[1229]ついにユーロ加盟国 キプロスで預金封鎖(よきんふうさ)が始まった。

副島隆彦 投稿日:2013/03/19 09:51

副島隆彦です。  以下に載せる記事のとおり、地中海のキプロス国(ギリシア系とトルコ系の人々からなる)で預金封鎖(よきんふうさ)が始まった。以下の記事にある通り「 キプロス、預金課税で混乱=銀行引き出し凍結 」である。

 今年の秋を待つまでもなく、ヨーロッパ国家債務(ソブリン)危機は再発するだろう。 ヨーロッパ危機は、ポルトガル、スペイン、イタリアが中心となる。キプロスは、EU27か国の加盟国で、さらにその中のユーロ通貨圏(ゾーン)に入っている17か国の一国である。

 キプロス国内のすべての銀行預金からの一律( 預金額に応じて3%から 12%)での 緊急の課税という手段で、国の財政破たんを回避しようとする法律の、緊急での議会議決が有って(現在、再審議中)、国民には寝耳に水で、18日(月)の朝から、それを実施しようとしていた。

 キプロス政府は、危機に陥っている自国の財政再建のために、EU委員会とECBヨーロッパ中央銀行の承認と後押しを受けて、今回の、不意打ちの、ファシズム的な電撃の政策を実施した。 この強制政策の秘密情報に事前に接近できなくて、(権力者層からつんぼ桟敷にされて、)銀行からの預金引き出しに失敗した人たちの 怒りが巻き起こっている。

 キプロス政府は、主にロシアの ”オリガリヒ(新興財閥、経営者たち)”を狙い撃ちにして、彼らがロシアから持ち出してキプロスの銀行に、タックスヘイブン(租税回避地)の低課税国の誘因に引かれて預けてある資金への強制課税を目論んだ。ロシアの”アルミ王”のロマン・アブラモビッチ、とオレグ・デリパスカの資金の凍結が隠された目的である。 

 これらの人物像は、私たちが書いて出版した『新興大国 権力者図鑑』(日本文芸社、2011年9月刊)に余(あま)すことなく出ています。勉強になりますから今からでも買って読んでください。 

 キプロスの預金封鎖 =銀行の引き出し規制、預金凍結は、近い将来の日本でも起きるだろう。現在、日本の金融当局は、アメリカに追従して、言いなりになって、 迫りくる世界金融恐慌(世界きんゆうきょうこう)を、「そんなものは起きていない」という振(ふ)りをするために、徹底した金融統制、銀行の引き出し規制(まさしく預金封鎖だ) を行う準備を、着々とやっている。

 気持ちが悪いぐらいに、不愉快極まりないぐらいに、財務省、金融庁、国税庁の 彼ら、「お金警察官」による 日本国民への統制、規制、生活干渉が、あらゆる手段を使って、日に日に、厳しくなっている。

 副島隆彦の本の読者の皆さん。迫りくる危機の事態に、それぞれがしっかり厳しい自覚を持って、早め早めに対応、対処してください。甘い考えをしている人は痛い目に遭う。「安倍首相よ、ウソでもいいから、アベノミクスで、円安と株安、地価の上昇(もうすぐ25日に、大ウソの発表をするだろう)で、景気回復の夢を見せてくれ、少しは国民に、良い目を見せてくれ。やっぱり自民党に戻ってよかったね」 と 馬鹿な期待と願望をしてる人たちは、騙(だま)されて、絶望の底に突き落とされるだろう。

 しっかりした頭の人たちは、今のうちから、余分の(有れば、だが)銀行預金を下ろして現金で手元で保持するか実物資産(じつぶつしさん、タンジブル・アセット)にどんどん代えて(変えて)ください。

 私は、昨日、フーフー言いながら、私の新刊書の 『 浮かれバブル景気 から 衰退させられる日本』(徳間書店刊) を書き上げた。3月28日ぐらいから都市部の大手の書店には並ぶだろう。乞うご期待。

副島隆彦拝

(新聞記事、転載貼り付け始め) 

●「 キプロス、預金課税で混乱=銀行引き出し凍結 」

2013年3月18日 時事通信
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2013031800072

 ユーロ圏の金融支援と引き換えに銀行預金への課税を行うキプロスで、混乱が
広がっている。国民が激しく反発しているほか、議会での関連法案可決 も危ぶ
まれ、目標の19日朝までの徴収は不透明だ。

 現地からの報道によると、同国中央銀行は取り付け騒ぎなどを防ぐため、「一
時的かつ当面」、銀行の国内外での預金引き出しや振り込みなどの取引 を停止
するよう指示を出した。また、政府は祝日明けとなる19日に、混乱回避のため
銀行を臨時休業させることを検討。議会採決に時間がかかれば、 休業延長もあ
るとしている。

●「 焦点:キプロス支援、預金者負担は「危険な前例」に

2013年3月18日 ロイター
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE92H01C20130318

 ユーロ圏財務相会合がまとめたキプロス金融支援策に、銀行預金への課徴金という異例の措置が盛り込まれたことについて、市場関係者の間では「危険 な前
例」になりかねないとの懸念が浮上している。

