日本古代史備忘録(2):邪馬台国論争最前線(どうやら大和説が否定される日は近い?)
伊藤睦月です。本日は2024年11月9日16:22、です。
かつて、副島隆彦先生は、その著書『副島隆彦の歴史再発掘』(2019)のなかで、「後に載せる別の新聞記事にもあるように、「政府の文化審議会」で「もう纏向遺跡と箸墓古墳で邪馬台国は決まり」「畿内説の勝利」となりつつある。がそうは問屋が卸さない。簡単にはさせない。
と述べられていた。
そして、ついに、2020年以降、「奈良県立橿原(かしはら)考古学研究所」(纏向遺跡や箸墓古墳など奈良の史跡を調査研究している研究機関。邪馬台国畿内説の中心とみなされても不思議ではない)出身の研究者たちから、畿内説(彼らは「大和説」とよんでいる)を考古学的見地から完全否定する著作が世に出てきた。学会内の大事件といっても大げさではない、と思う。なぜか騒がれないけれども。それは、以下の2人
(1)坂靖(ばん やすし:奈良県立橿原考古学研究所企画学芸部長)『ヤマト王権の考古学』
新泉社2020年)
(2)関川尚功(せきかわ ひさよし:同研究所元所員)『考古学から見た邪馬台国大和説 畿内で
はありえぬ邪馬台国』(梓書院2020年)
である。内容を紹介しだすときりがないので、ここでは(2)帯広告文の一部のみ紹介する。
(引用開始)
本書の著者は、長年、纏向遺跡をはじめ、おおくの大和地域の発掘・調査に携わってきた。そんな著者が出した結論は、「邪馬台国の存在を大和地域に認めることはできない」(以下略)
(引用終わり)
伊藤睦月です。関川氏は、纏向遺跡の公式調査報告書『纏向』の執筆者として、学会では有名な人らしい。二人とも、2020年に相次いで本を出しているが、2020年という年はなにかしら意味があるのかしら。
これに対する、学会やメディアの反応はよくわからないが、著名な文献史学者、安本美典(やすもと びてん)氏は、自身の最新著『データサイエンスが解く邪馬台国』(朝日新書2021年)の冒頭に2著を紹介したうえで、自論「邪馬台国北部九州説」を展開している。また、歴史研究家の関裕二氏(聖徳太子=蘇我入鹿説を副島先生が採用している)も、最新著『古代史の正体』(PHP新書2021年)に関川氏の知見をベースに(名前は出していない:伊藤の記憶)、独自の古代史ファンタジーを展開している。なので、なんらかの反響はあったようだ。伊藤の感想だが、もう学問的には決着ついた、といっても良いのでは、と思う。(ネイチャーなど海外の学術誌に載せてもらえば、良いのに、と思う。)
しかし、副島先生が警戒しているような、政治的圧力は何かしらあるらしく、安本氏も同著の中で、遠回しな言い方だが、2000年の「旧石器遺物捏造事件」を引き合いに出して、政府審議会やマスコミの動きを牽制している。
伊藤睦月です。私は、安本本と関川本は入手しているが、坂本、関本はアマゾンで注文中です。もともと下條本の検証のために、アマゾンを検索していて偶然たどり着きました。詳細は、今後読み込んでいきますが、なんか楽しくなりそう。また、道教関連もかなり集まってきましたので、これも楽しみです。こういうご縁を作ってくれた下條さんに感謝、です。
以上、伊藤睦月筆