私が語学留学のために行ったのは、普通の語学学校ではなくて、ジョージタウン大学というワシントンで有名な外交学部がある大学に付属しているEFL(English as foreign language)というコースです。日本人の数が少ないだろうということは大方予想していましたが、驚くべきことに一番多いのは50人中25人を占めるサウジアラビアからの留学生たちでした。次に多いのはカザフスタンだったと思います。彼らはほとんどが王室や政府の奨学金でコースを受講しているという話でした。年齢は18歳から29歳というのがほとんどで、私のような「高齢者」は他にあとひとりか二人でした。ただ、サウジアラビアの留学生が多いというか、彼らのプレゼンスはものすごくて、「石を投げればサウジの生徒に当たる」というほどでした。彼ら自身もサウジアラビアと言う国のPRを自ら買って出たりして、コース全体で文化の違いについて話し合うセッションではサウジアラビアのPRグッズを予め用意してディスカッションに望んだり、コース生徒全員にサウジアラビアの遺跡のミニチュアの模型を配ったりしていて、「国家を背負っている」という感じがありありでした。彼らは奨学金を受けて留学しているのですから、サウジ国内ではそれなりのいいところの子弟なのでしょう。偶然かも知れませんが、いまサウジと敵対しているイランからの留学生はいませんでした。イエメンから来た留学生と私は仲良くなりました。 ただ、私は「中国の留学生が多いのではないか」と思っていたのですが、実際には中国人の数は台湾人(彼らも奨学生らしい)と同じくらいだったのが驚きで、サウジアラビアの存在感がものすごく強いことが強烈に印象に残っています。ただ、それほど宗教的な感じを見せる留学生はほとんどいなくて、大学内にもモスク礼拝堂があったようですが、実際には留学生は礼拝をするにしても、一人の女子学生によると、家に帰ってからやっているそうです。これだけサウジの留学生が多いと、なかなかジョージタウンもサウジに対して言いたいことを言えないのではないかとも思いました。大事なお客様ですから。大学というのも結局は教育産業で生徒がいないとなりたたないわけですから、それを国家費用で賄ってくれるサウジアラビアやカザフスタンはありがたい存在でしょう。2009年にビジネススクールが移転したビルも中東レバノンのラフィク・ハリリ元首相の名前が冠されているのも中東マネーに頼っているという意味合いが強いと思います。