[1433]佐藤 優さん(元外務省主任分析官)の思考(2)

6555 田中 栄 投稿日:2013/11/03 22:31

佐藤 優著「人に強くなる極意」より

 ここで少し視点を変えて、国家レベルの話にも少し触れてみましょう。最近は中国や韓国との領土問題(尖閣諸島をめぐる領土問題は存在しないというのが日本政府の立場ですが、客観的には問題が存在します)、北朝鮮のミサイル発射問題など、北東アジアの緊張が注目されています。
 ただし、僕たちが本当にびびるべき相手は韓国でも中国でも、まして北朝鮮でもありません。特に北朝鮮に関しては、国力を考えればほとんど恐れるに足りない国であることは明白です。ただし会話の窓口だけはしっつかりと確保しておかなければなりません。交渉の余地さえあるなら、どんな状況であれ北朝鮮は他国へ攻め込むなどという無謀なことはしないでしょう。
 あとは中国ですが、いまなぜ問題が起きているかというと、実はこれまで中国は大陸国家で海洋には関心を示さなかった。それが最近になって海洋資源などに
興味を示して海洋国家になろうとしているからなんです。
 実際、中国海軍のここ10年の増強ぶりには目を見張るものがあります。ウクライナから旧ソ連製空母を購入したり、国産の空母の建造にも着手しています。
そんな中国の動きに対して警戒する向きもありますが、ただしまだまだ海洋国家
としては新参者です。
 実はそういう意味でも、日本が一番びびらなければいけない相手は米国なんです。米国こそは、戦前から日本と覇を競った海洋国家でした。太平洋を挟んだ日本と米国という二大海洋国家は、いずれ衝突する運命にあったわけです。
 その結果は皆さんよくご存知のとおり。圧倒的な米国の国力、軍事力の前に日本は完膚なきまでに叩かれた。そして現在でこそ同盟国ということになるのですが、お互い海洋国家であるという点では戦前と一緒です。
 ですから、日本は米国に対してもっとナーバスにならなければいけないんです。その本質からして、日本がびびるべき相手は米国であると。
 安部総理がTTP加盟をいち早く宣言したのは、非常に賢明な判断でした。TTPというのは日米の関係を考えた時には入らざるを得なのです。
 一見、関税障壁を撤廃するというTPPは自由貿易の象徴であるかのようですが、本質は全く違う。米国の狙いは、中国の台頭をもはや一国では抑えることは難しいため、日米軍事同盟、米豪軍事同盟、米ニュージーランド軍事同盟をひとまとめにして、それをかぶせる経済体制をつくりたい。これがTTPの本質であり狙いなわけです。
 ですからTTPとは自由貿易ではなく、ブロック経済の復活というのがその本質です。経済協力の体をなしながら、本質は同盟なのです。ですからこの枠組みから日本が外れることはまずありません。
 もし別なシナリオがあるとしたら、中国と経済・軍事同盟を結ぶか、あるいは核を保有して独自に他国とのパワーバランスを保つ。いずれにしても現実的には
ありえない話です。TPP自体にはいろいろ不安な部分はあるかもしれませんが、
そういう大きな国際的枠組みと米国との関係を考えれば、到底逃れることのできないものだというのが僕の結論です。
 びびるべき相手は、戦後70年たってもやはり米国なのです。その現実から目をそらしてはいけません。
 自分の力より圧倒的に大きなもの、自分の限界を超えているものに対して虚勢を張ることは危険です。

(本論P68~P71)

 皆さんはどう思われますか?
私は「ううーん、そうかなー!?」