日本の保守派と言われる人たちがいかに10年以上前に流行った「自由主義史観」のように、「日本の戦争は悪くなかったんだ」と幾ら言っても、このヤルタ・ポツダム体制こそは、単にアメリカだけではなく、その他の連合国が決めた戦後秩序なのであり、すなわり、これが、今の world values ワールド・ヴァリューズ (世界普遍価値)です。
副島隆彦です。このように、ヒラリーが率いるアメリカ国務省は、”pivot to Asia” (ピボット・トゥ・エイシア)、「軸足をアジアに移す」の大方針転換を決めて、アジア・太平洋での軍事衝突までを視野に入れた行動に出ている。その主眼は、日本を中国にぶつけさせる、という戦略である。私たちは、このヒラリーの魔の手に乗ってはいけない。
それと、ヒラリーによる中国包囲網(Containing China コンテニング・チャイナ)の戦略である。ヒラリーは7月5日に、ハーヴァード大学での講演で「中国をこれ以上、経済成長させない。元の貧乏な国に戻す」とまで発言している。
日本政府(野田首相)は、「尖閣諸島は日本固有の領土であり、それは歴史的にも国際法上も明らかなことである」と9月26日の国連総会でも言った。そんなに日本の主張が正しい、と言うのなら、国際司法裁判所(オランダのハーグにある。International Court of Justice(インターナショナル・コート・オブ・ジャスティス )に提起すべきである。そして勝訴すればいい。日本政府の主張は疑問点が多い。以下に明確に説明してゆく。
日本を含めて、現在の世界体制は、国際連合( United Nations(ユナイテッド・ネーシヨンズ) 本当は「連合諸国」と訳さなければいけない。その理由はあとで書く)を中心にできている。連合諸国(アライド・パワーズ)(その軍事部門を連合軍と言う)が、敗戦国である日本とドイツ(とイタリア)を〝処分〟してできあがったのが今の世界体制である。このことを私たちは認めながら生きている。だから、今の国際社会とはヤルタ=ポツダム体制のことである。
念のため繰り返すが、ヤルタ会談の合意事項として日本に対する処分を具体化したのが、翌年のポツダム宣言 The Potsdam Declaration(ザ・ポツダム・デクラレーシヨン) である。ポツダム宣言は1945年7月26日に発せられた。このあと日本政府はグズグズしていたので、原爆が広島、長崎に投下された。
このようにヤルタ=ポツダム体制――これが国際社会だ――から考えると、どうしても尖閣諸島の所有権(主権)は、台湾あるいは中国に帰属すると考えるしかない。このことを日本のテレビや新聞は、ひと言も言わない。日本国民に教えようとしない。だから、私のような世界基準( world values(ワールド・ヴアリユーズ) )でものごとを考えることのできる知識人が書くしかないのだ。