ルース・ベネディクトが来日したことはあるか
会員番号4655の佐藤裕一です。
副島隆彦の論文教室において、鴨川光氏が発表している「サイエンス=学問体系の全体像」と題する一連の投稿論文は、およそ無料公開のWEB掲載文章とは思えない質の、水準の高さを示し続けている。
題名の通り学問体系の全体像を大きく把握してみせようという試みであるが、近代学問に至るまでの歴史的経緯、各時代各分野における先駆的開拓学者達の業績と思想をも詳述している。
であるから、ただの年表の羅列などではなく、捉えるべき重要箇所は細部にわたり説明しているし、さほど重要ではないと判断する部分についてはザッと流したり、飛ばしている(と思う)。冗長かつ散漫な文章に陥らない所を私は見習いたい。常日頃から反省せねばならないと自覚しているのだが、なかなか習慣が改まらない……。
それで私は、鴨川氏の文章が掲載される度に拝読しているのだが、最新の論文は社会学問の分野の1つである文化人類学の解説に入っているので、勉強させて頂いている。
但し、一点気になった。現時点での最新論文「0101」の最後の部分、文化人類学者のルース・ベネディクトについて、日本に滞在し生活したとあるが、彼女は生涯を通して、日本の土を踏んだことはついに無かったと聞いている。
私が読んだ文庫版の『菊と刀』(ルース・ベネディクト著、長谷川松治訳、講談社学術文庫)における解説者の川島武宜がそのような前提の認識で書いており、それを覆す話は今までに聞いたことがない。
太平洋戦争当時、対日情報分析・攻略のための、実質上の国家戦略学者として起用され、米政府及び軍諜報機関に協力したであろうルース・ベネディクトによる、すさまじいまでの本質を見抜く洞察力によって日本人は何もかも透視され、真っ裸にされたことを先生も著書で書いている。
考え方の傾向、性質、一定の条件を与えた際の意識変化過程に至るまで、全て見透かされてしまった。無意識の底まで、全て一切合財、見抜かれてしまった。あの日本文化論が、日系移民と日本人捕虜を取り調べただけで、全て書き上げられたのだという事実が恐ろしい。
もし彼女が日本に来日してじっくり研究して生活を共にすごし、日本人の生態観察を実地で行っていたという事実が新たに判明すれば、私はかえってホっとするだろう。
副島隆彦の論文教室
http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/
副島隆彦の論文教室「0101」 論文 サイエンス=学問体系の全体像(21) 鴨川光筆 2010年9月13日
http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/files/ronbun105.html
ルース・ベネディクト – wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/ルース・ベネディクト