もう一つ、オックスフォード英語辞典に載っている、mind の英語の定義、definitionは,thinking ability の 他に、 'state of consciousness' 「スイテト・オブ・コンシャスネス」 と言いまして、「意識の状態」と訳します。これが思考というものの、英語の言葉による定義です。このことを、これ以上、言い出すと切りがない。私は、かつて何度も、このことを主張した。 だから、in my mind を、✕「私の心の中では」とやって、これで、通用するものだから、日本人は、アジア土人のままだ。正しくは、◯「私の考え)(思考)では」あるいは、「私の知能では」と言いかえなければいけない。ようやく、この段階に来た。私が、日本は土人だと私が言うことの症例、病気、現象 の一部だ。
この mind 、brain 頭脳、知能問題はもう、これ以上やりません。 H・G・ウエルズという人は、1866年生まれだ。1946年に、第2次世界大戦が終わった次の年に、80歳で死んでいる。この人は極めて、早熟な人で、25歳から小説を書き始めた。
それから『透明人間」”Invisible Man ”というのを次の年には書いて、それから『宇宙戦争』と日本語では訳されますが、これも書いた。それから、『月世界旅行』というのもさらに書いて、1895年から1901年までの6年間で、彼の主要な作品がこの時期に、出てしまっている。32歳までにですね。その後もずっと書き続けて、大変な影響力を、まずイギリスで持った。それからドイツ語やフランス語にも翻訳された。
フランス人で、ジュール・ヴェルヌ(Jules Verne、1828-1905年、77歳で死)という人が、SFの最初、『海底二万里[マイル]”Vingt Mille Lieues sous les mers”(1870年)とか、『八十日間世界一周」”Le tour du monde en quatre-vingt jours ”(1873年)、『彗星飛行」”Hector Servadac ”(1877年)も書きました。この人の話は今日はしません。ジュール・ヴェルヌは、コナン・ドイル(Conan Doyle、1859-1930年、71歳で死)なんかとほぼ、一緒かな。H・G・ウエルズより30年ぐらい早い人です。もう彼らのことはいいです。 ジュール・ヴェルヌ 海底二万里(上) (新潮文庫)
もうちょっと後になると、40年代から50年代のころ、WWⅡ の戦争中ですが、原爆を作って、投下する話みたいなものまで出てきた。「アトミック・ボム」atomic bomb、原子爆弾(やがて、核兵器、ニュークレア・ウエポンに呼び名が、変った)の話まで、彼が、作っている。恐るべき天才です。 あるいは、鉄鋼船というか、鉄で甲板や船を覆った船は、1890年ぐらいにはもう既にあったんですが、それが陸上でも動き出すという考え方で、タンク、戦車という考え方も、H. G. ウエルズが、出しているんですね。飛行機で空から爆弾をどんどん落とす戦争が起きるとか、予言者としての能力がすごかった。いろんなことを彼は書いています。
そしてウエルズは、晩年の、72歳のときに「ワールド・ブレイン(世界頭脳)」というのを講演して、それが本になった。同時に、世界政府(ワールド・ガヴァメント、 World Government )をつくれ、あるいは、ニュー・ワールド・オーダー(New World Order)といいまして、新(しん)世界秩序 をつくれ、戦争がない世界をつくれ、という考え方も、H・G・ウエルズが初めて出したんです。
やがて、第1次世界大戦(1914-1918)の後、ヨーロッパの主要都市が、爆弾で燃えてしまうような激しい戦争になったんですが、翌年の1919年に、国際連盟と日本語ではいいますが、The League of Nations「ザ・リーグ・オブ・ネイションズ」ができた。このアイデアを出したのもH・G・ウエルズです。彼が1人で何でもやったとは言いませんが、とにかくものすごく先見の明のある人で、すごい量のアイデアを出した。驚くべき天才です。
『月世界旅行』というけども、”The First Men in the Moon ”「月に最初に降り立った人間たち)」というタイトルですね。1901年、35歳のときにこれも書いています。これが、のちのいわゆるアメリカのアポロ計画で、1969年7月22日に、アポロのアメリカの2人の飛行士が月面に降り立ったという話です。これはウソです。そんなことは、人類は、まだ出来ない。このアポロ計画自体のアイデアも最初に出したのは、H・G・ウエルズです。
この未来社会イメージでいうと、私が尊敬して、みんなも知っているジョージ・オーウェル(George Orwell、1903年-1950年、46歳で死)の『1984年」”Nineteen Eighty-Four ”(1949年)という未来社会を描いた小説もそうですね。 もう一人オルダス・ハクスリー(Aldous Huxley、1894-1963年、69歳で死)という人がそれより10年ぐらい早くて、『すばらしい新世界」” The Brave New World ”(1932年)。それは、これまd見たこともないようなすばらしい未来世界という意味だけれども、そういう未来小説。しかし、この2作は、ディストピア(dystopia)と言いまして、「絶望の未来社会」だ、と。人類の未来社会は、人類が、大きく管理されて、表面上は自由で平等で、貧困が消えて豊かになった社会になった、というふりをした社会ができ上がる。けれども、その中は実は牢獄国家で、収容所社会で、大きな意味で階級差別があって、能力差別があって、人間は牢獄の中で生きていたという小説で、これが、今の私たちにまで伝わっているわけですね。