[969]リアリズム的国際関係

加地龍太 投稿日:2012/05/25 17:16

会員の加地 龍太(かじ りょうた)です。
以下に思考したことを記述します。

「リアリズム的国際関係」

国家と国家は対等な関係か。
経済力、軍事力、資源の量、シンクタンクの知的実力などの総合的国力に差異がある国家同士が平等で対等な関係であると考えるのは、現実的ではない。
リアリズム上の国家と国家の関係は、宗主国(世界帝国、世界覇権国とも言う)と属国の関係である。
リアリズムとは現実主義のことであり、国際政治上のリアリズムとはパワー・ポリティクスを肯定する立場のことである。
パワー・ポリティクスとは「軍事的もしくは経済的な力の使用もしくは脅迫的使用に基づく国家間の関係」を肯定する考えである。

リアリストとは、以上の考えが現実的であると考える人々である。
私もリアリストであるから、「人類(白人も黒人も黄色人種も)が皆 平等で国家同士も対等である。差別や偏見を一切せずに地球はまわっていく方が良い。」と軽々しく言う気にはなれない。無論、実現可能ならば人類が皆 対等に暮らす世界の方がより良いに決まっている。が、それは絵空事であり現実的ではない。

過去に「皆を平等に生活させること」を唱えたソヴィエト・ロシアのスターリニズムの実態が、国内に言論統制、思想統制などの政治弾圧を敢行し、中央政府の方針に違反した人々を強制収容所に投獄するという恐怖政治であったという事実が、それ(人類が皆 平等に生きるというのは絵空事だということ)を物語っている。
ソヴィエト・ロシアだけでなく、アドルフ・ヒトラーのナチス・ドイツも同じである。
以下、引用。

(引用始め)

私にとっての理想的な共同体は、あなたにとってのユートピアとはおそらく違うだろう。
地上に天国を創ろうとするような試みは、失敗に終わる運命にある。それは、天国がどんなものか、個人個人の捉え方が異なるからである。我々の社会が多様化すればするほど、国全体のために立てた一つの計画に我々皆が同意する可能性はさらに小さくなっていく。

デイヴィッド・ボウツ氏 著作「リバータリアニズム入門」 P377
副島隆彦先生 翻訳

(引用終わり)

加地龍太です。以上のように、人類を全て平等に生活させるなどという絵空事は、個人の尊厳、個人の自由を蔑(ないがし)ろにし、個人が自分の自由意志に基づき自らが持っている才能を発揮することを否定することになるのである。
それゆえ私は人類を全て平等にするという考えは現実的に宜しくないと考える。
これは、個人だけの話ではなく単位を国家にしても同様である。

現実世界では、世界覇権国の世界戦略と各国に権益を確保しているコングロマリット(複合企業)の経営戦略が世界を経営・運営しているのである。
以下、引用。

(引用始め)

国際政治における”リアリズム”Realismというのは、簡単に言えば、「ある国の国内問題のゴタゴタの内容がどのようなものであれ、そのことと国際政治とは無関係だ。それらの国内問題とは無関係に、その国の国家的運命は周りの国々、とりわけ強大な国との関係によって決定される」という理論である。
要するに、「小国や普通の国の運命は、アメリカやソヴィエトという覇権国どうしの国際的な覇権抗争の中で決定されてゆくのだ」という冷酷な理論である。
つまり国家というのは、それぞれひとつずつがビリヤードの玉のようなものであって、他の玉がぶつかってくるとピーンとはじき飛ばされて別の玉にぶつかって行く。
その国の国内の事情がどのようなものであろうとも、それらの内部関係とは無関係に外部的な理由だけで決定されるのである、とする理論である。
日本が戦後半世紀にわたって西側世界(自由陣営)に組み込まれ、アメリカの核の傘に守られてきたという冷厳な事実も、このリアリズム(現実主義)によって実践され、かつ、この理論からのみ説明がつくのである。この真実を、日本の国際政治学者たちの多くは、おおいかくしてきたか、あるいはきわめて歯切れ悪くしか日本国民に伝えて来なかった。
日本は情報統制国家である。

副島隆彦先生 著作「世界覇権国アメリカを動かす政治家と知識人たち」 P114

(引用終わり)

以上のように、リアリズム的には、個人がそれを好むか好まないかは不問とされ、国際関係は世界覇権国側の世界戦略によって決定されるのである。
従って、国家と国家は対等な関係ではない。

これがリアリズム的国際関係の理解である。
この現実を受けとめ、日本はどうするべきか。
私は、「世界帝国の世界戦略に沿った独自の国家戦略を日本が持つこと」が大切だと考える。
副島隆彦先生の著作「新版 日本の秘密」にも同様のことが書いてある。

現実的に属国である国家は、覇権国と親交を結ぶことが大切である。
なぜならば、経済面をはじめとする総合的国力で覇権国に劣っている国家は、親覇権国であることが国家経営に取って不可欠だからである。
それゆえ私は、日本は今後少しずつ「親中国」になる必要があると思う。
尤も、ただ単に覇権国に金銭を貢ぐだけの国家であってはならないと思う。
日本は、独自の国家戦略を持ち、世界帝国やその他の国家と関係してゆくべきである。

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加地龍太 拝