「1989」定例会のお知らせ。今回は国際情勢解説者の田中宇(たなかさかい)氏をゲストに迎え、学問道場一丸になって、世界の今後の行方と大きな枠組みについて解明します。2017年8月19日
 副島隆彦の学問道場の中田安彦(アルルの男・ヒロシ)です。今日は2017年8月19日です。

来る10月15日(日曜日)、JR「田町」駅が最寄り駅の
会場「日本建築学会 建築会館ホール」にて、
本年最後の「学問道場」主催定例会を行うことになりました。

以下にご案内申し上げます。
是非、ご参加下さい。

・10月15日(日曜日)「学問道場」定例会へのお申込はコチラ
http://snsi-j.jp/kouen/kouen.html

 アメリカではこの一週間、首都の隣りにあるヴァージニア州シャーロッツヴィルで起きた、極右・ネオナチ集団による集会で、これに抗議する左派との衝突が起こり、一人の女性が20歳の極右の男性に轢き殺されて、十数人の重症のけが人が出るという事件で揺れております。


マードックの「ニューヨーク・ポスト」の一面


シャーロッツヴィルの白人至上主義者の集会

 この件では初動でトランプ大統領が対応を誤って極右を批判しないで、双方の暴力を批判しただけで、記者会見を済ませてしまったので、民主党だけではなく共和党からも批判が起こりました。トランプ政権は先月末から、スパイサー報道官、プリーバス首席補佐官の更迭、その更迭を行った、元ゴールドマン・サックスのアンソニー・スカラムッチ報道官がリベラル系メディアに内幕を明かした事による10日間での更迭がありました。

 さらに、安全保障政策を巡って、プリーバスの後任に国土安全保障長官から首席補佐官に横滑りした、ジョン・ケリー、国家安全保障担当補佐官のハーバート・マクマスター、マティス国防長官、ティラーソン国務長官のグループと、それに対して、アイソレーショニストとポピュリストと反中国かつ反イスラム原理主義思想の融合体のような、スティーブ・バノン首席戦略官、スティーブン・ミラー(スピーチライター)、セバスティアン・ゴルカらのグループで安全保障政策の主導権を巡って争いが起きております。


ジョン・ケリー首席補佐官

 バノンらは反アフガン増派で、マクマスターは増派ということで、この点はバノンは評価できます。しかし。バノンは、イラクで活動した民間傭兵部隊(デヴォス教育長官の兄弟が創業者であるブラックウオーター)をアフガニスタンに投入せよという主張の持ち主で、その背景には中国にアフガニスタンの天然資源(レアメタルなど)を渡したくない、という思惑があるようです。

 しかも、反主流派はネオコンに近い勢力を抱えている。というのも、元はマイケル・フリン首席補佐官に近いゴルカに代表されるような、反イスラム・ファシズム系の人材も抱えているわけです。フリン補佐官は、ロシアゲート事件でクビになりました。ヒラリーに対する批判演説が有名ですが、思想的には反イラン、反イスラム原理主義で結構、危険な人物です。ロシア政府に接近したり、トルコ政府の代理人をしていたりもしています。それも反イスラム原理主義の思想からなのかはわかりませんが。

 数週間前から、マクマスターによって、過激な反イスラム原理主義の側近が次々と4人ほど更迭されています。これに対してオルトライト派が反発しており、「次はバノンではないか」と危機感を持っています。オルトライト派は、反ネオコンを標榜するくせに、イラン核合意は破棄せよとか言っています。イラン核合意破棄はジョン・ボルトン元国連大使などのネオコンの専売特許だったはずです。結局、反イスラム原理主義という恐怖に支配された人たちです。

 更にはスピーチライターのミラーなどは、シャーロッツヴィルでの極右集会(銅像の撤去に反対するという体裁は取っているが実質はネオナチやKKKの集会)の賛同者の一人である、オルトライト派の大物であるリチャード・スペンサーとデューク大学ラクロス部時代以来の思想的盟友で、これが移民規制政策の青写真を書いています。ミラーは元はセッションズ司法長官の部下でした。ミラーも思想的に妥協の余地がないトランプ側近です。


スティーブン・ミラーとステーヴ・バノン(右)

 トランプ政権の反エスタブリッシュメントでも、政策別には(1)経済ナショナリズムのバノン、ピーター・ナヴァロ (2)エスノ・ナショナリストで白人至上主義に近いスティーブン・ミラー (3)反イスラム原理主義のネオコン顔負けの過激派のセバスティアン・ゴルカ といった3つのグループがあります。バノンもミラーと思想を共有はしている部分はありますが、どちらかと言うと中国との経済戦争を重視しているということです。

 ただ、問題なのはFOXニュースのオーナーであるルパート・マードックがトランプに「そろそろバノンを切った方がいい」と言い始めていること。これに同調しているのは、ジャレッド・クシュナーとイヴァンカ・トランプの夫妻です。クシュナーとイヴァンカはホンモノのワルで、ホワイトハウスに残るためなら、トランプの政敵を思想に関わりなく次々と排除しています。


 それで、重要なのはウォール街やアメリカの主要企業で作る、トランプ政権への経済政策助言機関を、シャーロッツヴィルの事件のトランプ発言に対する抗議から財界人の代表格である、JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOが解体することを決めてしまったことです。

 トランプ政権は、すでにオバマケア廃止の政局で失敗しました。大統領自身の方針が「オバマケアの廃止と改案」以外には決まっていないことから、共和党の議会内部の穏健派と財政赤字削減派の対立によって、大多数が納得できる法案を出せないまま終わりました。これで大統領は上院の共和党トップであるミッチ・マコネル院内総務を批判しましたが、今回の極右事件の対応をめぐる大統領への批判もあり、議会との調整が秋以降うまくいくかは不明確です。こういう福祉政策な民主党を巻き込んでやらなければまとまるはずがないのですが、トランプが民主党への「つなぎ役」をできないこともあり、全くうまく行きませんでした。

