文書の倉庫 (0)アメリカ政治思想・アメリカ政治分析 転載貼り付け1

会員番号4655 佐藤裕一 投稿日:2010/12/27 01:12

 会員番号4655の佐藤裕一です。

 今年の「副島隆彦の学問道場」リニューアル後に行けなくなったと思ってい「文書の倉庫」を発見、全部残っていた。1人の会員として書くが、一体ここの閲覧管理はどうなっている? 幽霊掲示板群と同じく入り口を表示させるつもりもないだろうから、優れて貴重な文章が無くなる前に転載貼り付けして、転載掲示板に保存しておくことにする。同じ学問道場内なので問題ないでしょう。

 それでは「文書の倉庫」から転載貼り付け致します。各個人掲載のEメールアドレス及びURLは省きます。

 

 文書の倉庫 (0)アメリカ政治思想・アメリカ政治分析
http://www.soejima.to/souko/text_data/wforum.cgi?room=0

(佐藤裕一による転載貼り付け始め)

投稿時間:2000/06/05(Mon) 01:59
投稿者名:荒木章文
タイトル:-列強政治(Powers politics)とは「社会的事実」であり「疎外」である。-

-列強政治(Powers politics)とは「社会的事実」であり「疎外」である。-
SNSI研究員
荒木章文

「世界覇権国アメリカを動かす政治家と知識人たち」の中、ハンス・ヨアヒム・モーゲンソー(Hans joachim mogenthau1904~80)の記述がる。
ハンス・ヨアヒム・モーゲンソー(Hans joachim mogenthau1904~80)はアメリカの「リアリズム国際政治学」を築いた人物である。
では、この「リアリズム国際政治学」とは何なんだろうか?
それは次のように説明されている。

「ある国の国内問題のゴタゴタの内容がどのようなものであれ、そのことと国際政治は無関係だ。それらの国内問題とは無関係にその国の国家的運命は周りの国々、とりわけ強大な国との関係によって決定される。」
(世界覇権国アメリカを動かす政治家と知識人たち 副島隆彦著 講談社α文庫 p.114)

冷戦下の現実の政治においては
「小国と普通の国の運命は、アメリカ・ソビエトという覇権国どうしの国際的な覇権抗争の中で決定されていく。」
(世界覇権国アメリカを動かす政治家と知識人たち 副島隆彦著 講談社α文庫 p.114)

という訳である。
モーゲンソーのこの理論は「超大国均衡理論」と呼ばれている。
この「超大国均衡理論」とは、単純に言えば“列強政治(Powers politics)が超大国アメリカ・ソビエトに2極化した版”と言い換える事ができる。
それでは、この列強政治(Powers politics)とは何なんだろう?
整理していくことにする。
国際政治の世界において、全ての国々は、列強(Powers)とそれ以外の国に二分法的に分類される。
つまり、超大国アメリカ・ソビエトとそれ以外の普通の国・小国に分類される。
それではこの列強(Powers)の政治の特徴とは何なのか?

① 国際政治に発言力を有するのは、列強(Powers)に限られ、それ以外の国が口を挟む余地は無い。
列強(Powers)は合従連衡を繰り返すが一度、列強(Powers)の意志が一致すれば、すべての国がこれに従わなければならない。
② 列強政治(Powers politics)とは、列強(Powers)が相互に連関しあう(interdependent)政治という事である。列強諸国(Powers)はお互いに他の全ての諸国と連関しあっている。それゆえ一国だけが勝手に動くということはできない相談なのである。
(社会主義大国日本の崩壊 小室直樹著 青春出版社 p.7)
(世紀末戦争の構造 小室直樹著 徳間文庫教養シリーズ p.133)

以上の2点つまり、列強政治(Powers Politics)とは列強(Powers)のみの意志によって国際政治が動かされる。
しかし、だからと言って列強(Power)一国の自由意志によって勝手に動くことはできない。
何故なら、列強(Powers)の間には相互連関関係があるからである。

この国際政治における、列強政治(Powers politics)と普通の国・小国の関係はデュルケムの言うところの「社会的事実」と「個人の行動」の関係と同型である。
またマルクスの言うところの「自然発生的分業」と「生産活動を行う生きた緒個人」との関係と同型である。
つまり「疎外」である。
それではこの「社会的事実」と「疎外」について順次説明していく事にする。
まず、「社会的事実」とは何なのか?
これについて2つの特徴が挙げられる。

