[1543]新聞の書評欄より
毎日新聞に属国日本論に関係する本の書評が掲載されていましたのでご紹介します。マコーマック氏はそのものずばり『属国』という本も書かれています。
「サンフランシスコ体制」「属国」がこの著作のキーワードということです。
毎日新聞 2014年3月2日 今週の本棚
『転換期の日本へ』J・W・ダワー G・マコーマック NHK出版新書
以下引用開始
著者の二人は、米豪を代表する日本研究者。知日派として知られる。本書はそんな二人による警告の書である。
キーワードは「サンフランシスコ体制」と「属国」。この二つが戦後日本を規定してきたという。「サンフランシスコ体制」とは1951年のサンフランシスコ講和条約に規定された秩序のあり方を示す。ここで日本はアメリカの属国となることを宿命づけられた。日本の為政者はアメリカに主体的に服従していく。
マコーマックは「サンフランシスコ体制の本質は不平等」と断言する。日米の共謀で「二つの日本」が誕生し、沖縄に負担が押し付けられた。周辺諸国との領土問題は、意図的に「未決」にされた。将来の紛争の種をあらかじめまいておき
日本政府の共産国家との連携を封じ込めたのである。
さらに日本の再軍備を後押し、「核の傘」を提供することで、アメリカの戦術計画に組み込んだ。日本の防衛はアメリカにイニシアティブを握られ続ける。
属国であることの代償は大きい。エリートたちは自国の利益よりも、アメリカの利益を優先する。しかも対米従属派がナショナリストを名乗り、日本の利益を優先すると「反日」と罵倒される。この転倒が外国人の眼には奇妙なものに映る。
いま時代は大きく変化している。アメリカの覇権は低下し、中国の台頭が著しい。「パックス・アメリカーナ」は終焉の時を迎え、世界の警察としての信用を失っている。
そんな中、アメリカは中国に対して両義的な態度をとることで、プレゼンスを維持しようとしている。中国を「仮想敵」と捉えながら、一方で中国に接近する。
日本はアメリカとともに中国を「仮想敵」としたい。だからアメリカが中国への親密な態度をとると、より一層、尾っぽを振って対米追従を突き進む。そんな自発的追従を続ける日本はアメリカは軽んじる。中国首脳を歓待し、日本政府を冷遇する。負のループが加速する。
二人は安倍政権に対して厳しい意見を投げかける。安倍内閣は法や民主的手続きを軽視し、粗雑なパターナリズムを振りかざしていまいか。隣国に対しては独善的な論理で挑発し、歴史的に構築された信義を重んじていないのではないか。
安倍首相こそが、対米従属という戦後レジームを踏襲しており、自国の独立を遠ざけているのではないか。
二人は、現在を「パックス・アメリカーナ」から「パックス・アジア」への転換期と捉える。この流れを本物にするためには、日本と中国が連帯しなければならない。日中が手を結べば新しい時代が到来する。そう彼らは訴える。
以上引用終わり
以下中島氏の見解が述べられておりますが、長くなりますので省略します。
親中国的な外交政策をとる日本の政治家はアメリカにより徹底的に排除される。
そしてアメリカが考える日本の外交政策を体現する政治家の出現を待つ。
「対米従属派がナショナリストを名乗り」登場するとアメリカは中国と日本の仲介者の立ち位置をとる(効果的な仲介はしない)。日本には対中強硬策を取らせ手駒として扱い、アメリカは中国と対立的でない外交政策を探求する。これがオフショアバランシングなのでしょうか。
「転換期」ということですが、副島先生がどこかで書かれているように日本自体で、自らの取り巻く状況を変えるのは難しいのかもしれません。