[352]日経社説「東日本大震災」―いま何をすべきか―の考察

会員番号2449 投稿日:2011/04/01 11:58

4月1日の久保田啓介氏の社説「信頼できる情報内外に」(東日本大震災4)が、今回の福島第1原子力発電所事故に対するマスメディアの情報発信力を代表していると思いますので、その社説の4つの問題点を指摘したいと考える。
 1点は、東日本大震災全体の中で、福島原発事故を優先順位(プライオリティ)の4回目に取り上げたことだ。1回目「政官民の総力結集を」、2回目「未来を拓く経済復興を」、3回目「『ものづくりの力』今こそ」に続いて、情報の信頼性ということで原発事故を4回目に取り上げているが、私は、1回目に取り上げるべきテーマであったと考える。ニュースとしての緊急性があり、世界が固唾を飲んで見守っている全世界に影響する課題であるからである。「政官民結集」や「経済復興」や「ものづくり」を進める上にも、原発事故の応対や処理が最優先であることを指摘したい。その処理を誤れば、日本が壊滅し、全世界の経済が大恐慌を起こすからである。日経はその使命を一番理解する立場でないのか。
 2点は、「タイムイズマネー」の自覚が欠如している政府の、スピードに対する的確な行動がなされていない事実批判がないことである。「今からでも遅くない。危機管理の要諦は『状況の認識の共有→当面の目標設定→達成状況の管理』である。そのサイクルを速く回すべきだ。」とコメントするが、本当に遅くなかったのか。例えば、これから原子力発電に大きくシフトする米国や原子力発電に8割近くを依存するフランスと比べて本当に遅くなかったのか。私はそうは思わない。3月11日から20日たった4月1日になっても、上記の危機管理マネジメントサイクルが描けない事態は異常事態であり、近代化に取り残されている政府・マスコミなのである。日本経済を支えているトヨタやソニーやキャノン等数十社の輸出企業で行われている常識と比べて、開いた口がふさがらない「内向きの対応」を繰り返していることを指摘しないで、なぜ未来の復興が可能なのかを教えて頂きたい。復興は、経済戦争と同じで「勝つ戦略」があるかどうかである。その戦略の要諦は「正確な情報共有」にある。大東亜戦争(太平洋戦争は、インパールまで含まれていない概念)の敗北は、情報を秘することで、国民を犠牲にし、官僚機構を守った体質に第一の功罪があり、現在においても国民を信頼していない体質があることを指摘したい。
3点は、大本営発表に頼るニュースソースしか持たないで、編集技術競争に堕落したマスメディアの情報癒着である。ジャーナリスト魂を無くしたマスメディアは、万死に値する。風評被害の問題は、それを流す側にあるのでなく、情報を多く持ちながら意図的に隠す行為を実践いる情報編集の文脈操作に原因がある。情報を細分化して一部の情報を大きく取り上げる事で、事実と違う印象へと誘導する。情報の時間軸を外して、現在と過去を無理やりこじつけて違う印象を与える。想定シミュレーションをあたかも現実のように見せて、事実誤認の責任を負わない。「正確な情報共有」の責任は、政府とそれを提供するマスコミの双方に責任がある。もっと正確にいえば、一人ひとりの担当者にある。今回の社説は、一人ひとりの編集委員の名前で公表されているのは一抹の救いである。
4点は、この20日間の経過時間でマスコミ関係者であるからこそ可能であった何かを、提案しなかった責任である。結果から判断するボート型思考(後ろ向きのリーダー配置)の官僚機構のミスリードを、生き馬の目を射抜くような経済人の現実対応型思考の人間にとっては、そのもどかしさの自覚があったと考える。日本には作業員の放射能防護服以上の性能のよい防護服が治安関係にあり、防災関係には無人ロボットがあるのである。日本の産業界は世界に誇れる技術があるのである。情報敗戦は、マスコミ側の情報戦略にあった。ネット型のインターネットや携帯電話サイトは、今回の震災にあった人々の救済に対し何ができるかを真剣に考え、情報提供サービスを最大限に実践している。それに対し、マスコミやテレビは、ほとんど付加価値のない情報サービスしか提供していない現実を、国民は被害を受けた人々だけでなく、はっきり自覚したのではないかと考える。
今回の東日本大震災は、痛ましい自然災害で思考停止をさせられる場面が数多くあったと思われる。合理的理性よりも、日本人の魂が覚醒された部分があったように思う。冷静さを取り戻した人間の自覚から、今までの生き方を反省し、何ができるかを各自の生活現場から改善、改革していくことを願っている。平成23年(2011年)3月11日は、私たち日本人に、21世紀を生きる覚悟と運命を提供した。日本人の道徳(モラル)の高さは、戦前・戦後を通して今も働いている。誇り高き(プライド)民族として、世界に貢献できる目的を自覚しなくてはいけない。それは、民族の誇りを内に秘めて、世界のモデルとなるような新日本の建設である。
30数兆の復興特別会計の国家予算は、ガラス張りに監視しなければならない。資本主義モデルから社会主義モデルの経済体制に大きくシフトする時期が来た。モラルハザードを起こさない為にも、情報を共有し、社会主義体制からの出口戦略を監視する中で、努力した者が豊かになる原則が働く中で、友愛精神(鳩山由紀夫?)をどのように調和させるかの試練である。過去に例がない崖っぷちの非常事態の状況において、歴史の教訓を生かせない官僚機構を、現代政治家はどのように手綱を取るのであろうか。小室直樹博士が指摘された日本の弱点を克服し、副島先生と一緒に歩んでいきたいと思います。