとって最も重要な発見とされる。要するに、「数学は数学自身をみずから解くことはできない)」と言い切ってしまったんです。とんでもないことを証明してしまった。数学は数学自身を証明できないということが、数学の公理系の中から出てきてしまった。

ゲーデル

それだから、今の数学者たちはゲーデルに近寄らない。怖くて、危なくて、嫌なんです。「(ゲーデルの不完全性定理は)それはそれで」と言って無視して、脇にどかして、「私たちは同じ数学でもやっていることが違います」と言って逃げる。

しかし副島隆彦は、「お前たち逃がさないぞ、もとの原理のところへ戻ってみろ」と言う。お前たちがやっている数学は本当に数学なのかと。向こうの反論は、「役に立てばいい」という言葉です。usefulであればいいと。それを応用数学(applied mathematics)、生産技術(applied science)という。だから、原理のところを突き詰めた数学以外はみんな applied science。人類の、人間の、人々の役に立てばいい。technologyともいいます。これを科学技術と日本語で訳すけどね。

テクノロジー(technology)はサイエンス(science)ではないから、数学と物理学からばかにされている。ばかにされながら、「工学部」と日本語では名乗っている。日本の理科系は世界基準で数学ができるから、少なくとも技術(テクノロジー)やアプライド・サイエンス(生産技術)の面では世界レベルに達している。それはたいしたもんなんです。アメリカでは MITでマサチューセッツ工科大学。あるいはカリフォルニアにある Caltechという、カリフォルニア工科大学です。これら工学部を卒業してたら企業に入って研究員になって、役に立つ工業製品をつくる。化学系だったら、実用的にラーメンなどの食べ物とか。

あとは薬学部というのもあるけど、これは女の子がご飯食べられる(生活できる)ようにと。要するに袋包み屋さんでしょう。赤青白の薬を包んでいるだけです。これを言うと怒られますが。あと医学部はまた別です。

(数学という暗黒大陸②おわり、③につづく)

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