 新しい首席補佐官のケリーは海兵隊時代に議会で働いたことがあるようですが、調整能力は未知数です。そこにきて、ウォール街のトップやアメリカの主要企業のトップがネオナチをめぐるトランプ発言での混乱から、一気に逃げ出しました。これで税制改革は腰砕け、インフラ投資は予算確保が困難になることがほぼ確実で、9月には「財政の崖」が再び起きるかもしれません。

 このように、夏に入ってトランプ政権は屋台骨が崩れ始めています。ロシアゲートについては私は楽観的に見ていましたが、あんなものは「政治的裁判」(魔女狩り、ウィッチハント)ですから、共和党財界がトランプではたまらないということになれば、次々となんでも証拠が出てくる仕組みだろうと思います。要するに、ロシアゲートの行方は、トランプの行政が支配層にとって満足なのものになるかによって簡単に左右されるわけです。ギロチンを首の上に置かれながらの大統領職ということです。昨今の発言を見ても、そういう包囲網でああいう風に狂った発言をしているのか、とも思います。

 なお、スティーブ・バノンはシャーロッツヴィル事件のあと、トランプとは複数回電話で話し、助言しているようです。バノン自身は自他ともに認める「破局を早めることで再生を早める」という「政治のサイクルは80年で回る」という思想(フォース・ターニング)の信奉者ですから、混乱を呼び起こすのはお手の物です。

 トランプ大統領は、キッシンジャーが外交政策の指南を担当している分野についてはうまくやっているという感じですが、それ以外は振付師がおらず、今回の事件のようにクシュナーとイヴァンカが外国で休暇中(中東歴訪中)だったりすると、いちど、暴走すると歯止めがいない感じです。トランプは、2000年代に「アプレンティス」というテレビ番組では、冷静な判断ができる経営者像を演じ、アメリカプロレスでは「完全な悪役レスラー」の役を演じきりました。しかし、どうも本質は「アプレンティス」ではなく「悪役レスラー」のほうではないかと思います。振付師がいないと何もできないでしょう。オバマ自身が振り付けによって動かされていた政治家です。

 この状況をどのように乗り切ることができるのか。それともできないままトランプは「アメリカ帝国の墓掘り人」になるのか、非常に注目されます。

 このような中ですが、私たちは定例会を開催いたします。

 毎年、秋はこのところゲストをお呼びしての開催になっておりますが、今回は著名な国際情勢解説者の田中宇(たなかさかい)氏をお呼びして、ミニ講演と公開インタビュー(質疑応答)を行います。田中宇氏といえば、毎日おびただしい量の海外情報を読み解き、世界の秩序の行方について、分析を行ってきた、国際情勢分析のベテランです。


田中宇(たなかさかい)

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田中 宇(たなか・さかい)
国際情勢解説者。1961 年東京生まれ。東北大学経済学部卒。
東レ勤務を経て共同通信社に入社。メールマガジン「田中宇の国際ニュース解説」の読者は14 万人を数える。著書に『タリバン』(光文社)、『非米同盟』(文藝春秋)、『世界がドルを捨てた日』(光文社)、『日本が「対米従属」を脱する日』(風雲舎)、『金融世界大戦』(朝日新聞出版)ほか多数。

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 今回は、「田中宇の情報分析の秘密」と「今後の世界情勢は多極化に向かうのか新しい一極覇権に向かうのか、それとも三頭体制(G3)に向かうのか」という大きな論点で議論がかわされることになると思います。

 田中氏は有名な国際情勢分析メールマガジンと、最近の著書『トランプ革命の始動 覇権の再編』(花伝社)でも鋭い分析を披露されております。


トランプ革命の始動 覇権の再編

 田中宇氏は、トランプ政権について、最新のコラムでも「自国の覇権戦略の破綻を進化・顕在化」させる目的を持っていると分析しています。これが田中氏の有名な「(隠れ)多極化理論」ですが、この理論についても、もう少し明確にしたいと思います。そして、それが副島隆彦の思想である「属国・日本論」とどういうふうに重なり合い、どういうふうに違うのか、これについても議論が深められるのではないかと思います。

 こういう風に情勢分析と枠組みによる分析をしっかりやることが、国際政治・国際金融の将来を読み解く上で非常に重要になってくると思います。意欲ある会員の皆様の参加を期待しております。
 以下、定例会の詳しい内容・時間割です。時間割は目安です。

 第38回 副島隆彦を囲む会主催定例会

「海外記事を20年、どのように読み解き、分析してきたか。
~『学問道場』が田中宇(たなかさかい)氏に質問する」
講師:副島隆彦、田中宇

開催日 2017年10月15日(日曜日)
会場 「日本建築学会 建築会館ホール」
アクセス
■JR「田町」駅,都営地下鉄「三田」駅(浅草線・三田線)

会場住所 〒108-8414 東京都港区芝5丁目26番20号

【当日の予定】

開場  12:15
開演  13:00
第1部:田中宇講演(20-30分)
第2部:質疑応答コーナー(60-90分)※副島、中田、会場の質問をぶつけます
第3部:副島隆彦単独講演(90分以内)
終了  17:00(予定)

お申込み→ http://snsi-j.jp/kouen/kouen.html

※お申込みフォームでは、「田中宇氏に質問したいこと」をぜひご記入下さい。
 
 
 

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