「2202」 アメリカの超一流法律事務所たちがトランプの報復に降伏した(第2回・全3回) 2025年6月11日
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副島隆彦です。今日は2025年6月11日です。
アメリカの巨大法律事務所についての2回目です。
謝罪金、Concealment Feeというんだけど、法律上の慰謝料のことだ。慰謝料にはもう一つ、Compensationいうのもあるんだけど、離婚裁判のときに大体、夫が妻に払うのは Reconciliation Feeで、Concealment Feeはそれと似ている。これを、ポール・ワイス(会長はブラッド・カープ)がトランプ側の弁護団に払った。トランプ弁護団だって法律事務所で、トランプ側の弁護士たちもいるということだ。その名前は記事の中に書いていない。
アメリカの巨大法律事務所
もっと言うと、スキャデン・アープス・スレート・マー・アンド・フロムというところも、このあと3月28日にトランプに屈服した。記事を丁寧に読んだら分かる。これと『日経新聞』の表にあるパーキンス・クイというのは一体化している。ニューヨークでスキャデン・アープスといえば、私も知っていた有名な法律事務所で、弁護士が500人ぐらいいる。パーキンス・クイはワシントンにあって、30人ぐらいの弁護士しかいないんだけど、ここは今もトランプと闘っている。パーキンス・クイは、2016年にトランプが当選したときに、対立候補だったヒラリー・クリントン(Hillary Clinton、1947年-、77歳)の代理をしていた法律事務所だ。もうとにかくトランプの足を引っ張りまくって嫌がらせの裁判とかをしたところで、トランプからしたら憎しみの敵そのものだ。ワシントンのこれと、ニューヨークのスキャデン・アープスが一体化していて、スキャデン・アープスが降伏した。
2016年の討論会でのトランプ大統領とヒラリー
だから、3月20日にポール・ワイスのブラッド・カープが屈服したときに、全体が崩れたんだ。それでトランプが勝利宣言を出した。ところが記事には勝利宣言とは書いてなくて、「トランプは法律事務所に対する大統領令を取り消した」と書いてある。何を言うか。相手がトランプ大統領令を認めて謝罪した。「自分たち法律事務所は間違ったことをやった」と相手が認めた。だからトランプが、「法律事務所たちのセキュリティ・クリアランスを取り上げたことをもう一回戻して、大企業たちと政府の契約の代理人の仕事もしていい」ということになった。 トランプ側からのこれら激しい嫌がらせを受けている標的となった法律事務所どころか、まだ標的になっていない弁護士たちもトランプ政権の動きを死ぬほど怖がっていると、記事の中に何カ所も書いている。「自分たちもトランプ政権の標的になることを恐れている、死ぬほど怖い」と。
それでも、この『FT』の記事では、標的になった法律事務所たちは団結して闘うべきだったんだと書いてある。ポール・ワイスのブラッド・カープ(Brad S. Karp、1960年-、65歳)は、標的になった法律事務所全体の代表、親分だ。民主党を代表するリベラル派で、人権訴訟みたいなことをいっぱいやってきて、人殺しまでしたと言われている恐ろしい法律事務所だ。それぐらいの大きな力を持っている。
ブラッド・カープ
『FT』の記事にあるとおり、「ロシア政府が、2016年の大統領選挙でトランプを勝たせるためにいっぱい介入した」と、ロバート・モラー(Robert Mueller、1944年-、80歳)特別検察官というのに当時わーわー言わせたのは、スキャデン・アーブスだ。そんな「ロシアの介入」など何もなかったけど、いろんな人間たちを使って言わせてトランプ陣営をいじめまくった。これをやったのがスキャデン・アープス。モラーはもう首になったけども、『FT』ではやっぱりこのモラーが、「トランプから解雇された連邦政府の監察官」ですから、威張っている。トランプに解雇された監察官たちの中でその代理人を務めているのは、表にも名前があるウィルマーヘイルだ。標的になった理由はロシア疑惑と書いてある。
