[540]なぜ事故原因の説明がないのか

大川晴美 投稿日:2011/05/24 23:30

 福島第一原発の事故原因が、2か月以上が経過した現在も明らかにされていない。日本国民と全世界を恐怖のどん底に陥れた未曾有の大事故だったのだ。事故を二度と起こさないために、東電と政府の責任者は事故原因の究明に命がけで取り組むべきではないのか。
 5月16日、東京電力は原子力安全・保安院の指示に従って、福島第一原発事故直後の詳しいデータを初めて提出した(同社ウェブサイトで公開)。これによると3月11日14時46分に地震が発生、1号機は直ちに原子炉が緊急停止(自動スクラム成功)、2号機も14時47分に停止したが、この後の正確な状況がわからない。明らかにすべきなのは次の点である。

1.1号機と2号機の原子炉建屋、中央制御室、緊急冷却装置を動かす電気系統・配管等に、それぞれ何時何分に何メートルの津波が到達したのか。
2.津波の水はどこにどの程度侵入したのか。扉、窓、床、配管、装置類にどのような防水対策が取られていたのか。それらは機能したのか、しなかったのか。
3.非常時に原子炉を冷却する装置が、1号機と2号機それぞれで何時何分に作動して、何時何分に停止したのか。
4.停止した原因は何か。津波の侵入による故障か、作業員が止めたのか、地震の揺れで停止したのか、津波以外による故障・破損・爆発等のために止まったのか、製品の欠陥によるものか、複数の要因によるものか。
5.津波の到着時刻と、緊急冷却装置の停止時刻と、どちらが先だったのか。
 津波が到着する前に冷却装置が停止したのであれば、これまで報道されてきた「想定外の大津波のために電気系統が故障して冷却装置が動かなくなった」という説明は間違いだったことになる。

 以上については、今回のデータと併せて、事故発生当時まで現場にいた社員や作業員に確認すればかなりの程度わかることであり、「放射線のために現場の調査ができない」というのは理由にならない。

5月24日東京新聞朝刊:
「大津波が到着する前に、1、2号機の原子炉冷却に使う水タンクの配管などが地震によって損傷していたことが、東京電力の公表資料から分かった。東電は事故の主な原因を津波としているが、今回判明した損傷などの評価によっては、耐震設計の見直しも迫られそうだ。」