「バイス」というのは英語のVICE です。これは Vice President で、副大統領と言います。この「バイス」というのは、日本語では副(ふく)だけども、副島(そえじま)の副(そえ)ですが、 Vice President の時にしか使わない。他では、ほとんど使わない言葉、ということになっています。
副長官はDeputy Secretaryと言います。次官というのは、たくさんいるのですけど Under Secretary という言葉を使う。財務省の副長官は Deputy Secretary of Financeです。Secretary of Finance すなわち財務長官の下にいる役職に対しては、だいたい Deputy、Under という言葉を使います。アメリカは国王がいない国ですから、大臣(Minister)ではなく、長官(Secretary)を使います。
この「バイス」という映画は、ディック・チェイニー(Richard "Dick" Cheney、1941年―、78歳)という、息子ブッシュ(ジョージ・W・ブッシュ[George W. Bush]、1946年―、72歳、第43代大統領、在任:2001―2008年)の副大統領をした男の話です。ハゲ坊主の、まあ後ろは髪があるけど、デブっと太った男で。相当悪い人間だ、と最初から言われていました。ずっと悪役を、演じる、も何も、実行し続けた男です。
CIA に入るような、保守のアメリカの若者の頭のいいのは、イェール大学に行く、と言われています。ここに入った。ところがチェイニーは、あまりにも勉強ができなくて、退学なんです。本当に。勉強ができなすぎて、退学。お酒を飲んだくれて、やっぱりアル中なんです。飲み屋で殴り合いをしたりして、飲酒運転で逮捕、という前歴があるんです。この前歴は、あのジョージ・W・“子供”ブッシュも、全く一緒です。飲んだくれなんです。まあ、もうちょっと言うと、麻薬もやっていたんですね。
この時は、お父さんブッシュ(ジョージ・H・W・ブッシュ[George H. W. Bush]、1924-2018年、94歳で死亡、第41代米国大統領、任期:1989―1993年)の政権なんです。ガルフ・ウォー(Gulf War、湾岸戦争)と言います。ガルフ、というのはペルシャ湾のことです。パージャン・ゴー(Persian Gulf)。ガルフ(Gulf)は、ゴーという発音ですけどね。
この後、ラムズフェルドはもともと下院議員を4期やって、その後にニクソン政権入りをしているんです。ニクソンが1974年に例のウォーターゲート事件で失脚したか、騙されてハメられて失脚した後に、大統領になったジェラルド・フォード(Gerald Ford、1913―2006年、93歳で死亡)の大統領首席補佐官(Chief of Staff)になりました。
首席補佐官ラムズフェルド、フォード大統領、次席補佐官チェイニー
そこに集まってきていた補佐官クラスの連中を相手にラムズフェルドが「お前たちは誠実なクソ野郎の集まりなんだ」と怒鳴るんです。「誠実も汚いもないんだ」という大演説をやって。そうしたらこれに、チェイニー が感動しまして。「 私はこの人についていく」と言って、 ラムズフェルド大統領首席補佐官の下の大統領次席補佐官(Deputy Chief of Staff)になっているんです。それが出世コースになりました。