ロバート・モラー
おもしろいのは、トランプが3月24日にホワイトハウスでの記者会見で、「他にも私と和解、Reconciliation、を望んでいる法律事務所がある」と言ったことだ。要するに悪かったと、自分たちが行った裁判やトランプに関する調査、法律上の調査、犯罪者であるという調査をしてきたことは間違っていた、と言って和解を望んでいると。調査とはっきり書いてあることは重要だ。そして「最大手の法律事務所たちは皆、自分が過ちを犯したことに気づいて、私(トランプ)の主張に戻ってきた」。さらには「彼ら大 法律事務所は自らを律しなければいけない」と。律するというのは、自分で自分を処罰し、反省しなければならないということだ。そのようにトランプが記者会見ではっきり言っている。
それでも、さっき言った2つの事務所以外は、まだ形の上では意地を張ってワシントンの連邦地方裁判所に訴えている。そのうちの1件が、3月12日にトランプがセキュリティ・クリアランス、政府が国家機密情報にアクセスできる資格を取り上げたことと大手企業との契約を解除させられたことを連邦地方裁判所に訴えて、闘うぞという人たち。 トランプに屈服するのと闘うのと、恐らく今は半々ぐらいなんだと思う。ところがすでに2つが崩れたから、他のもどうせ根性なしだから、へこへこして屈服する。それはもう目に見えている。だからもう全体が総崩れだ。
文科系で一番頭がいいと思い込んでいる、日本でもそうだけど、司法試験に受かって弁護士をやって大金持ちになってエリートを気取っている奴らが、しゅんとなって土下座して謝って泣き崩れている訳だ。それが現実で真実だ。誰もそういうことを言わないから、私が今、わざと分かりやすく解説をしているが、その証拠となるのが前回載せた3つの新聞記事だ。後で本気で読まなきゃいけない。
この『FT』の記事で、ポール・ワイスがトランプと和解したとある。いや、屈服、つまり降伏したと書いている。この件がトランプを増長させ、他の法律事務所まで攻撃し、究極的にはアメリカの司法制度全体を脅かすとの不安が高まっていると。降伏したブラッド・カープの判断は業界からも批判を浴びていて、ポール・ワイスの元社員(と書いてあるんだけど、社員である弁護士たちだ)が100人以上が集まって、カープ会長に抗議する書簡に署名した、と。そう書いてある。
この署名をしたのは若手のリベラル派の弁護士たちだろう。しかし抗議はいいけど、彼らもやがて首になって冷飯食いになる訳だ。もうワシントンにはいられなくなるだろう。他の法律事務所は雇わない。みんな逃げ腰になって、トランプに抗議した彼らを雇わない。だから地方に行って田舎弁護士になるしかない。こういう自分の人生の浮き沈みがかかっている。トランプが大統領選挙で大勝ちした以上、大きな流れに逆らうことはできない。トランプに抗議したこいつらは「人権派」で、自分たちは正義だと思いこんでいる。小学校時代にいろんな人権教育を受けてきて、頭のてっぺんから、「人間は皆平等だ」とか、「人権を守らなきゃいかん」とたたき込まれた人たち。だから、自分たちが本当は陰に隠れた超財界人の手先、家来になっているという自覚がない。だからもう、一言で言うと、狂っている。
そこまで狂ってはいないけど、似たようなのが日本にもいる。自分を正義だと思い込んでいた奴らが、実は正義じゃないんだという事態が起きている。副島隆彦はそこをよく見ている。 もうきれいごとを言うな。さっき見せた凶悪な犯罪者たちの問題とかに関して「人権」を言って、一人一人裁判をきちんとやれとか言ったら、7万人分の裁判をどうやってやるんだ。200万、300万人を捕まえて、基本的には本国に帰すと言っているけど、帰る本国がなかったりする。それでも、簡単に死刑にはできないから、そういう連中はどこかの刑務所にずっと入れておくしかない。何十人も殺したとか、ひどいことをした証拠が挙がっていれば死刑だろうけど、いちいち死刑にする暇もない。裁判制度が、壊れているといえば壊れている。
