[1636]ジョン・ル・カレについて
私の大好きな作家、ジョン・ル・カレについて勝手ながら書きます。唐突に、すみ
ません。
ル・カレと言えば、イギリスのスパイ小説の巨匠として有名です。ただ実際は、ミ
ステリーの枠に入りきらない巨大な作家です。
彼の大きな特徴として、「長い」「複雑でわかりにくい、読みにくい」というのが
厳然とあって、一筋縄でいかない作家でもあります
(本人自体、スパイに近いような仕事をしていたため、あれほど克明な小説を書け
たようです。現在83歳でますます揚々と書いてます)
ここ数年は、反米(反CIA)・反グローバル企業の立場を明確に示してきており、そ
のせいか最近はあまり宣伝もされないように感じていましたので、あえて今日書く
次第です。
以下が、主な代表作です。
・「ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ」「スクールボーイ閣下」「スマ
イリーと仲間たち」
世の中で、スマイリー三部作(スマイリーとは主人公の名前)として一番有名な
ものです。未だに一部のミステリーファンからは、これを上回るものは書けてい
ないと呼ばれているものです。(頭が古い)
内容は、イギリスの諜報部員とソ連の諜報部員との戦いです。かなり読みにくい
です。
数年前、「ティンカー~」の映画<邦題名 裏切りのサーカス>を見ましたが、こ
んなにわかりやすい筋だったのかと感心した次第です。ちなみにこの映画は傑作
です。
私個人としては、「スマイリーと仲間たち」が一番好きです。
・「リトル・ドラマー・ガール」
私の大好きな作品です。イスラエルにさらわれてスパイとして調教されたイギリ
スの2流女優と、パレスチナゲリラの若手ボスとの壮絶な戦いを描いたものです。
読むとわかりますが、一見イスラエル側にたった小説ですが、読後感はパレスチ
ナ側により強い共感を覚えるすばらしい作品です。
・「パーフェクト・スパイ」
ル・カレが全精力を注ぎこんだ大傑作です。人はなぜ2重スパイになるのかとい
うのを、克明に書いています。ただしこれは、全作品の中でも一番読みにくい小
説なので、初心者はこれから読むのはやめた方がいいです。
私の一番好きなシーンは、失踪した主人公の妻が、かつての上司(愛人)に延々
と訊問されるシーンです。じわじわっとした迫真感に圧倒されます。
・「ナイロビの蜂」
巨大グローバル製薬会社のアフリカでの悪事<結核菌をばらまいている>を描い
ています。おそらくル・カレは、HIVの代わりに結核菌を書いたのでしょう。現に
巻末の著者レビューでは、「現実はこの小説よりはるかにひどい」と言ってます。
小説として非常に面白く、大好きな作品です。ル・カレを最初に読むには、これが
一番いいかもしれません。
・「サラマンダーは炎のなかに」
アメリカの大悪事を描いています。ただ、正直なところ寓意が強すぎて、小説とし
てはあまり成功していないような気がしています。私が、ル・カレの意図を読み
とれなかっただけかもしれませんが。
・「誰よりも狙われた男」
ル・カレが77歳の時に書いた傑作です。つい最近読み終えたばかりですが、久しぶ
りに絶好調の作品に出会えてうれしくて、重掲にこの一文を書いてしまいました。
結局は一番悪い奴(CIA)が勝ってしまう小説ですが。
上記の他にも、「寒い国から帰ってきたスパイ」「ミッション・ソング」等の傑作が
あります。
尚、私がル・カレが好きなのは、決してその主義主張に影響されている訳ではなくて、
すごい骨太の小説をずっと書き続けているからになります。
もしまだ読んでいない方は是非。
雑文、失礼いたしました。