[934]<追想録> 舘龍一郎さん
会員の渡邊隆史です。
4月6日付けの日経新聞夕刊に舘龍一郎さんという東京大学名誉教授の追悼記事が載っていたのですが、典型的な「帝国に育てられた優秀な現地人」の経歴に思えたので転載します。
(転載はじめ)
● <追想録> 舘龍一郎さん(東大名誉教授) 経済学者の政策関与へ道
「役に立たない経済学は意味がない」。
積極的な政策提言で、高度成長期の経済政策を支えた。
東京帝国大学経済学部に在学中に学徒動員で陸軍に。
戦後、東大に戻り、ロックフェラー財団の奨学金で米エール大学などに学んだ。
帰国後、東大ではマルクス経済学にのっとって教える教授ばかりのなかで、批判的な視線を浴びながらも近代経済学を教え続けた。
今に至る東大近代経済学の基盤を築いたといえる。
政策提言では、独占禁止政策の観点から八幡製鉄と富士製鉄の合併に反対意見を表明するなど行動派の学者として頭角を現した。
1970年代には佐藤栄作、大平正芳の両首相の経済アドバイザーとしても活躍した。
最大の功績は金融自由化の道筋をつけたことだ。
80年代初め金融制度調査会で自由化を進める必要性を説く一方、銀行経営が厳しくなることを見越し安全網の確立を訴えた。
90年代初めには銀行と証券の子会社方式による相互乗り入れを唱導した。
合理的な考えと、温厚な性格で、経済学者が政策に関与する道を開いた。
自らは役所の案に何度も手を入れ直すこだわりを持っていたが、のちに役所の言いなりになる御用学者が出てきたことにはじくじたる思いを抱いていた。
=2月11日没、90歳
(転載終わり)
竹中平蔵氏の先達みたいな人のようですね。