①「社会的事実」とは個人の外にあって、個人がどうしようもないもの。個人にとって所与のもの。
「社会的事実」の例としては、未開社会(あるいは前近代社会)における慣習。
かかる社会における個人とは、慣習とは、当然そこにある所与のものとしかみてません。個人の力で慣習を動かすなんて考えてもみないでしょう。個人の行動で動かす事はできません。
②「社会的事実」によって、個人の行動が決定される。「社会的事実」が変われば(違えば)、個人の行動も変わる(違う)。
(国民のための戦争と平和の法 小室直樹・色摩力夫著 総合法令 p.221)

つまり、未開社会(あるいは前近代社会)の例では、慣習はそこに存在する所与の条件であり、それによって個人は行動を規定されているのである。

次にマルクスの言うところの「疎外」とは何か?について説明していく事にする。
この「疎外」いう現象は、自然発生的分業において起きている。
ではこの「自然発生的分業」とは何か?

自然発生的分業とは、その分業と共働の仕方が計画的でなく、偶然的なこととして行われるという事を意味している。
つまり、それぞれの人間緒個人が特定の生産部門ないし職業部門に携わる場合に、なんらか社会全体として計画がありそれによって、意識的にそれぞれの部門に割り当てられるというのではなくて、ただ偶然的に、いわば与えられたものとして受け入れるというような仕方で、その分業関係の中に入り込み、そしてその上で、こんどはそれを推進していくことになるようなそういう社会的分業。
(社会科学の方法 大塚久雄著 岩波新書 p.13)

このような自然発生的分業関係において、生産に携わる生きた緒個人は「疎外」されている。
ではこの「疎外」は自然発生的分業関係の中でどのような状態の事を指しているのか?

ほんらい、人間緒個人の力の総和にほかならない社会の生産力が、そしてその成果たる生産物が、人間自身からまるで独立してしまって、その全体を見渡すことができず、また人間の力ではすぐさまどうすることもできないような動き、そういう客観的な過程と化してしまう。
つまり、経済現象というものは、ほんらいは人間緒個人の営みであり、その成果であるにもかかわらずそれが人間緒個人に対立し、自然と同じように、それ自体頑強に貫徹する法則性をそなえた客観的な運動として現れてくる。
(社会科学の方法 大塚久雄著 岩波新書 p.15)

これらの「国際政治」「社会的事実」「疎外」を整理すると、以下のようになる。

———国際政治—デュルケム—マルクス
全体—列強政治—社会的事実—自然発生的分業
部分—普通の国—個人の行動—生きた緒個人
小国

つまり、これらの関係は部分は各々相互依存している。
しかし部分の行動は、全体を所与として受入れ、全体によって決定される。
という事である。

(佐藤裕一による転載貼り付け終わり)

 

(佐藤裕一による転載貼り付け始め)

投稿時間:2000/06/22(Thu) 23:05
投稿者名:荒木章文
タイトル:仮面を被った帝国主義-1

仮面を被った帝国主義
SNSI研究員
荒木 章文

レーニンの帝国主義論、旧ソビエトが崩壊以後これ程読まれなくなったものもないだろう。
古本屋に行けば二束三文の値段で平詰みされている。
しかし、この論理は正に現代の世界を表現しているのではないか?
私は特に、思想的に共産主義に近い訳ではない。むしろ最も遠いところに位置する。
ここで何故「レーニンの帝国主義論」なのか?という疑問が湧いてくる。
それは以下に述べていくことになるのだが、この理論が現実の世界を説明するのにちょうど適当であるからである。
ではこの「レーニンの帝国主義論」の要旨を以下に引用していくことにする。
と言っても、そのままの引用ではない、小室直樹博士の要約による。

資本主義最後の発展段階たる帝国主義においては、金融資本の独裁が成立する。国家の意思決定も金融資本の意のままだ。最後の発展段階にいたるほど成熟しきった、資本主義諸国においては、資本蓄積は膨大となり、利潤率(利益率)は低下する。これ、先進資本主義諸国共通の現象である。
他方、後進諸国においては、まだ資本蓄積は乏しく、まだ利潤立(利益率)は高い。先進資本主義諸国の資本は、ここに目をつける。高利潤を求めて資本は、後進国へと出かけていく。先進国(帝国主義国)から後進国へ資本は輸出される。
ところで後進国の治安は乱れやすく、企業活動の安全は保障されにくい。これは困るから、帝国主義国は後進国を征服して植民地とし、自分の武力をもって治安を維持し、企業活動の安全を保障し、もって高利潤を享受しようとする。
これ新帝国主義時代における植民地の効用である。
帝国主義諸国の植民地獲得の動機は、いまや経済的なものとなった。植民地へ資本を輸出して高利潤を稼ぎまくるというのだ。
(国民のための経済原論 Ⅱアメリカ併合編 小室直樹著 光文社 P.85)

