本書の白眉は何と言っても、これまで日本ではあまり知られなかった国際決済銀行(Bank for International Settlements)の創設から現在までの歴史の全貌を明らかにしたことだ。著者アダム・レボーは、ドイツの第一次世界大戦後の賠償金支払いのために創設された国際決済銀行(BIS)が、その創設の目的から外れ、いかにナチス・ドイツの戦争遂行と、ドイツの戦後復興、そして欧州統合において重要な役割を果たしてきたかを余すところなく描いている。
たとえば、BISには、バーゼル銀行監督委員会(Basel Committee on Banking Supervision)という下部組織がある。ここで、世界各国の民間銀行が国際業務を行うには自己資本率が8%なければならないとする、例の悪名高い「BIS規制」が決定されたのである。これも政策調整の一種であり、世界官僚同盟の銀行管理の一種となっている。