ゼレンスキー(ウクライナ)には、国際政治の当事者ではない。それは日本も同じ。勘違いせずに、その制約下で何ができるかだ。

伊藤 投稿日:2025/08/08 13:28

伊藤睦月です。まずは、「覇権アメ」から引用。

(引用はじめ)

国際政治における「リアリズム」Rialismというのは、簡単に言えば、「ある国の国内問題のゴタゴタの内容がどのようなものであれ、そのことと国際政治とは無関係だ。それらの国内問題とは無関係に、その国の国家的運命は、周りの国々、とりわけ強大な国との関係によって、決定される」という理論である。要するに「小国や普通の国の運命は、アメリカやソビエト(現ロシア)という覇権国どうしの覇権抗争の中で決定されてゆくのだ」という冷酷な理論である。(覇権アメ第2章、講談社アルファ文庫版114p)

(引用終わり)

伊藤睦月です。真正の副島ファンなら、この引用だけで必要充分だろう。余計なおせっかいだが、少し補足する。

1)ウクライナ紛争に関して、米ロ(トランプ=プーチン間)で停戦協議が行われており、ゼレンスキー(ウクライナ)が不服を述べているが、これは、リアリズムの政治世界においては「仕方がないじゃん」ということになる。

2)ゼレンスキーは、「EUも当事者だ」と主張しているが、EU自体がそうではないことは十分にわかっている。それは英国も同じ。

3)ブレジンスキーが「グランドチェスボード」で、プレイヤーとした「ユーラシア覇権の当事者」(ロシア、中国、英国、仏国、いわゆる国連安保理常任理事国)のち、実質当事者は中国。ロシアも実は過去の栄光に敬意を表されているだけでは。)

4)だから、EU、英国は、一応トランプとは話をするが、ゼレンスキーとは、愚痴を聞いてやるだけ。それどころか、関税協議を通じて、米国式の軍備体系をある程度受け入れざるを得なくなって、一層属国化が進んだ、とも思える。

3)だからゼレンスキーとしては、18世紀の「ポーランド分割」の轍を踏まないよう、19世紀の「ベルリン会議」における、英仏のようにうまく立ち回れればよいが、当時からのロシアにとって、「悲願であった」クリミア半島は、あきらめる、あきらめさせられる、そこらへんで、手を打つべきだ。ゼレンスキーは失脚するかもしれないが。そこが彼の試金石。

4)リアリズムは、それと対立する「理想主義」(カント「永遠平和のために」)と違って、一見根本的な解決にはならないが、これ以上の流血を止めるという、必要最小限度の効用はある。トランプはそれしか考えていないだろう。

 ガザの事例も同じ。というか、ハマスはそもそも国家ですらないのだから、パレスチナの「意思」は入らない。(だからEUがパレスチナを国家承認をしてネタニヤフとトランプにちょっかいを出している。彼らは、状況によってすぐに撤回するのではないか)

(ここで、さらに引用する。)

 つまり、国家というのは、それぞれひとつずつが、ビリヤードの玉のようなものであって、他の玉がぶつかってくるととピーンと弾き飛ばされて別の玉にぶつかってゆく。その国の国内の事情がどのようなものであろうとも、それらの内部関係とは無関係に外部的な理由だけで決定されるのである、とする理論である。日本が戦後半世紀にわたって西側世界(自由陣営)に組み込まれ、アメリカの核の傘に守られてきたという冷厳な事実もこのリアリズム(現実主義)からのみ説明がつくのである。

(引用終わり:覇権アメ114P)

伊藤睦月です。現実主義は、「外圧主義」、だから、「内圧の状況、石破おろしのようなものは、関係ないのでは」だから石破も粘り腰になれる。本日のドタバタ(8月8日の両院議員総会)がどうなるのだろう。

また、今般の関税交渉も、この文脈で読み取れるのか。なにか違うような気がするが。

ま、現役引退した年寄りの独り言だけど。次は、「覇権アメ」の第4章を読んでみよう。

以上、伊藤睦月筆