さてここで上記のテキストを元に、考えていくことにする。
帝国主義の言葉をグローバリズム、つまり「帝国主義者=グローバリスト」と置き換えてみる。
さらに
1.「先進国(帝国主義国)=世界覇権国」
2.「後進国(植民地)=属国」
と置き換えてみる。
するとこの構図は正に副島氏の主張する、現代の世界の構図と同型であることがわかる。
ただ現代は、high politics(軍事力)を前面にしていた時代からlow politics(経済力)に重点をおいた時代に変わっている。ということに過ぎない。
しかし、それでも最終的にそのlow politics(経済力)を担保する力はhigh politics(軍事力)であるのが現実の世界なのである。
小室直樹博士の「仮面を被った共産主義=日本」のならいで言えば
「仮面を被った帝国主義」の世界が現実の世界なのである。
以前として仮面をかぶった帝国主義時代は終わりを告げていないのである。
しかしここで一つ注意しなければならないのは、「先進国から後進国へ資本は輸出される。」という記述である。
これについては、一般的にはそう言えるがここを
1.「先進国=アメリカ(覇権国)」
2.「後進国=日本(属国)」
の場合を考えると多少事情が変わってくる。
何故なら、日本という国家はアメリカ国債(資本)を大量に買わされているからである。
日本が先進国であるが故に、資本を後進国であるアメリカに輸出しているのではない。
日本は属国であるが故に、政治的に金融政策をコントロールされてアメリカと日本の間に4%のカントリーリスクを超える金利が設定されている訳である。
(これについては、日本の危機の本質 副島隆彦著 講談社 p.117に詳しく説明されている)

ともかく以前として世界は「仮面を被った帝国主義」の世界なのである。
さて、それでは「国家の意思決定も金融資本の意のままだ。」という部分については現実の世界はどういう構造になっているのだろうか?
アメリカの政党特に民主党についての副島氏は以下のように説明している。

アメリカの民主党は労働者や貧しい人々の支持する政党である。ところが事実を見極めてゆくと、民主党の政治家達に影響を与え選挙資金を提供しているのはロックフェラー財閥を中心にしたニューヨークのユダヤ系の財界人たちである。民主党という大政党が、労働者から集めた献金で成り立っている訳ではない。ニューヨークの財界人たちは決して共和党員ではなく、むしろ民主党員なのだ。
(世界覇権国アメリカを動かす政治家と知識人たち 副島隆彦著 講談社α文庫 p.269)

民主党系の政財界人は世界各国に金融資産を持っている。この勢力の人々が多国籍企業(マルチ・ナショナルズ)として国際的なビジネスを行い、世界に分散して保有している自分達の金融資産と、石油やウラニウムやその他の鉱物資源の利権を守ためにこそ、アメリカの軍隊を外国に駐留させ、いざというときに使うのである。この立場をグローバリズム(globalism)と言い、こういう考え方を持つ人々をグローバリストというのだ。
(逆襲する「日本経済」 副島隆彦著 祥伝社 P.223)

つまり話しとしては、資産を持っている財閥にとって、資産を一個所に持っていることは危険である。
そこで危険の分散の発想から、世界各地に自分の資産を分散させている。
またもう一つの発想つまり、利潤率低下の発想から世界各地に自分の資産を分散させている。
この世界各地に分散させた、自分の資産を守らなければならない。
その為には、何らかの担保が必要である。
それが、アメリカの軍事力である。

このことに関して「アメリカの経済支配者たち 」集英社新書の中で広瀬隆氏は具体的に記述している。
ロックフェラー家はどういう形で今日の資産を形成してきたのか?
1. スタンダード石油財閥としての資産形成
2. シティバンクとチェースマンハッタン銀行をスタンダード・バンクとする金融事業による資産形成
があげられる。

ここで予め断っておかなければならない事がある。
私は「ユダヤ陰謀論」(コンスピラシー・シオリー)をここで展開するものではない。
という事である。これは副島氏も名言しているように、ユダヤ人の陰謀というものは存在しない。
何故なら、彼らの内部での対立が存在しているようであるから。である。
私の理解では、遺産相続人(財閥・富豪)による金融・産業界の支配しようという圧力が存在する。
それが、「アメリカを中心としたグローバリズム」なのか「ヨーロッパを中心としたグローバリズム」なのかの違いに過ぎない
そしてその遺産相続人(財閥・富豪)が結果としてみた時「ユダヤ人」と呼ばれる人々であったという事である。
つまり、「世界を支配・管理・統制しよう」という行動様式は、ユダヤ人だからとる行動様式なのではない。
という事である。
これを動かすのは、資産を形成し維持していく「遺産相続人」としての行動様式なのである。
そしてたまたま、その遺産相続人がユダヤ人であった。

