[1353]スペインでの列車事故が明らかにした福知山線脱線事故の真実

ジョー(下條) 投稿日:2013/08/14 17:29

下に貼り付けた画像は、7月24日に起きたスペインでの列車事故の録画映像です。

新聞記事を下に引用します。

<引用開始>
スペイン脱線事故、制限速度2倍の190キロで走行
(日経新聞2013/7/26)

 【サンティアゴ・デ・コンポステラ=共同】スペイン北西部ガリシア州のサンティアゴ・デ・コンポステラで24日午後8時40分(日本時間25日午前3時40分)ごろ、マドリード発フェロル行きの高速鉄道が脱線し、多くの車両が横転して大破し、一部で火災も発生した。スペインメディアによると、80人が死亡、約130人が負傷した。

 同国捜査当局は、事故は運転士による速度違反が原因との見方を強めているもようで、ロイター通信によると、25日、運転士の取り調べを始めた。同国メディアは捜査関係者の話として、運転士の1人が、制限速度である時速80キロの2倍以上の約190キロで走行していたことを認めたと伝えた。

 スペイン国鉄は「事故車両は当日の朝に点検を受けたばかりで異常はなかった」として、技術的な問題の可能性を否定。捜査当局は、列車の運行状況などを記録したブラックボックスを既に回収し、事故原因の解析を急いでいる。

 マドリードの日本大使館には邦人が被害に遭ったとの情報は入っていない。

 列車は客車8両と動力車2両の編成で約220人が乗っていた。全ての車両が脱線、列車は途中の連結が外れ前後2つに分かれた。パイス紙は、列車が壁面に激突、横転する様子を写した監視カメラの映像をウェブサイトで公開した。

 事故はサンティアゴ・デ・コンポステラの駅の約4キロ手前の急な左カーブで発生した。列車は「アルビア」と呼ばれる高速鉄道で最高速度は250キロ。事故時には、スペイン最高速の新幹線AVEと同じ軌道を走っていた。旧市街が世界遺産に登録されたサンティアゴ・デ・コンポステラは聖ヤコブが埋葬され、エルサレム、バチカンと並ぶキリスト教の巡礼地として知られる。25日は「聖ヤコブの日」と呼ばれる祝日で多くの観光客が訪れるとみられていた。

<引用終了>

制限速度80キロのところを「190キロ」で走行していたのが上のyoutube画像です。

さて、この画像をみて私が気がついたのは、列車が転倒する前に脱線していることです。つまり、遠心力に耐えられなくて2両目の列車がレール外側にはみだし、そこからそのまま壁に激突しながら転倒しています。テレビの解説では、2両目が、ディーゼル電池をつむ車両に変更されていて、重心が高くなって脱線したのだろうという、事故原因を語っていました。

さて、これを見て、2005年に神戸で起きた福知山線の「列車転倒事故」を思い出された方も多いと思います。福知山線の事故は、2005年4月25日にJR西日本福知山線、塚口~尼崎駅間で発生した列車事故です。前部2両が転倒して、マンションに衝突、107名の方が亡くなりました。この事故は制限速度80キロのところを「120キロ」で走行しておきたことがわかっています。

スペインの事故と福知山線の事故は車両構造がちがいます。しかし、それを考慮しても、比較して2つの点で不思議なところがあります。まず、2つの事故は制限速度が同じ場所でおきています。それなのに、福知山線の事故では、わずか40キロオーバーで転倒、スペインの事故では100キロ以上オーバーしても転倒せず、勢い余って脱線してからの転倒です。

次に、スペインの列車事故の解説では重心の高い車両にも問題があったように述べているのに対して、福知山線の事故原因には、車両が原因とする指摘はほとんど出ず、すべて運転手のスピード超過とされている点です。福知山線の事故の方がはるかに速度が低かった(120キロ)にもかかわらずです。

私は、実は、福知山線の事故のあとに、他の脱線事故をいろいろ調べました。その結果わかったことは、「電車や列車は転倒しない」ということです。基本的に下部の方にモーターや台車など重い部品が偏って存在するので、重心が低く、倒れません。調べてみても、先頭機関車が倒れた、あるいは突風にあおられて倒れたというケースはありましたが、カーブの速度超過で倒れた「電車」は見つけることができませんでした。

世界中の鉄道事故を調べるのは困難ですが、たぶん、福知山線脱線事故というのは、「速度超過によりカーブで転倒した歴史上はじめての電車」だと思います。電車というのは倒れないし、倒れるようには、もともとできていません。

では、なぜ、福知山線脱線事故ではわずか40キロオーバーで転倒していまったのか?簡単に書くと、これは車両の軽量化、特にボルスタレスという軽量車両による欠陥によるものです。

以前、ぼやきに書いていますので、興味がある方は,
ぼやき「900」あなたの乗っている列車は大丈夫か?事件が風化する前に2年半前の「尼崎JR脱線事故の原因とは何だったのか」について考える。2007.11.27
を参考にしてください。

下條竜夫拝