[1181]オーストラリア在住の 会員からの 現状報告の文を転載します。

副島隆彦 投稿日:2013/01/10 10:17

副島隆彦です。

「今日のぼやき」の方に、私の新年の初め一本目の気合(きあい)の入った文を書きました。お読みください。

以下は、オーストラリアに在住の 私たちの会員からの、オーストラリアの政治と経済の全体の様子を概観(アウトルック)した 現地からの報告文です。  私が、この人とのメールのやりとりで催促して、書いて送ってもらったものです。 それをここに、私が、少しだけ手を入れて読みやすくして載せます。 

私たちの学問道場は、既成の世界体制(ワールド・オーダー)側のメディア情報 (当然、彼らの都合のいいように統制されて、改変された情報と見方だ) にだけ頼らないで、できる限り、私たち自身の仲間からの世界各地の、各国の真実の情報と、知識を手に入れて、それを皆で共有することが大切です。

私たち学問道場の会員は、世界中の主要な30カ国ぐらいに会員の人がいて、故国の日本からの情報を毎日、ネットで見ています。私は、この海外の会員たちが、自分が在住する国の様子を、簡単でいいですから、ここの重たい掲示板に気楽に書いてくれることを ずっと、12年間、願って来ました。

 私、副島隆彦宛てにメールをくださる会員たちとは、私は、すべて交信しています。 それらは私信(ししん)ですから、何でもかんでもネット上に公開するわけにはゆきません。 

 私が、死んだあと、私の弟子たちや出版社が、それらおそらく2万本ぐらいになるだろう メールや手紙の交信を、公表する意義があるものは、少しずつ、書き手のプライヴァシーに配慮しながら公開してゆくでしょう。私には、もうどうにも出来ないことです。

 私は、世界中にいる私たち学問道場の会員が、「ただ読むだけ」でなく、もっと学問道場に自分も参加して、投稿してくれることをずっと待ち望んでいます。
しかし、「文章を書く」、「書いて公表する(人々に読んでもらう)」ということは、物書きのプロウを目指す人間でなければ、なかなか日常的にはできることではありません。 

最近、一生懸命書いて投稿してくれる 大城さまのような、どうしても、肩肘(かたひじ)が立った、大きく振りかぶったような文になる人が多いです。 それはそれでいいです。 会員は、もっと自分の意見を書いてください。 そして交流してください。お願いします。

 私たち学問道場の会員が、もっと団結して、この「ネット系の言論革命」を日本で推し進めなければ、日本国には、もう、本当に本当の自由な言論の火、灯火、灯(ともしび、トーチ)は無くなるのです。 お願いします。

副島隆彦拝

(転載貼り付け始め)  

Sent: Monday, January 07, 2013 5:29 PM
Subject: Re: ご依頼の件

**** さまへ

副島隆彦から

本年もよろしくお願いします。
年末に、**さまから、以下の貴重な オーストラリアの 政治、経済の 現状の ご報告をお送りただいておりました。私は、この文章を 年明けに掛けまして 4回読みました。

 そして大変勉強になりました。オーストラリアの現状、現実が、**様の文で、手に取るように分かりました。 私が新聞で読んでいるような記者たちの事件を中心にした文とは、また味わいがちがいまして、それらと重ね合わせることで、現地にいる 日本人の 目から見た 冷酷な第三者の しかし、庶民の目からの 優れた 分析になっています。

**さま。 この文は書き手の特定ができない用意周到に出来ている文ですから、私が、手を入れて読みやすくしてから、重たい掲示板 に「会員からの オーストラリアの現情 報告」 として載せます。 どうぞご了解ください。

もっと日が経ちましたら、そのうち**様がご自身で、重掲に気軽に投稿していただけるようになりますと本当に、会員たちと気持ちが通じて、「ああ、この人は学問道場の会員だからウソは書かないで、すっきりとした 簡潔な真実を書いて伝えてくれて、私たちに教えてくれている」 と 感謝するでしょう。

私は、世界各国に居る 私たちの会員が、ここを読みに来るだけでなく、もっともっと自分から現地報告をしてくれることを強く期待しながら生きてきました。 この希望と 期待はいまも強くあります。

 とりあえず**さまの 以下の文を載せます。 どのように書き変わったかを、ご自分で読んでお楽しみください。  読み易く分り易くすると、このようになるのです、ということの 見本として、どうぞ**さまご自身の 文章力の向上に、プロの物書きである 私、副島隆彦(学問道場の先生ですから)の 朱筆をお役立てください。

 この度は、私からの無理なお願いをしまして、お聞き届けいただき手間をかけて書いてくだいまして、本当にありがとございます。 重ねて感謝申し上げます。 今後とも「副島隆彦の学問道場」をよろしくお願いします。

副島隆彦拝

副島隆彦さま

2012年12月27日

****から

豪州(オーストラリア)の政治経済について

 オーストラリアは、政治的には米英のように2大政党で交互に政権は運営されています。極端な政策の違いも見受けられません。

 ですから自由党、労働党、共に私の考えでは(異論はありましょうが)呼称が違うだけの右、右の政党が2大政党(勢力的にも拮抗)であり政治的には非常に 安定した国という印象があります。

 経済では、この安定性がリスクの軽減であり、高金利政策とあいまって世界中からこの国に投資があるのでしょう。

 振り返りますと豪州経済はご承知のとうり、農業と鉱業の国でその2大産業が屋台骨を支えております。 折からの世界的な資源ブームと気候変動による穀物高騰や需要増などにより、10年以上も好景気を謳歌して来ました。