それでは具体的に、金融資産を持つグループがアメリカの政治とどのように関係しているのか?の記述を広瀬氏の記述から引用することとする。

スタンダード石油が生み出した富は、ロックフェラー一族の資産だけではなかった。
ロックフェラーと手を組んだスタンダード石油幹部の内、ヘンリー・ペインは1880年と84年に民主党大統領選に出馬し、息子オリヴァー・ペインはスタンダード石油トラストを動かす本部で監査役となったあと、ニューヨークで利権を拡張し、もう一つの巨大トラストであるアメリカン・タバコの独占利権者10人のうちに数えられた。
(アメリカの経済支配者たち 広瀬隆著 集英社新書 p.93)

次男のネルソン・ロックフェラーだけは、ロックフェラー家のなかにあってなぜか長年、共和党員だった。ネルソンは戦後、長いことニューヨーク州知事をつとめた後、74年にニクソン失脚の跡を継いだフォード政権の副大統領となった。
(世界覇権国アメリカを動かす政治家と知識人たち 副島隆彦著 講談社α文庫 p.258)

スタンダード石油創業時代からの幹部チャールズ・プラットの孫娘は、モービル重役となったクリスチャン・ハーターと結婚し、ハーターが1959年から61年まで共和党のアイゼンハワー政権の国務長官となって米ソ冷戦時代に全世界の外交を動かした。
(アメリカの経済支配者たち 広瀬隆著 集英社新書 p.94)

初代D・ロックフェラーの孫ネルソン・ロックフェラーが共和党のフォード政権で副大統領となり、
その弟ウィンスロップJrが99年現在アーカンソー州副知事となっている。
この州のロックフェラー家は共和党員だが、一方で、ネルソンの弟デヴィト・ロクフェラーが資金を提供する民主党では、ビル・クリントンをアーカンソー州知事としてから、ホワイト・ハウスに送り込み、
ウエスト・ヴァージニヤ州知事となったジョン・D・ロックフェラー4世は、民主党のカーター大統領の時代に、ホワイト・ハウスで数々の委員甲会を主宰した。
(アメリカの経済支配者たち 広瀬隆著 集英社新書 p.94)

こうした両政党にまたがる政治活動は、ロックフェラー・ファミリーと呼ばれる人脈において枚挙にいとまがない。
とりわけスタンダード石油カリフォルニヤ(現シェヴロン)重役のカーラ・ヒルズが、ブッシュ政権時代に日本経済界に不当な圧力をかけた通商代表であった。
ブッシュ本人は、テキサス州でロックフェラー財閥に利権を売っていた石油採掘業者であり、
ネルソン・ロックフェラー副大統領によって中央情報局(CIA)長官から大統領に栄進したからである。
レーガン政権の大統領顧問をつとめたエドウィン・ミーズと労働長官ウイリアム・ブロックもエクソンの大株主であった。
(アメリカの経済支配者たち 広瀬隆著 集英社新書 p.94)

今回は特に、ロックフェラー財閥という遺産相続人に焦点を絞って事例を挙げてきた。
そしてここにおいてもう一つ大切な観点がある。
それは、「CIA」と「シンクタンク」と「遺産相続人」の関係である。
また、「財務長官」と「投資銀行」と「遺産相続人」の関係である。
これを、広瀬氏は「アメリカの経済支配者たち」の中でこう述べている。

日本の金融界は、アメリカに動かされてきた。
…中略…
大きな力を持つ集団として、“7つのメカニズム”があることを確認できる。
第一は、…
…中略…
第三は、「CIAの経済戦略」である。
アメリカの国家的金融作業は、情報機関がホワイト・ハウスに報告する世界的メカニズムの分析に基づいて実施に移される。
重要な戦略は、通例、軍事シンクタンクによって青写真が描かれる。
(アメリカの経済支配者たち 広瀬隆著 集英社新書 p.15)

