[1346]1345井上様ご意見ありがとうございます
大川です。ご意見をありがとうございます。
TPPは日本の農業に大打撃を与えることは確実ですので、農業関係者の方々が非常な危機感を持って反対を表明されているのは当然だと思います。前回の投稿で、もし「農業は瑣末な問題である」と思われたとすれば本意ではありませんので、もう少し詳しく述べます。
TPPの交渉分野は農業分野(市場アクセス)を含めて全部で24分野あり、政府調達、知的財産権、金融、電気通信、投資、環境、労働、紛争解決など、非常に幅広い分野にわたっています。ですから、農業分野が打撃を受けるのはもちろんですが、アメリカの関心が強い金融、保険、医療なども、日本にとって大打撃となる可能性が大きいのです。そして、関税撤廃だけでなく知的財産権などの制度も幅広く対象となり、すべての産業に影響が及びます。だから、農業だけの問題ではないのです。
しかしながら、TPPに参加すれば関税撤廃によって農業は打撃を受けるが、製造業などは有利になる、という思い込みが存在しているように感じます。
たとえば、全国紙の社説などで「日本は守りの姿勢ではなく攻めの交渉をすべき」という主張が見られますが、このような主張によって、農業が製造業の足を引っ張っているとか、農業で譲歩して製造業を守れというような、間違った方向に進んでしまいます。このような農業対非農業の対立の構図は的外れです。
あらゆる産業で巨大グローバル企業だけが強大な競争力を持ち、国家主権による様々な規制を突破できるようになるので、ISD条項(とラチェット条項)が最大の問題だというのが、私の理解です。中野剛志さんの本によれば、これまで日本が締結した様々な協定にもISD条項は含まれていましたが、以前は訴訟が少なかったようです。しかし、NAFTAで急増しているので、TPPでも頻発することでしょう。なお、日本の農業を強くするためには、TPPとは切り離して議論すべきだと思います。
中川八洋著「TPP反対が国を滅ぼす」◎農水省・JA農協を解体せよ!をご紹介頂きましてありがとうございます。ぜひ読んでみます。
大川晴美