 農業は一見して地味です。が、その一方の雄である好景気に沸いていて巨額の利益を上げていた世界的鉱山会社の好待遇(大学新卒の年棒が10万豪ドル。900万円 )が 庶民の嫉妬、羨望の的でもありました。

 そこに目をつけた当時の首相ケビン・ラッドはその年に総選挙が予定されていたため、選挙対策用に「資源超過利潤税」 の導入を発表しました。
 
 とたん鉱業界から猛反発をくらい、おまけに隠然たる力を持つ鉱業ロビイストの影響力もあり党内での支持を失い、結局辞任に追い込まれました。

 しかしこの労働党の前首相ケビン・ラッド(流暢な中国語を話す元外交官として世界的に有名でした)は、国民受けする政策の実行力があります。

 ですから、国民には同じ労働党の現女性首相ジュリア・ギラード (えらく美人のいかにも、オーストラリアの牧羊犬のシュエパードとそっくりの細身で長身の体型をしている、オーストラリア美人女優のケイト・・・や・・・のような。副島隆彦の勝手な割り込み、加筆。失礼。)よりも明らかに人気があります。

 豪州国民はコンサバティヴだと言われます。が 国民は政治には無関心ではなく 10年以上政権を握って、好景気を謳歌していたのにもかかわらず、変化を求め政権を自由党から労働党に鞍替えさせました。それどころか現職首相(ジョン・ハワード)を総選挙で落選させる、ということをしました。

 国民が本気になれば首相の首を飛ばせるのだぞ という意思を示しました。どこかの国では考えられない選択をしています。

 今は政治的な大きな問題もなく、しばらくは平穏に推移してきました。

政府は最近になってアジア白書なるものを発表し、これからアジアが世界市場をリードし世界経済の中心になるだろう。 豪州は経済的に欧米から完全にアジアにシフトすると明確に言っています。

 このことは国民にアジアの言語の習得を奨励しその指導者の育成にも言及しており戦略においても優れています。 留学ビジネスにも力を要れ世界中から学生を受け入れています。

 2100万人という少ない人口でありながら、意外ですが、2012年度の「大学の世界ランキング」に100位以内に5校も入っています(日本は2校)。

 学生だけでなく一般移民も積極的に受け入れています。が、豪州に必要なスキルの持ち主であるかどうか。資金を持っているかどうか、など入国を許可する際の移民の資質にも明確に言及し、政府は物怖(ものお)じすること無く述べています。 

 審査も厳格で出身国の警察から無犯罪証明書の提出の義務があります。どこかの国のように留学生だと思って受け入れたら、盗人予備軍だったというようなことはありません。

 アフリカ諸国から人道的な難民の受け入れもしています。一般移民共々、永住権や市民権を取得するとMedicare(毎月の支払いは無し)という医療制度(入院費、手術費等無料)や、福祉の chilicare などは日本の子供手当てに相当する。一人当たりに年$5000を超えます。また出産費用は無料で、さらに一人$7000のボーナスがあります。 

 豪州国民と同等に扱われある意味開かれた公平な国でもあります。老齢年金(毎月の掛け金等無し)も永住権取得後10年過ぎると65歳から無条件で支給されます。 勤労者はさらにスーパー・アニュエーションがあり掛けた年数、金額に関わりなく65歳から自由に引き出せます。

 日本のように年金の年数が足りずに掛け金がすべて無駄になるという泥棒のような制度ではありません。

 この10数年で人口増、世界中からの不動産投資と好景気を背景に大都市圏の不動産価格の高騰、家賃の高騰で(シドニーでは、もはや東京の不動産価格と遜色ありません) 成金的に裕福になった人が大勢出現しています。

 そのかわりに一般的な庶民には、自宅を持つのは夢となりました。以前は伝統的に、豪州人は子供が自立する年齢に達したら家から追い出すようにしていました。

 が、今では若年者では自前で部屋を借りることもできない程、家賃が高騰したので親元に居るか、もしくは数人で部屋をシェアするのが当たり前になっています。賃貸し物件が不足がちなので、シドニーでは、ちょっと前ですが、アパートを賃貸するのに「家賃の入札」をやった家主もいたほどです。
 
 日本のようなマネーゲームでの高騰ではなくて、需要があり供給不足の高騰なので現在は落ち着いています。が、高値安定したままです。オーストラリアは、このあとリセッション(景気後退)になっても、急激な価格下落はあり得ないでしょう。

 世界的に2009年のリーマンショックにより、リセッションが叫ばれています。 遅ればせながら豪州にも、今年初めあたりから、その傾向が現れています。

 私のような庶民の目線からですが メイン・ストリートの路面店に空き店舗の看板が目立ち始めました。 飲食の繁盛店でも客数に変化が無いのに売り上げが落ちているとのことです。

 過去にはなかった、2大スーパーマーケットによる安売り合戦もそうです。豪州の会計年度末は6月ですが 申告期限の8月に、私が聞いた公認会計士の話では 扱っている飲食店の9割が赤字決算だったそうです。

 豪連邦準備銀行(中央銀行)の金利の差配(さはい)に従わない(すなわち、政策金利を下げても貸し出し金利の方を下げないで無視する市中銀行)銀行が現れたり というように、豪州も食料大国、資源大国と胸を張っている状況にはなく、経済の建て直しが政治の本題になりつつあります。

以上

 この程度のことくらいしか私には書けませんが、副島様の参考になれば幸いです。

**** から

(転載貼り付け終わり)

副島隆彦拝