どうやら、アメリカという国家においては民主党・共和党という政治勢力として考えるよりもその他の力が働いていると考える方が現実に近いと思われる。
まず、構造図として階層構造を次のように考えると説明がつきやすい。
一番下の根本を押さえているのが、遺産相続人たちである。
その上に、軍事シンクタンク他シンクタンク群が存在する。この階層におそらく投資銀行も位置するのだろう。
その上にCIAやペンタゴンが存在する。
その上に民主党・共和党という政党が存在する。政府ホワイトハウスが存在する。
上部構造は下部構造に支配されている。
従って、アメリカにおける最も影響力がある存在は、アメリカ大統領ではない。
という結論になるのである。
ここからは、私の理解した整理にしかすぎないのであるが次のように考えられる。
遺産相続人たちの行動様式は、資産を減らすことなく増やし続けなければならない。
この命題が一番の要請である。
そこにシンクタンクという存在が必要になってくる。
これらは、世界における彼らの資産を守ることと増やす為の世界戦略を立案する。機能をもつ。
それはhigh politics(軍事)とlow politics(経済)の総合的な戦略立案である。
それを実際に実施するのが「CIA」であり「ペンタゴン」である。
ここで疑問に考えられるのが、「投資銀行」と「シンクタンク」と「CIA」の関係である。
単純に考えるなら、
1. CIAが情報収集・分析(公機関)
2. 投資銀行がlow politics(経済)の分野を担当(私企業)
3. シンクタンクがhigh politics(軍事)の分野を担当(私企業)
という機能分担であれば、仮説としてはかなりすっきりする。
ここのところを解明していきたいのであるが、どうも広瀬氏の著作全体の文章構成からして解読しにくいものになっている。
(ここらへんの分析については稿を改めて、整理していきたい。)

ここでアメリカ政府の東アジアにおける管理戦略をもとに、政府とシンクタンクの関係性を考えてきたい。
「日本の秘密」の中でこう記述されている。

アメリカ国務省内の東アジア地域担当の国務次官補(アシスタント・セクレタリー・オブ・ステート)は、現在ウィストン・ロードWinston Rhodeです。…
この国務省の高官である次官補は、世界の各地域ごとに分担されています。全部で10人おり、10番目が東アジア担当です。つまり、クリストファー国務長官(ステート・セクレタリー)の下に、次官補が10人いてそれぞれ欧州とか南米とかを、自分の管理地域として、上から監視し、その地域全体の問題にはりついているわけです。
この次官補が、アメリカ政府の政策立案・実行上の、実質的な最高責任者です。…
…もう1人、安全保障(軍事)問題担当官が各地域ごとにいます。それは国防総省(ペンタゴン)の国防次官補という役職で、現在の東アジア(極東)地域担当は、カート・キャンベルKart Cambellです。この2人が中国を含めた極東全域を、アメリカの世界支配力を背景にして管理しているのです。
(日本の秘密 副島隆彦著 弓立社 p.130・131)

つまり、極東におけるアメリカ管理戦略を考える上で押さえなければならない存在が2人いる。
① 国務省内の東アジア地域担当の国務次官補(ウィストン・ロードWinston Rhode)
② 国防総省内の東アジア地域担当の国防次官補(カート・キャンベルKart Cambell)
である。
この2人が中国を含めた極東全域を、アメリカの世界支配力を背景にして管理している。
それでは、この東アジア担当官とシンクタンクとの関係はどんな関係なのでしょうか?
具体的に、1994年10月の北朝鮮の核疑惑問題から解明される。

まず、90年ごろから、バリバリの、ネオ・コン=グローバリストである、ウィリアム・ティラーCSIS(戦略国際問題研究所)副所長が、度々、北朝鮮を訪ねて、向こうの高官たちを説得しています。「アメリカの言うことを聞けば、経済援助を行うからそのかわり核開発をやめなさい。世界の孤児になるのはやめるべきだ」という具合です。北朝鮮としては旧ソ連や中国からの援助が途絶えはじめ、困り果てていたところですから、徐々にアメリカの懐柔策に乗るようになりました。CSISというのはワシントンのシンクタンクの中の最大手のひとつで、軍事・外交・戦略問題に関して具体的な政策提言できる戦略学者をたくさんそろえている研究所です。
もう1人セリッグ・ハリソンというカーネギー財団(Carnegie Endowment)の東アジア専門家の主任研究員がいます。カーネギー財団とはいうものの、ここも大手のシンクタンクです。このセリッグ・ハリソンがニューヨークの国連本部に来ている北朝鮮の外交官に接近して、仲良くなり、しばしば北朝鮮を訪れては、「自分はジャーナリストだから、中立の立場だ」というような、ソフトなハト派の立場から「世界を敵にまわして孤立するな」と説得を重ねました。ウィリアム・ティラーにしろ、セリッグ・ハリソンにしろ、本当はもっと裏のある人間たちで、本当はCIAの情報将校(インテリジャンス・オフィサー)の高官なのです。ただのシンクタンクの研究員なのではありません。
この2人の情報将校からの情報や、その他の北朝鮮専門の戦略学者たちの研究論文の形で提言を受けて、先のウィンストン・ロード国務次官補が、最も優れた意見を国務省(日本の外務省にあたる)の政策として採用し、やがてこれが「米朝合意」に結実したのです。