 ユーロ圏財務相会合は15日夕方からの徹夜の協議の末、100億ユーロ
(130億ドル)のキプロス支援策を決定。預金者から最大約10%の課徴金
を徴収する。

 欧州中央銀行(ECB)は、必要な場合無制限の国債買い入れを実施する意向を示しているが、市場では、将来別の加盟国の支援が必要になった場合、 再び預金者が負担を強いられるのではないかとの懸念が浮上。

 キプロスは金融支援がなければ、デフォルトするとみられ、ユーロ圏に対する投資家の信認が再び揺らぎかねない事態となっている。

 ニューエッジ・ストラテジーのアンナリーザ・ピアッツァ氏は「前例のない極端な措置だ。ユーロ圏周辺国が多少パニックに陥るだろう。資本流出の可 能性も否定できない」と指摘。「目先、周辺国の(国債利回り)スプレッドに一定の影響が出る。ユーロ安進行の可能性も否定できない」と述べた。

<議会審議の行方は不透明>

 金融支援策の発表を受け、キプロスでは現金自動預払機(ATM)から預金を引き出す動きが広がり、ATMの資金は多くのケースで数時間で枯渇し た。
大半の預金者は16日午前以降、預金を引き出せない状態で、今後混乱が広がる可能性もある。

 ユーロ圏当局は、キプロスからの資金流出の兆候がないか監視する意向を示しているが、資金流出があった場合の具体的な対応策は示していない。ECBのアスムセン専務理事は16日、「我々にとってキプロスはシステム上重要だ。経済規模は小さいが、混乱が生じれば、昨年大きく進んだユーロ 圏の安定が脅かされる恐れがある」と述べた。

 キプロスでは18日が銀行休業日となり、即座の反応は限られる見通し。議会が金融支援策を承認すれば、19日に課徴金が適用される。

 ただ、議会が支援策を承認するかは不透明。承認できない場合は、デフォルトへの懸念が強まるとみられる。議会では17日に支援策をめぐる審議が予定されていたが、事前の調整が必要として、18日に延期された。

 アナスタシアディス大統領は議会に支援策承認を求めているが、絶対多数を握る政党はなく、すでに3党が支援策を支持しない意向を示している。

 JPモルガンのアナリスト、アレックス・ホワイト氏は「与党が自信を持って期待できる賛成票は(56議席中)26─28票程度だろう。野党は26 票前後の反対票を確保できるとみているのではないか」とし「非常に僅差で、現段階では予想がつかない」と述べた。

<スペインが試金石に>

 これまでのところ、キプロス以外の欧州諸国では目立った混乱はみられない。
バンク・オブ・キプロスBOC.CY は、英国のウェブサイトで、キプロスの銀行の海外支店には課徴金は適用されないと説明。スペイン中銀も、スペ インからの資本流出の兆しはないとしている。

 バークレイズは「過去の支援プログラムで、今回と同じ措置がとられていれば、預金流出や国債下落が他の周辺国に波及していたかもしれないが、それ に比べれば、影響はかなり限られるだろう」と指摘。「ギリシャを含め、周辺国の預金流出の可能性は低いとみている」と述べた。

ただ、市場には不安が広がっている。

 チェコの元経済相で、現在はゴールドマン・サックスの国際アドバイザーを務めるウラジミール・ドロウヒー氏はロイターに「ドイツなど欧州北部の有 権者が一定の負担を求めるのは理解できる。ただ、事実上預金の1割を没収するというのは、危険な前例だ」と指摘。「混乱が深まれば、5割没収と いった話にもなりかねない」と述べた。

キプロスの混乱が他国に波及するかは、スペインが試金石になるだろう。

 欧州中央銀行(ECB)の最新統計によると、1月のスペインの預金残高は横ばいで安定。スペインは昨年、国内銀行向けに400億ユーロの金融支援 を受けており、銀行の資金は潤沢だ。スペイン政府も市場から問題なく資金を調達できており、支援申請が必要な状況ではない。

 ただ、一般の預金者の間に不安が広がる可能性は否定できない。
ザンクトガレン大学(スイス)のシモン・エベネット教授は「キプロスの救済条件を特殊な例とみることはできない。ユーロ圏の重債務国や海外預金者 に送ら
れたメッセージは明白だ。リーマンのケースとは違うが、システミックリスクへ
の懸念が無視されているのは明らかだ」と述べた。

 欧州議会のシャロン・ボウルズ経済・金融問題委員長も「預金保証制度が台無しになる」と批判した。キプロスの銀行預金の多くは、ロシア人や英国人の預金。これまでのところ英国、ロシア政府から抗議の声は出ていない。

 ただ、デンマークのサクソバンクのラルス・セイア・クリステンセン最高経営責任者(CEO)は自身のブログで「金融支援発表の会見では、1回限り の措置と説明していたが、別の国で同様の措置を導入する可能性は否定しなかった。1回やれば、またやる可能性がある」との見方を示した。

(転載貼り付け終わり)

副島隆彦拝