「来年度概算要求基準  家計重視はどこへ行った?! こんなやり方に展望はない」

投稿日:2010/07/27 06:42

「プロメテウスの政治経済コラム」から貼り付けます。

(転載貼り付け開始)

2010-07-26 18:54:51
「来年度概算要求基準  家計重視はどこへ行った?! こんなやり方に展望はない」

政府は26日午前、予算編成に関する閣僚委員会を開き、仙谷由人官房長官や野田佳彦財務相らが策定した11年度予算の概算要求基準の原案を了承した。政府が検討していた原案は、国債費などを除く歳出を10年度と同一水準の71兆円以下に抑制。各閣僚に対して、社会保障費や地方交付税交付金などを除く経費約24兆円の一律10%削減を要求する。削減した額の範囲内で、成長戦略やマニフェスト関連の事業を、要求とは別の「要望」として上乗せして要求できるとした。
こんなやり方は帳尻合わせにすぎず、数字合わせで国民の暮らしを犠牲にしてきた自民党政権のやり方と違いがない。暮らしと経済をどう立て直し、その中でどう財政を運営していくのか、まともな方針もなく一律に削減するというのでは“政治主導”が泣く。
平成22年度の年次経済財政報告(経済財政白書)も指摘するように、日本は、主要先進国で唯一のデフレに陥った国であり、その背景には、慢性的な需要不足がある。これだけゼロ金利を続けて資金供給の蛇口を開けてもインフレにならない異常事態である。大企業の蓄積優先で家計を痛めつける従来の財界本位路線には展望がない。

参院選挙で菅直人首相は財界要求と軌を一にした「強い経済・強い財政・強い社会保障」を掲げ、「消費税10%への増税」を公約した(菅氏は、消費税増税について“自民党と一緒の主張をすれば争点から消える。だから、消費税のことを言っても大丈夫だ”と考えていたらしい―鳩山氏が25日放送のBS11番組で暴露した)。ところが、この発言が災いし、民主党は大敗した。菅政権の求心力が弱まるなか、民主党は、政府に対し苦肉の策として、「概算要求組み替え基準に関する民主党提言」を提出した。
「提言」は2011年度の概算要求基準について、国債費の償還を除く歳出の大枠を今年度並の71兆円とする一方、「マニフェストの実施」「デフレ脱却・経済成長に特に資する事業等」などのためとして、2兆円程度を目標とする「元気な日本を復活させる特別枠」の創設を求めた。歳出の大枠(71兆円)の範囲内で「特別枠」を設け、“メリハリ”をつけて、来年春のいっせい地方選も控え、11年度予算に対する党内の各方面からの歳出圧力に対応しようというアイデアだろうが、早くも矛盾が噴出している(「しんぶん赤旗」2010年7月26日)。
仙谷官房長官と野田財務相、民主党の玄葉政調会長が25日夜、概算要求基準について協議。民主党政策調査会の提言した2兆円規模の「元気な日本復活特別枠」を創設することでは一致したものの、「2兆円」の金額は明記しないことを決めた。各省が特別枠を当てにして歳出削減努力が鈍るとして財務省が抵抗、削減額が増えなければ特別枠が確保できない仕組みにするため「1兆円を超える」などのアイマイ表現へ手直した(「毎日」7月26日2時30分配信)。

菅・民主党の予算編成の根本的な矛盾は、いまや日本の財政事情を考えたとき、軍事費や大企業減税などの聖域をそのままにしては、国民生活を重視した現実的な予算編成は不可能だということである。
無駄を削減していけば、それだけで17兆円もの財源を生み出せるとしてきた同党の「財源論」(鳩山マニフェスト)の破たんは明白となったが、菅政権のもとで「復活」した党の政策調査会では、財源論の欠陥を検証する論議さえ始めていないのだ。
特別枠の使途として、「新成長戦略」や「マニフェスト」施策に重点的に配分するというが、民主党には、そもそも現在有効なマニフェストは何なのかが不明確という深い混迷がある。しかも何を削減して財源を捻出するかも、規模も、党内で明確になっていない。
<ある民主党議員は、「鳩山マニフェストの基本コンセプトは家計の応援であり、『可処分所得』を増やすことだった。それが菅マニフェストでは影を潜め、かわりに日本経団連ばりの成長戦略が入った」と述べます。今回の「提言」でも「経済成長」を重視する文言が挿入されています。>(「しんぶん赤旗」 同上)。

財源論の欠陥を消費税増税で埋め合わせるのは、最悪の選択である。
しかし、消費税10%を掲げた民主党に審判がくだったとはいっても、国会内は、消費税増税勢力が圧倒的多数派である。日本経団連は、夏季フォーラムを前に発表した「『新成長戦略』の早期実行を求める」という提言で、「民主導の持続的な経済成長の実現」の名のもとに、法人税負担の軽減や労働市場の流動性の拡大、温室ガス削減目標の緩和など、従来要求を並べた。経済同友会の夏季セミナーで採択された「軽井沢アピール」は、参院選挙の結果生まれた「ねじれ」国会のもとでも国政を停滞させてはならないとし、「規制改革」の推進や法人税負担の引き下げ、消費税増税(直間比率の見直し)を含む「歳出・歳入一体改革」の断行などを迫っている。

家計と財界の言い分のどちらを重視するか。
慢性的な需要不足で主要先進国で唯一のデフレに陥った国―日本がデフレから脱却し、庶民の暮らしと経済を立て直しながら財政を改善していくためには、軍事費や大型公共事業の無駄遣いを改めると同時に、大企業・大資産家への行き過ぎた減税を是正することが必要だ。今回の経済危機まで数年にわたり、過去最高益を更新し続けた大企業には、229兆円に上る内部蓄積がある。大企業、大資産家に応分の負担を求めても、彼らがすぐに困ることはない。

(転載貼り付け終了)