ここまでのところから推測すると、先程の仮説の修正をしなければならない。
1. CIAが情報収集・分析(公機関)
2. 投資銀行がlow politics(経済)の分野を担当(私企業)
3. シンクタンクがhigh politics(軍事)の分野を担当(私企業)
と暫定的に仮説をたててみたが、実は1.番と3番は同じなのである。
「民間のシンクタンクの研究員」=「CIAの情報将校」なのである。
卑近な例で言えば、「遊び人の金さん」=「お奉行様」一人二役なのである。

「国務省・国防総省」と「CIA・シンクタンク」の関係ははっきりした。
それでは、政府と「投資銀行」がどういう関係になるのだろうか?
もっとも象徴的な人物は、ロバート・ルービン元財務長官だろう。
彼は、ゴールドマン・サックスのCEOからクリントン政権下で財務長官になった人物である。
財務省(政府)とウォール街(投資銀行)の関係を、悪の経済学から引用することにする。

財務省は、アメリカ最高の官僚組織である。いざとなったら国務省なんかより強い力を発揮する。このことは例えば、1920年代の禁酒法時代に、FBIや警察さえ手を出せなかった、シカゴ・マフィアの大ボス、アル・カポネを、1932年に脱税の罪で逮捕投獄したのが、財務省シークレット・サービスであったという有名な事実からもわかる。財務省は全米最強の官僚組織なのである。財務省シークレット・サービス(理財局)という情報組織は、CIA(米国中央情報局)や海軍情報部(シールズ)よりも格が上だとされる。
米国はこの財務省を中心に、ウォール街と連携して精密な日本分析をおこなった。そしてその膨大かつ詳細な分析データをもとに「対日金融市場開国戦略」を策定し、実行に移したのである。
(悪の経済学 副島隆彦著 祥伝社 p.128)

まず考え方として
1. high politics(軍事):シンクタンク(CIA)→国務省・国防総省
2. Low politics(経済):投資銀行(財務省シークレット・サービス)→財務省
この二つの前提には遺産相続人の存在がある。
という構図を考えることができる。

さてここで韓国の金融危機のおけるグローバリスト(帝国主義者)の行動を観察してみよう。
「日本の危機の本質」副島隆彦著からの引用である。

…その裏側の真相は、さらに驚くべきものである。どうやら、韓国への緊急金融支援というのは、アメリカのグローバリストの国際投資家たちによる、韓国の財閥系(と言っても、貧弱なものだが)大企業群の直接的な乗っ取りとセットであるらしい。
…中略…
韓国の大企業は、日本の大企業の30分の1ぐらいの値段しかない。だから現在ニューヨークの財界人たちの間を、超安値で買える韓国大企業の一覧表が出回っているという。…
アジア通貨危機の真実の一側面をここにうかがいしることができる。大きな意味では、日本の金融機関をはじめとする大企業群も狙われているのである。しかし、日本は金融大国であるから、日本の企業の値段は、アメリカのグローバリスト財界人たちにとってもあまりに高すぎる。そこで、実に巧妙に、力の衰えた大企業を倒産させて、死体処理して、人材と商権だけを超安値でかっさらう、ということを現在つづけているのである。
(日本の危機の本質 副島隆彦著 講談社 p.179・180)

アジア通貨危機というイベントをとうして、グローバリスト(帝国主義者)は韓国という国家に進出したのである。
レーニンの言うところの「先進国から後進国に資本が輸出」されたのである。
以上のことより
世界覇権国アメリカにおける、金融資本の世界支配体制のメカニズム。の解明と
その金融資本がとる行動様式、つまり「先進国から後進国に資本が輸出される」行動様式の現状を示した。

(佐藤裕一による転載貼り付け終わり)

 

(佐藤裕一による転載貼り付け始め)

投稿時間:2000/06/22(Thu) 23:00
投稿者名:荒木章文
タイトル:仮面を被った帝国主義-2

さてここでヘクシャー・オリーン・サムエルソンの定理 を紹介しよう。
この定理を何故ここに至って、突然説明するのか?