先日のニュース報道だ。凶悪犯罪者を捕まえて、アメリカで裁判にかけていたら、女の裁判官が、その悪いことをいっぱいして捕まっていた犯罪者を裏口から逃がした。そこには検察とか司法省の職員もいた。それで、この女の裁判官は捕まって、関わった他の職員も逮捕されたという、こういう事件があった。人権派の人たちの中では、この女裁判官は英雄ということになるわけだ。何かもう、ここまで現実が来ている。日本人はもうそこのところは見ない、見えない、考える能力がない。
だから、100年前のフランスのジャン=ジャック・ルソー(Jean-Jacques Rousseau、1712-1778年、66歳で死)たちが始めた人権思想というものが、今はもうひっくり返りつつあるんだと、私、副島隆彦には分かる。アメリカの憲法、独立宣言というものは、ジョン・ロック(John Locke、1632-1704年、72歳で死)の思想を引き写し、丸写しでできている。アメリカ第3代大統領になったトマス・ジェファーソン(Thomas Jefferson、1743-1826年、83歳で死)が若いときに書いたのがアメリカ独立宣言で、そこに要するに自分たちはイギリス国から独立するんだ、アメリカ人として自分たちの生活を守るんだと言って、ジョン・ロックの人権思想を、じゃなくて本当は自然権(Natural Rights)というんだけど、Natural Rightsの思想を振りかざしてアメリカは独立した。その自然権、Natural Rightsから Human Rightsが生まれた。その流れ、近代ヨーロッパをつくった500年間の思想が今、崩れつつある。そのことを鋭く冷酷に見て、解説しているのが副島隆彦なのだ。
ジャン=ジャック・ルソー
ジョン・ロック
トマス・ジェファーソン
きれいごとを言えるなら言ってみろ。一つ目が人権、Human Rights。二つ目は人間は平等と、今は Equityというんだけど、Equalityでもいいけど Equity。三つ目が人種差別しない。 これも、「もう人種差別する」という、ぎりぎり一歩手前までトランプ政権は来ている。はっきり言うと、ヨーロッパとアメリカでは、「白人だけに人権と平等の取り扱いがあるのであって、南米人の恐ろしいやつらはもう入ってくるな、帰れ、アメリカに入ってくるな」となっている。合法的に入ってくる人たちだけ、技術職とか真面目に働く人たちだけは認めるという制度だ。
トランプ勢力の諸原理
アメリカ現代政治思想各派の見取り図(『世界覇権国アメリカを動かす政治家と知識人たち』から)
ヨーロッパ政治史象の全体構図(『世界覇権国アメリカを動かす政治家と知識人たち』から)
既に3000万人いる黒人たちはいい。今から数も減っていくから。どうせ働かないのが死ぬほど、山ほどいて、女たちも15~16歳で子供をぼこぼこつくっちゃうのがいるんだけど、それでも黒人の力はだんだん落ちている。それよりは中南米から来るヒスパニックたち、これが大変だ。イギリスだったらカリブ海から来る黒人たちが、ロンドンなんか小学校のクラスの3分の1とかいる。いいかげんにしてくれとイギリス人も思っていて、ナイジェル・ファラージ(Nigel Farage、1964年-、61歳)という、おかまさんと言ってはなんだけど、下級貴族というほどじゃないけど、貴族出の男がつくった反移民の政党が今ものすごく受けている。国民も「もうこっちを支持する」となっている。
アメリカの人種別の構成(2019年)
ナイジェル・ファラージ
