[1206]世界で起こっている異常気象と災害(人災)について

田中進二郎 投稿日:2013/02/03 09:18

寺平さんが、オーストラリアの年明けからの打ち続く自然災害について、報告してくれました。(重掲1201「OZは異常気象」)。かの国では、ダムの水を貯めすぎても洪水を起こすからダメ、また不足しても、産業に支障をきたすからダメというのは異常気象のときは放水のタイミングが難しそうですね。

『オーストラリアにおける「不都合な真実」の悲惨な結末』 矢澤豊という方(オーストラリアに留学中か?)が書いたサイトの記事を読むと、オーストラリアの山火事の災害がこんなに大きくなっているのは、「ばかなグリーニー(Greenies 地球環境保護論者)たちのせいだ」と怒っているオーストラリア人の説を紹介していて、興味深かった。三年前の記事のようですが、引用します。
agora-web.jp/archives/627410.html
(引用開始)
2009年2月7日前後に、オーストラリアのヴィクトリア州で大規模な山火事(ブッシュファイア)が同時発生し、200人近くが死亡、約500人が重軽傷を負い、約2,000世帯が住まいを失うという大惨事がありました。(一部略)幸い私の周りには、身内や知り合いに直接被害を受けた人はいませんでしたが、知り合いのオーストラリア人弁護士が吐きすてるように言った次の言葉が印象に残りました。「バカなグリーニーたち(Greenies=環境保護主義者)の責任だよ。」どういうことか聞いてみると、つまり次のようなことだったのです。主に中国経済に牽引され好景気が続いたオーストラリアでは、ちょっとした不動産ブームがすすみ、ここ数年間に郊外エリアの外環部での宅地造成がすすんだ。以前からオーストラリアの内陸部に住む人たちは山火事対策として家屋周辺の森林を伐採することで延焼予防を施し、雨季には森林管理の目的で人工的に山火事を発生させ、枯れ草/枯れ木など燃えやすい燃焼材を人為的に処分するのが通常だった。しかし都市計画を牛耳る地方政府が、森林愛護や、山火事による二酸化炭素排気への反対を主張する環境保護団体の圧力により、このような計画的伐採や人工的山火事による予防策を禁止したという。それでもあえて住居周囲の木々を伐採した人は、刑事犯として罰金刑を科せられていた。それが今回の大惨事をきっかけに、 住民が蓄積してきた知恵と経験を無視し、感情論的なエコ政策を無理強いすることにより、災害被害の悪化を招いたとして、環境保護団体に非難が集中している(以下略)
(引用終わり)
田中進二郎です。 
オーストラリアの自然災害は山火事にしても、洪水にしても人災の側面がかなりあるのでしょう。昔から住民が蓄積してきた知恵をないがしろにすると、大災害になってしまう。
東日本大震災でも、三陸海岸で、「ここから先は人が住んではいけない。」という言い伝えを破って、海岸近くに居を構えた人たちが多く家ごと津波に飲み込まれた。大津波に襲われる前、岩手県田老町ではコンクリートの日本一の防潮堤をつくって、世界からの視察団(2007年のスマトラ沖地震の後は、インドネシアからも来ていた)に自慢していた。(高さ10メートル)そして海岸線にそって住宅を作った。その安心が仇(あだ)となったのだ。『千年震災』(都司 嘉宣著 ダイヤモンド社)より。また都司氏は、この防潮堤の工事の過程で大きな誤りがあったのではないか、と疑いをはさんでいる。

作家の吉村昭氏(よしむら あきら)が存命であったらきっと、田老町のひとびとに警告を発していたであろう。吉村氏は生前三陸海岸をこよなく愛していたのである。

そういえば、昨年の春の福島難民キャンプツアーの折、いわき市の海岸の被災地をバスが走っているときに、副島先生が「太平洋は外洋であるから、津波や高潮などの被害を受けざるをえない。ゆくゆくは日本の各産業も、軸足を太平洋から、内海である日本海に戻していかざるをえない。それが必然的な流れである。」という『環日本海経済圏』の話を少しされていた。「戻していく」というのは江戸時代の北前船(きたまえぶね)が走っていたころに戻っていくということである。
確かに東京、名古屋、大阪の三大都市の50キロ圏内に日本の全人口の40パーセント以上が住んでいるという、今の「太平洋ベルト」の時代にもう大きな発展性なんてないのかも、と私には漠然と思える。
それより、歴史家の網野善彦氏(あみの よしひこ)がいった、日本をユーラシア大陸から見て、外から囲む弧状列島のように見る視点を持つことによって、アジアおよびロシアとの交易をさかんにすること。こちらのほうが長い長い目で見れば大事なのだろう。そして副島学問道場の綱領である「アジア人同士戦わず」も、長期的な戦略として捉えられるべきであろう。「アジア人同士戦わず」については別の機会に考えたことを述べてみたい。
(ところで以上のことはオーストラリアに住んでいる方なら、簡単に理解されるだろう。なぜなら、オーストラリアの地図は南が上になっている、というから。)

さて話が戻ってしまいますが、今年1月のオーストラリアの自然災害は、日本のマスメディアではあまり報じられていません。やっぱり「対岸の火事」みたいに思われているようです。

それより世界の気象との関連でいえば、今度は北京、天津などの華北の諸都市や長江・珠江デルタの諸都市の光化学スモッグの問題が深刻になっている、というニュースが報道されるようになってきました。スモッグの中に含まれる微粒子状物質(Particulate Matter)のPM2.5やPM10の濃度を「空気の品質インデックス」というので見てみました。これが中国でも爆発的にアクセス数を伸ばしているようですね。私も一中国人になったつもりで検索してみました。

「河南省の一部では空気品質指数が500を超える、観測不能の汚染となった。」と1月12日の人民日報が伝えた。中国中央テレビは「PM2.5の値は、いずれも700を超え、、北京市通州区では900という値を記録した。」(1月15日)と報じている。これはWHO(世界保健機関)の基準値の36倍であるという。まあ、空気品質指数700とはどれくらいなのかがはっきり知らなくとも、あのスモッグの色をみれば、有毒であることは明白だと思われます。

この2日間ほどで、北京で雨が降ったことによって、大気中のPMが地上に落ちたことによって、スモッグはいったん警戒レベルを脱したようである。北京の空気品質指数がPM2.5が200、PM10が72となっている。東にソウルはPM10が34(PM2.5のデータは見つからず)、福岡市中央区はPM2.5が69でPM10が24。広島市西区がPM2.5は39
PM10が20(これはきれいな空気ということらしい。)大阪市此花区がPM2.5が35。
名古屋市がPM2.5が48、PM10が16だった。(2月3日午前4時現在)やはり中国からの距離が大きくPMの濃度と関係しているようである。また東京ではPM2.5の濃度が高いときでも50ぐらいだそうだ。

放射能の次はスモッグの微粒子状物質が、西日本の人たちの不安になってきている様ですね。やっぱり放射能と違って、黄砂ははっきり、大気の色で感じとれますから。私も関ケ原(岐阜県)あたりを境にして、西と東で空気の色が違うなと感じることがあります。(東海道新幹線で東京から大阪へ移動すると、滋賀県に入ったとたんに空が黄色くなったなと感じます。黄砂は伊吹山や鈴鹿山脈でかなりさえぎられているのではないでしょうか・・・)
うすく放射性物質や微粒子状物質のもやがかかった国、それが日本の空気なのでしょう。
結論がうまく出せませんでした。
次は副島先生の「アジア人同士戦わず」の思想の系譜を探る、という題で書きます。

田中進二郎拝