冒頭の「レーニンの帝国主義論」を、思い出して頂きたい。
何故、帝国主義者は、後進国に資本を輸出するのか?
それは、先進国においては資本蓄積が膨大となり利潤率が低下する。一方後進国においては資本蓄積が未だなされていないから高利潤率である。
従って、資本は先進国から後進国に移動するのである。
しかし、後進国においては治安が乱れやすいから、企業活動の安全を保障できない。
故に、帝国主義国は後進国を植民地化するのである。

この議論の前提にある、
先進国=利潤率低下
後進国=高利潤率
という関係性が否定されるからである。

ヘクシャー・オリーン・サムエルソンの定理は、はじめ要素価格均等化の理論として注目を惹いた。そのパンチの利き方おもわずクラクラっとくる。
要素価格均等化について、ヘクシャー・オリーン・サムエルソンの定理は、なんというか。
要素移動がなくても、商品移動が自由に行われれば、要素価格は国際間に一定する。(どこの国でも同じになる。)
ここに要素とは生産要素。生産要素としては、労働、土地、資本、が考えられる。要素価格は、賃金率、地代、利子率。ただし、「地代」とは、とくに断らなければ、単位面積あたりの地代のことを言う。
つまり貿易が行われれば、どの国の賃金率、地代、利子率も等しくなるというのである。(なお「貿易」とは、以後特に断らなければ、自由貿易を意味することにする。また、しばらく、輸送費、関税、などの緒制約は捨象、つまり無視する。)
(国民のための経済原論 Ⅱアメリカ併合編 小室直樹著 光文社 P.68-69)

このことにより、グローバリスト(帝国主義者)による、後進国経済に対する進出は自由貿易体制を保つ限り意味をなさない。
何故ならば、ヘクシャー・オリーン・サムエルソンの定理より
自由貿易が行われている限りにおいて、利潤率は国際間において一定に収束していくからである。

だからと言って管理貿易体制になった方が、有利かと言えばそうでもない。
何故なら、比較優位説によって自由貿易体制の方が利益があることは証明されているのだから。
従って、グローバリストにとって今後も自由貿易体制を続けていく方が得策なはずである。
その自由貿易体制を維持する為には、high politics(安全保障)において秩序維持を図らなければならない。
何故なら、例えば国際石油資本のタンカーが海賊に襲われたとしたら、まともな企業活動が即できなくなってしまうからである。
その一方、low politics(経済)においては「世界を管理・支配する」のではなくて、自由貿易経済を推進していくことが得策のはずである。
何故なら、それは上述したように比較優位説によって証明されているのだから。

但し、植民地(属国)を獲得しにいく経済的動機はなくなっていく。
何故なら、利潤率が一定に収束していくのだから。
しかし、自由貿易体制を保つ為には、high politics(安全保障)のコストを負担しなければならない。
この植民地(属国)における高利潤率の利潤率低下とhigh politics(安全保障)のコストの損益分岐点がマイナスになった時グローバリストはどういう行動をとるのだろうか?
また、産軍複合体(死の商人)が現れて利益を上げていくのだろうか?

(佐藤裕一による転載貼り付け終わり)

 

(佐藤裕一による転載貼り付け始め)

投稿時間:2000/07/25(Tue) 00:29
投稿者名:荒木章文
タイトル:-R&Bとゴスペル-

-R&Bとゴスペル-

SNSI研究員
荒木章文

R&Bやゴスペルという音楽に限らず、音楽は人其々に、其々の感性で受け取られる。
それは音楽の受け取り方としては当然と言えば当然の事である。
何故なら、それは主観に関することであり、他人がとやかく言う筋合いの事ではないからである。
それでは、私は今回何を伝へようとしているのか?

それは、その音楽の背景や思想を、もうそろそろ知ってもいいのではないか?という年代層に伝えたいからである。

日本には常に海外から、文化・文明・情報が輸入されつづけられている。
そしてそれをコピーして輸出モドキまですることさえある。
しかし、ここでもう表面的にだけ受け入れるのではなくて、実感するのは難しくとも、思想や背景を理解するべき秋(とき)なのである。
そう思想的人間である私は考えている。

音楽には必ず何かしらのメッセージが含まれているはずである。それが重厚か薄っぺらいかの違いはあるものの…。
そのメッセージが生れてきた、思想的・歴史的背景を理解していく。
それが今回のレポートの核である。
そこでさしあたり「R&Bとゴスペル」について考えていきたい。
但し、はじめに断っておくが私は音楽について言えば素人である。
故にこのレポートも最初から完成されたものではない。
“完成されていくもの”と考えて頂きたい。
欧米社会における、人種差別の図式や宗教理解については、全面的に私の師である(勝手に私が思っているだけではあるが…)小室直樹・副島隆彦の著作に負っている。

まず、大まかなアメリカ社会における人種差別図式を理解しておかなければならない。
「アメリカの秘密 」副島隆彦著 メディアワークス P.257の図式を参照されたい。
このアメリカ社会の、もっと大きくは欧米社会の分裂図式から全ては始まる。
(ここからしかはじめようがないし、類似言論が出現したとしたら全てこのパクリだと判断しても間違いないそれだけの事実がここに含まれているのである。)
音楽をDJの感性で羅列して、随想風に書かれた書物は世の中に存在する。
しかしこのような欧米世界の分裂線を、明確に提示して解説した書物には出会ったことがない。
また、この欧米社会の分裂線を大枠でとらえられる知識人も日本にはそう存在しない。
仕方がないから私が、作業することにした。
また、思想特に宗教についてまで大枠で理解できている知識人となると更に少なくなる。
日本においては、私の師である小室直樹と副島隆彦だけである。