ポーランドでもルーマニアでもヨーロッパ諸国はどこでもそうだ。ドイツでも「ドイツのための選択肢(AfD)」という政党が、移民をこれ以上入れるな、追い出せと訴えている。フランスもそうだ。フランスの次の大統領になると言われながら大統領選挙に出さないと決められてしまったマリーヌ・ル・ペン(Marine Le Pen、1968年-、56歳)女史。やっぱり選挙に出るとは思いますが、このマリーヌ・ル.ペンが反移民だ。これ以上は移民をもう入れない、自分たちは白人の国なんだ、イスラム教徒をこれ以上入れるな、アフリカの移民たちも入れないでくれという声が国民の6割、7割までなっている。
マリーヌ・ル・ペン
日本はまだ穏やかな国で、20万人とか30万人の外国人を入れている。今は、ネパール人やベトナム人だ。クルド人も入っている。トルコ人の形で入っている。クルド人とトルコ人の関係については、エルドアン大統領が大和解をすると言い出した。西側の山岳地帯にいるクルド人の連中の自治を認めると言い出している。日本でもついこの間まで、西川口や蕨(わらび)で殴り合いをやっていたけど、今はもう和解の動きになっている。そういう意味で恐ろしい人たちは、生き延びるために気合いが入っていますから。 彼らが日本に来て、政府は保護したりいろんなことをやったりしているが、そういう問題があって、どうせ日本人は穏やかに締め出すと思う。いい職がなくてお金にならなければ、彼らは日本に来ない。日本の景気が悪いということは、そういう貧しいアジア労働者たちが日本に入ってこない理由になる。彼らは「日本にいても職がない、いい思いができない」と言って帰っていく。それも日本の現実だ。私はそれでいいと思う。
それで、大法律事務所の名前がこうやってわかったのは、私にとっては非常にありがたいことです。この表にないんだけど、『日経』のこの表以外で、全体で一番大きな法律事務所は、クラヴァス・スウェイン・アンド・ムーアという。ここはロンドンとニューヨーク、全部で500人の弁護士がいて、これが一番大きい。
表にある、最初にトランプの標的になったコビントン・バーリングは1000人いるそうだ。弁護士事務所の権威として稼いでいる。さっきのポール・ワイスの売り上げが、26億ドル、つまり年間3000億円ぐらいと記事にある。スキャデン・アープスとパーキンス・クイは、そこより稼いでいるそうだ。
表以外で大きな法律事務所の話に戻すと、2番目がワクテル・リプトン・ローゼン・アンド・カッツ。3番目がさっきのスキャデン・アープス。4番目がレイサム・アンド・ワトキンス。5番目がサリヴァン・アンド・クロムウェルだ。
彼らトランプから狙い打ちにされてないところは非政治的だったということだ。つまり、トランプを痛めつける裁判をやらなかったところで、基本的には保守派、共和党系だと思う。しかし、政治的な動きはあまりしなかったんだと思う。
そして、この中に個別にトランプを応援している弁護士たちがいるんだと思う。トランプ弁護団に入っている人たちは、1番目のクラヴァス・スウェインとか2番目のワクテル・リプトンにいるんだと思う。弁護士事務所全体としては政治的な動きはしない。賢いといえば賢い。6番目がビル・ゲイツのお父さんのいた K&Lゲイツという。Kはカークランドか、カークランド&エリスというのかな、これが6番目だ。
今回、アメリカの大手の法律事務所が丸裸にされて、私自身が大変喜んでいる。これまでは、ここまではっきりと記事などに書かれたことがない。表の中にあるジェンナー・アンド・ブロックとかは、『日経』の3月29日の記事にあるとおり、3月28日に訴訟を起こした。トランプは、大統領令でジェンナー社を標的にした理由として、「アメリカ政府にとって不都合な案件に関わったことや大統領に批判的な人と過去にあった関係、今も関係がある」、それを理由に挙げた。このトランプの動きが憲法違反であるという裁判をジェンナー社が起こして、今も闘っている。闘っているけれども、実際は腰砕けになるだろう。
(つづく)
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