副島隆彦の著作「アメリカの秘密」メディアワークス P.258の中で彼はこう述べている。

「アメリカ社会は、①人種(民族)ethnicと、②宗教religionと、③政治思想politicsの3つの対立軸で考察されなければならない。」

この中で①の人種等の物理的条件については比較的簡単に認識できる。
しかし②宗教③政治思想については、普通の日本の知識人では歯がたたない。
小室直樹と副島隆彦の業績をもってはじめて理解できるのである。
ここから出発できるのである。
故に私のこの作業は、小室直樹・副島隆彦読者層にとっては何ら目新しい事実を与えるものではないだろう。
しかし、「R&Bやゴスペル」その他、欧米輸入音楽を楽しんでいる聴取者層の中で、ほんの少しでもその社会の背景や思想を知りたい人にとっては、驚きを与えるだろう。
何故なら、それは小室直樹や副島隆彦という日本で最も優秀な、サイエンティストがつきつける事実だからである。
2000年7月24日(月)つづく

(佐藤裕一による転載貼り付け終わり)

 

(佐藤裕一による転載貼り付け始め)

投稿時間:2000/08/18(Fri) 16:29
投稿者名:管理人
タイトル:「アメリカの秘密」からの抜粋

この本は、今の時代には珍しく極端に政治的な本である。
『地獄の黙示録』や『ゴットファーザー』、あるいはクリント・イーストウッド、オリバー・ストーン、スパイク・リーなどの監督作品は、ハリウッドで制作された商業映画でありながら、アメリカ知識人の文脈では「政治映画」というジャンルに分類される。本書はこれらの優れた政治映画映画を導きの糸として、そこから、欧米の白人社会内を分断するカトリック対プロテスタントの激しい対立や、リベラル対保守という政治的対立のほんとうの意味を、明らかにしていく。なぜなら、そこにアメリカ社会を理解するための確信があるからだ。
同時に、欧米の白人社会の間にプロテスタントとカトリックという深い対立と差別の構造があることが本書によってはじめて明らかにされる。こんなことは欧米の知識人の間では常識なのだが、彼らは絶対にそのことを口にしないから、日本人はこれまで誰もはっきりと理解できなかったのだ。
『アメリカの秘密』2~3ページより抜粋

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一九八四年にスピルバーグは、『グレムリン』Gremlinsという映画をプロデュースしている。珍獣「モグワイ」が、凶暴なグレムリンに変身して暴れ出す映画である。
 グレムリンとは、飛行機や自動車の中に隠れ住んでいて突発的事故を起こさせる小悪魔のことで、アメリカ社会が生んだ幻想小動物である。実は、このアメリカの企業の建物の中で暴れ出す可愛らしいペット怪獣モグワイとは、日本人のことである。日本からアメリカに押し寄せてきてアメリカの企業社会の秩序を乱す、訳の分からない言葉を喋る日本人ビジネスマン(企業戦士)たちのことなのである。この映画は、「日本人というのは、大人しく飼いならしているときは、まじめによく働いて飼い主アメリカの役に立つのだが、もしうっかり飼育条件に反することをやると、突如暴れ出す。気を付けろ」という教訓話である。

「アメリカの秘密」75ページより抜粋

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映画『猿の惑星』は、日本文化論として重要である。一言で言えば、日本国あるいは日本社会こそが、この映画で描かれた「猿の惑星」そのものではないか、というのが私の理解である。
「日本は猿の惑星である」と私が書いて、それに反感を覚えない日本人はいないだろう。ほとんどの日本人は、自分たちが欧米社会と肩を並べている立派な先進国に暮らしていると思い込んでいる。しかし、彼ら欧米近代社会の方はちっともそんなことは思っていない。それは、向こうで暮らしてしばらく生活すれば分かることだ。技術の類は、今やおそらく日本の方が上かもしれない。工業製品においてはすべてを欧米から泥棒して、さらにそれを改良して最良の製品にしたからである。しかし、それだけのことである。日本は近代でもなければ民主政体でもない。「猿の惑星」である。

「アメリカの秘密」123,125ページから抜粋

(以上は、廣瀬哲雄氏に抜粋して頂いたものです)

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(佐藤裕一による転載貼り付け終わり)